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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第8章 全てが2分の1になる!
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町が2分の1になる!

 1日振りに自由に言葉が出せると分かった俺たちは、最早会話を行うことはなかった。リリベルもリリフラメルもそれぞれで言いたい放題であった。


「やっと喋ることができたね!」

「情報を共有したい! この町にいると、喋ったことが半分になる! お前たちもそう思っていたんだろう!?」

「今、領域の外に出ることができたということは、このまま帰ることができるのではないか?」

「いつでもここに来て話ができるよう、目印を置いておこう」

「ああ、上手く喋ることができなくてめっちゃイライラした!」

「アレンという男は何で犬になっていたんだ?」


 もう滅茶苦茶である。

 たった1日まとまな会話をしなかっただけで、小鳥のように次から次へと言葉を(さえず)るのだから、意外と俺たちはお喋りなのかもしれない。




 しばらくの間、それぞれが怒涛のごとく喋り尽くして気分が落ち着いた後、やっと会話ができるようになった。


「それで、リリベルが言っていた中心点とは何だったんだ?」

「ふふん、ずびび。ヒューゴ君は察しが良いから既に気付いてるいと思うけれど、この何でもかんでも半分になる現象を魔法だとするなら、仕掛けた場所が存在するはずだね」

「この魔法が起きている範囲の限界を調べているということで合っているか?」

「そう! その通りだよ! 町の壁に沿ってどこまでを範囲としているのか調べていたのだよ。範囲を示せる物差しが無くて困っていたのだけれど、君のおかげで分かったよ!」


 リリベルは掌を出してその上に少しだけちらついて積もる雪を強調した。

 概ね壁沿いを境界として降る奇妙な雪を見つけたことが、こんなにもリリベルに喜んでもらえるとは思わなかったので気分は良い。


 リリフラメルは俺とリリベルに取り囲まれ、彼女自らが出している熱をストーブ代わりにされている。

 彼女は自分が暖房器具にされていることに気付き腹を立てながらも、俺たちを受け入れて大人しくしてくれている。

 魔女の呪いの効果を受けて怒りを絶えず生み出す彼女にしては、優しい対処をしてくれている。


「で、魔法の範囲が分かったら今度はその中心部に行くということで合ってる?」

「そうだね。そこへ行けば魔法陣なり魔法使いなりがいるがいると思うよ」

「それなら、私は逆から行こうか」


 リリフラメルが振り返ってもと来た道に視線を向けた。

 確かにわざわざ3人全員で同じ方向に調べていくより効率は良いだろう。リリフラメルの提案を受け入れない理由は無かった。


 リリフラメルは俺の返事を聞くと逆方向へ進んで行った。

 俺とリリベルはそのまま先へ進むことにする。


「ヒューゴ君」


 雪が降る地点に侵入する前に、リリベルが後ろから俺を呼び止める。

 彼女は垂らした鼻水をすすりながら微笑みかけてきた。俺を呼んだ意図を確かめるが、彼女は小さく「何でもない」と言って先に歩いてしまった。

 何でもないとはどういうことか。

 気になるから教えて欲しいのだが、彼女は既に()()()()()()()()()にいて下手なことを喋ることができない。


 彼女の悪戯に悶々としながら、すぐに彼女の後をついて行き実験の続きを行う。






「どうだった?」

「こっちは雪が降らない箇所を3箇所見つけた。お前たちは?」

「2箇所だね」


 半日を使ってリリフラメルと再会した。

 辺りは暗くなってきた。恐らく日が沈む前だとは思うが、既に相当薄暗く、中途半端に灯された街灯で何とか足元が見えている。


「3箇所のうち2箇所は大した範囲が無い。その場を歩き回るぐらいの場所しか無かった。けれど、もう1箇所はかなり内側に広がっていた。家がある範囲にはなかったがな」

「こちらも同じようなものだったよ。家が無い範囲ではあるけれど、壁の内側でもやけに雪が降っていない場所があったよ」


 雪の上にこの町の地図を広げ、雪が降らない範囲を描き示した。

大まかにではあるが雪が降る範囲はいくつかの円が重なり合うような形になっていた。

これだけではどこが中心点か分かり辛い。


リリベルは枝を拾い、地図のある箇所を指し示した。


「このあたりかな」

「なぜ分かるんだ?」

「魔女の勘!」


俺が呆けていると彼女は顔をムッとさせた。


「何か文句でもあるのかい?」


どうやら俺の表情が気に入らなかったらしい。

不満顔のリリベルをなだめるためにも、大人しく彼女の指し示す地点へと向かうことにする。


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