表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第1章 24時間戦争
22/731

6時間後

 ディギタルの攻撃は俺の目の前の魔物たちを一掃した。

 しかし、倒れ崩れ去っていく破片の下から新たな魔物が湧き出て大きな効果はない。


 状況は変わっていない。


 ただ、気になる点があるとすると、彼が眩い光を放った途端に魔物たちが怯み動きが止まったような気がする。


「ディギタル! 今の魔法を放たずに光を出し続けることは可能か!?」

「やってみる!」


 そして俺のすぐ後ろで剣を構えてディギタルが再び叫ぶ。


極光剣(きょっこうけん)!!』


 今度は眩しい景色が留まり続けている。

 光りを当てられた魔物たちはそれ以上前へ進むことはなく、その場で光を嫌がって暴れている。


「魔物の動きが止まっている!」

「そうか、光を照らし続ければここを脱出できるということか!」


 やっと一息つける安堵感を実感できた。呼吸をしていると感じる余裕ができることが久し振りな気がする。

 魔物たちは依然としてこちらへ襲い掛かってくる様子はない。


「ジェトル! イゼア! ヴィルオーフと魔女殿を運べるか!?」

「僕はヴィルオーフさんを運びます! イゼアさんは魔女さんを運んでください!」

「あ、ああ。あれ?」




「すまないね。私はもう平気だよ」




 これだけの叫び声たちの中でも、鎧に包まれて外の音がくぐもって聞こえるけれども、その声だけははっきりと聞き取ることができた。

 リリベルの声だ。


「ディギタルさん! 黄衣の魔女が起きました!」

「良し! 態勢を立て直すぞ!」


 イゼアはリリベルに今の状況を説明すると、すぐに飲み込んだリリベルがディギタルに光を照らす魔法を交代すると提案した。

 ディギタルは、うんも言わさずすぐにリリベルの提案を了承する。


彩雷(さいらい)


 リリベルの一言で辺り一面が柔らかい光で包まれる。リリベルを起点に無数の線の光が流れ、壁にも天井にも床にもジグザグに這って光り続けた。光には色があり、青や紫や黄といった色がそこら中を闊歩する。


「ヒューゴ君がずっと守ってきたのだね」


 俺のすぐ後ろまで来たリリベルが嬉しそうに話しかけてきた。ディギタルとは場所を交代したようだ。


「なんだ。君は十分強いじゃないか」

「この鎧のおかげだ。それよりも怪我は大丈夫なのか!?」

「大丈夫、傷は治した」


 傍で会話を聞いていたディギタルが次なる指示を皆に伝えた。


「我々はこのまま荷物を置いた地点まで戻る! 魔女殿はこのまま照らし続けてくれ! ヒューゴ殿は魔女殿の援護を、イゼアとジェトルはヴィルオーフを運んでくれ! 私が先導する!」

「待て!」


 リリベルが珍しく叫んだ。

 何事かとリリベルの方を確認してみると、彼女は魔物たちの群れの先を指差していた。


「どうやら、光を照らすだけでは足りないようだね」


 リリベルが放つ光に当てられてその場でもがいている魔物たちを押しのけ砕きながら、隊列を成してゆっくりと歩く物体が見えた。その物体たちは皆、同じ鎧を着込み、剣を胸の前に掲げている。

 当然、通路の幅一杯に並んでおり、その後ろにも、後ろの後ろにも同じように隊列を組んでいる。

 問題なことに奴らは光をものともしていない。


 やがて、奇怪な叫び声の群れはなくなり、金属が擦り合ったり、床に叩く音だけが聞こえるようになった。

 無数の鎧の兵士たちは調査隊に向かって無言の行軍を続ける。


「戦争でもしている気分だな」


 俺が冗談を飛ばすと、ディギタルが鼻で笑いながらやけくそ交じりに答えた。


「白旗でも上げるか?」


 できることならそうしたいが、きっと奴らは上げた旗の意味を理解できないだろう。

 近くまで来た鎧が強く光に照らされて、隙間を覗けるようになった。


 鎧の中身には何もない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ