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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第10章 とある手記に関して
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とある鉱夫の手記

4月、12回目の採掘。


採掘中にこれを見つけた。

日記なんかつける趣味はないが、せっかくだから書くことにした。

毎日同じことばっかりの繰り返しだから、書くことは変わらねえが。


いや、そういえば変わったことはあったな。


仕事が終わって、酒場に行った時に見たことの無い奴らにあった。

若い奴が3人とおっさんが1人。まあ俺もおっさんだが。




若い男は身体がひょろくて、鉱山で仕事してたって奴じゃない。

女2人はどっちも若い。若すぎるな。

金髪の女は、はっきり言ってガキだ。顔は良いからもっと歳を食えばとんでもねえ美女になると思う。

もう1人の青髪の女は金髪の女よりは年上な見た目をしているが、五十歩百歩だ。俺からすればどっちもガキだ。


おっさんは見たところ鉱夫って感じではない。採掘を長年やっていれば、顔や手に特有のシミができるがそういったものはなく、むしろかなりの日焼け肌で黒い。

船乗りか?


出稼ぎに来たって感じじゃない。

ガキ2人はかなり身なりが良い。町長の親戚あたりだったら分かるが、それなら酒場で飲み食いはしねえだろう。




で、そんな奴らがなぜか俺に話しかけてきた。

全く面識の無い奴らなんだが、向こうは俺のことを知っているのか馴れ馴れしかった。


ガキと飲んで何が楽しいのかと思ったが、案外若い男は話しやすかった。

それに酒代を奢るって言うんだからラッキーだったぜ。




4月、13回目の採掘。


昨日は酒の飲み過ぎで書いている途中で、寝ちまった。

かなり飲んだから記憶はあんまり無いが、憶えていることはいくつかある。

どうやら4人は北西のでけぇ島からやって来たらしい。

海の向こうなんて行ったことないから、どんだけ遠いところから来たのか想像はつかねえが、多分滅茶苦茶遠いんだろうな。


この鉱山にやって来た理由は魔物退治らしい。魔物が魔力を求めてこの山にやって来ているらしく、それを狩りに来たって言うんだが、魔物なんか見たことねえんだよな。


それに魔物退治のために海の向こうからわざわざ来るか?

まあ魔物退治の仕事をしたことがねえから、そういうこともあるのかもしれないな。細かいことは分からねえ。




他には、俺が誰と暮らしているか気にしていた。

妻は流行り病で死んじまったから、俺1人しか住んでないって答えたら、4人を俺の家に泊めて欲しいって言ってきた。


酒を奢ってくれたし、1日ぐらいなら泊めてやっていいって言ったら、何日か泊めて欲しいって言ってきやがった。まあしばらく飯代込みで金を出してくれるって言うから悪い話じゃないし、受けたんだがな。


観光客が来るような町じゃないから宿なんて無いし、仕方ないっていえば仕方ない。




4月、14回目の採掘。


やっぱりあいつらは金持ちだ。


魔力石って変な石をくれたんだが、使ってみたら便利だった。

魔力石なんか高いし訳が分かんねえから、買ったことも使ったことも無かった。


青みがかった石ころだが、何と水が出てくる。滅茶苦茶出てくる。

狭い坑道にいくつも荷物を持って行くことなんかできない。水筒を持って行っても飲むペースを気にしなきゃならない。

これならポケットに入れて行けるぐらいの大きさしかねえし、わざわざ鉱山の外に出て水を汲みに行かなくても良い。


しかもこの石を何百個もくれるって言うんだから、太っ腹な奴らだ。


他にはすげえ小さいツルハシをくれた。

片手で持てる軽いツルハシで、黒髪の若い奴が言うには、ある有名な魔女がこの道具に魔力を込めて作った物らしい。


こんなんで何が掘れるのかって馬鹿にしてたが、使ってみたらこれはすげえ。

原理は分からねえが、どんなに硬い地層でも軽く叩くだけで一気に抉り取れちまう。あんまりやりすぎると、天井が崩れちまうから注意しないといけないな。


あいつらには感謝しかない。




追記。


若い奴らだからヤりたい盛りっていうのは分かる。

だが、普通人の家でヤるか?


金髪のガキと黒髪の若いのは多分夫婦だろうな。2人が話している時の雰囲気で分かる。

夜中にがさがさやってるのは多分あの2人だろうな。


色々すげえ物をくれた礼もあるから、別に注意する気はないが、せめて俺や他の2人がいない時にすればいいのにな。それならもっと楽しめるだろうぜ。




だが、あいつらと関わっていると、何か俺も若返ったような気分になる。

最初は訳の分からねえ4人を泊めるのをどうかと思ったが、今では良かったと思うぜ。


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