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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第10章 とある手記に関して
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とある船乗りの死について12

 リリベルのヒントを元に4人に更なる質問を投げかけてみた。

 ルーカス、レオ、アルバロ、フリアの4人は知り合いなので、お互いが庇い合わないように、1人ずつ談話室で会話を行うことにさせてもらった。残りの3人は食堂で待ってもらっている。




 4人の中で唯一、陽気で声が大きく口数の多いルーカスが最初だ。


「ルーカスさんが夜中に談話室に来た時に、アルバロさんの服が椅子に掛けられているのを見ましたか?」

「いや、確か無かったはずだぜ。外の様子を窓から見る時に、椅子の近くを通って行ったが見なかったからな」

「確か、暖炉の火は消えかけていたのでは? その明るさで椅子に何が掛けられているか分かるものなのですか?」

「おいおい。何も目隠しされた訳じゃないんだ。確かに火は消えかけていたが、周囲の物が見えない訳じゃないぜ」


 ルーカスは自分の目を指差して「ついでに目は良く見える方だぜ」と視力に自信があることを述べた。


 彼の言うことが本当か確かめるために、リリベルが談話室の扉付近まで移動して、彼女が何本の指を立てているかをルーカスに確認してもらった。

 見事に全てが当たったことを(かんが)みると、彼の言う通り目が悪い訳では無さそうだ。


 つまり、ルーカスがこの部屋に来た時には、アルバロはまだ服を乾かしにこの部屋に来ていなかった。聴取が終わってから再びルーカスが談話室に来たのは、彼自身の発言も含めて誰よりも初めで間違い無いだろう。




 次に談話室に呼んだのはレオだ。


「レオさんが夜中に再び降りて来た時に、談話室に立ち寄りましたか?」

「え、え、えっと。立ち寄っていない……」

「なぜ1階に降りて来たのですか?」

「ね、眠れなくて……」


 やはりどうにも怪しい。

 眠れなくて気晴らしに部屋の外に出たのは分かる。

 それなのになぜわざわざ光が無い食堂室に行ったのか。談話室に行けば、食堂室にある椅子よりも座り心地の良い椅子があるというのに。


「玄関の方には行きましたか?」

「い、いや、知らない、です」


 行ったか行っていないかの質問に対して、知らないという返答はずれている。

 アルバロが汚した玄関辺りの様子がどうなっていたかを先回りして知らないと答えているのだろう。


「談話室の扉は開いていましたか?」

「し、閉まっていた……」

「談話室の前まで行って確かめたのですか?」

「い、いい、いや、扉と床の隙間から光がも漏れ出ているのが、か、階段から見えたから……」

「眠れなくて暇を潰したいなら、そのまま談話室に入れば良かったのでは?」

「夜中なのに、ひ、火の光があるってことは、誰かいい、い、いると思ったから。そ、その時は、誰かと話したい気分でも無かったから……」

「それでは、レオさんが食堂室にいた時に、誰かが降りて来る音や扉の音が聞こえて来たりはしましたか?」

「い、いや、何も。あったとしても嵐の音でぜ、ぜ全然聞き取ることが、できていなかったと、お、思う」


 こうも夜中に部屋の外に出ている者たちが、お互いにすれ違わないことがあるのだろうか。


「レオさんが部屋に戻る時に、談話室の光はまだありましたか?」

「あ、あ、あった……」


 レオの話を信じるなら、この時既に薪は足されていたことになる。暖炉を囲むように椅子が置かれていることと暖炉から扉までの距離を考えると、消えかけの炎の光が扉の隙間から差す訳が無い。


「食堂室で窓の外の様子を眺めていたようですが、それはどのぐらいの時間だったか分かりますか?」

「そんなにな、な、長くないはずです……」


 つまり、レオが夜中に食堂室に来て部屋に戻るまでの間に、薪は足されていないということになると思う。


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