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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
第6章 狂った正義の味方
144/736

銅色2

 ヘズヴィルの鎧は見た目に違わず重厚さがある。

 クレオツァラの一瞬の剣戟にわざわざ対応する必要の無い程の防御力を誇っている。彼の持っていた剣はあっさり折られてしまった。


「とんだなまくら!」

「クレオツァラさん!」


 リリベルの魔力を借りて黒剣を生み出し彼に投げつける。生身の彼に抜き身の剣を投げ付けるのはどうかと逡巡したが、彼は持ち前の速さとそれに着いていける動体視力であっさりと黒剣の柄を握る。


 だが、彼が剣を受け取ったのをホッとする間も無く、ヘズヴィルが俺の方へ一瞬で距離を詰め寄りハンマーを横へ薙ぎ払う。

 持っていた盾はほとんど無意味であった。

 辛うじて衝撃を和らげることはできたかもしれないが、一瞬で皿が割れたかのように砕け散る。ハンマーは盾を突き破った後、俺の身体に叩きつけられ、自分でも面白い程に吹き飛ばされる。


 家の残骸の音が幾つも聞こえてようやく勢いが止まり、慌てて転がった身体を起こす。

 今いる場所を確認しようとしたが、もう目の前にヘズヴィルが迫っていた。目の前に青い炎の光が見えるということは、後ろは崖だろう。


「先程の借りは返させてもらう!」


 クレオツァラがヘズヴィルに追い付いて、彼女の左脇腹から剣を叩き付ける。

 彼女の鎧が余りにも分厚く隙間が無いためか、剣本来の使い方を諦めて鈍器の使い方になっている。


速度強化(ハイスピード)


 ヘズヴィルの詠唱と同時に彼女の動きはより軽やかになる。


「2人とも……!」


 大通りの方に立っていたセシルの声だ。

 彼女の方へ目を向けることはできないが、耳だけは彼女に傾け続ける。


 自分の胸当てから風が吹き込んでいるのを感じて、手を当ててみると穴が空いていたのに気付いた。魔力の制御を怠ったつもりは無かったのだが、彼女の圧倒的な膂力を前に俺の鎧は簡単に割れていた。矢継ぎ早に攻撃を受けていたらと思うと戦慄してしまう。


「私の視界から離れて……!」


 セシルの控え目だがいつもよりは大きめの声に反応できたのは良かった。


「クレオツァラさん、ここを離れましょう!」

「彼女をまけるとは思えないな!」


 ヘズヴィルのハンマーが地面に叩きつけられると、衝撃で足元が揺れるのを確かに感じる。

 それどころか叩きつけた箇所にあった家の残骸が、細かな破片になって針のように飛び散ってきた。生身のクレオツァラは防ぐ手立ても無く、ただ服の上から破片が突き刺さって呻き声を上げている。


 ヘズヴィルの動きを止めないとこの場から逃れられない。


 ヘズヴィルは地面に叩きつけていたハンマーを支点に、自身の身体を勢い良く俺に突撃させる。

 胸当ての修復もできていない俺は、生身の身体に直接叩きつけられる。銅色の騎士の鎧の重さが直に伝わる。

 その瞬間俺の意志とは関係無く、口から何かが吐き出される。兜の中に広がる匂いでそれが血であることはすぐに分かった。


「ヒューゴ殿!」


 クレオツァラが一瞬だけ視界に入るが、俺は叩き付けられた衝撃で更に後ろに吹き飛ばされていて、気付いたら足が地に着く感覚は無かった。

 俺はそのまま崖下に落ちてしまった。


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