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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第8章 全てが2分の1になる!
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宿屋が2分の1になる!!

 家主がせっせと倉庫に急ごしらえのベッドを作ってくれたので、部屋はパッと見ただけでは倉庫とは思えない。


 宿を探しているがなぜか入ることができないと、たまたま入った衣料品店の主人にダメ元で伝えると、主人は不思議な顔1つせずに話を聞き入れてくれた。

 なぜ主人が俺たちの奇妙な願いを快く受け入れてくれたのかというと、どうも彼は何度も同じような状況に遭遇しているようだ。


『ああ。ああ、あなたたちは外からですかね。ウチで良ければ構いませんよ』


 主人が俺たちに向けた言葉は、どれもこれも言葉足らずであった。

 だから彼が何を言っているのか理解するために、一間置いて文章を噛み砕かねばならない。


 想像するに、外というのは町の外からやって来たということを指しているのではないか。


「木箱を繋げてその上に布団を乗せて無理矢理ベッドにしたみたいだね」

「2台しかないのかよ」


 部屋の広さの都合もあってベッドは2つしか無かった。


「リリベルとリリフラメルがそれぞれ使えば良い。俺は床に寝る」


 着ることのできない衣服が何着かある。

 それを床に敷いて、マントを布掛け代わりに使えば寝られなくもない。


 俺が寝床の準備をしていると、リリベルが俺の服を引っ張ってきた。

 顔を見合うと、彼女は上目遣いで俺に何かを訴えている。

 何でも素直に言う彼女が、珍しく言葉を発さず無言で俺に何かを察するように仕向けてくる。

 いつもの彼女と違う。


「どうした?」


 俺が問いかけても彼女は一言も出さず、上目遣いのままただ指でベッドを指差す。

 上気したような顔色だ。

 こんなにしおらしい彼女は、ポートラスで幽霊と出会った時以来だろうか。


 ベッドを指差す彼女が無言で意志を示そうとしたということは、何か言葉にし辛いことなのだろう。


 一緒に寝ようと伝えているのだろう。

 だが、それを彼女に言葉に出して聞き返すのは野暮なのだろう。

 彼女が無言で意志を示したということは、きっとそういうことだ。それを俺が言葉にして聞き返してしまったら彼女の無言が台無しになってしまう。


 だから、俺は彼女の手を取って無言で頷くことにした。


 なぜ頷いてしまったのか。

 俺はリリベルの騎士なのに、主人と寝床をともにするなどあってはならないのに、どうしてか頷いてしまった。


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