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弱くて愛しい騎士殿よ  作者: おときち
プロローグ
14/723

黄衣の女の子

黒鎧(こくがい)よ、我が身を解き放て』


 緋衣の魔女が去った後、俺は鎧の魔法を解除して元の姿に戻る。閉塞感から解放されて気分はとても良い。

 格好いい詠唱も唱えられて更に気分が良い。先程の自己嫌悪感はどこへやら。


 リリベルは地図を黙々と眺めていたので、何処か行く当てでもあるのかと尋ねてみた。


「特にない。ないけれど、この国は出たいところだね。追っ手が来ないとも限らないし」


 それはその通りだ。

 サルザス国からも魔女を探しに追っ手がやって来るだろうし、追っ手の中に顔見知りの兵士でもいたら大変なことになる。俺はお尋ね者だろうな。


 一息ついたところで思い出した。

 俺は地面に下ろしてあった荷物の束から、1着のマントを取り出しリリベルに手渡した。


「俺が騎士になるならないに関わらず、渡しておこうと思ったんだ」


 細かい紋様の入った綺麗な黄色のマントだった。

『黄衣』というのだから、ボロボロの布切れではなく黄色いマントを着た方が、らしさがあるのではないかと思って買ったのだ。1つ気になる点があるとすれば、それを着ている者がとても目立つということだが、今は考えないことにした。


 リリベルは手渡したマントをじっと見つめて、その後何とも言えない顔をして俺を見つめていた。

 もしかして黄色のマントは趣味ではないのだろうか。そうだったらせっかく買ったのに少し悲しい。


「ヒューゴ君。君は、どうしてこう……」


 言葉に詰まる彼女を初めて見た。

 俺の審美眼が相当酷くて呆れているのだろう。仕方ないだろう。今までお洒落なんて気にかけたこともないのだし。


「とても、とても嬉しいよ。まさか私が子どもに頃に作ったマントを君が見つけてくれるなんて思わなかった」


 衝撃の一言を放つ魔女。

 嬉しかったということは素直に嬉しいと思ったが、その後の言葉で嬉しさの感情が吹き飛んだ。

 お前が作ったマントだったんかい。心の中でツッコミを入れる。


「あの町の服屋で買った物なのだが」

「そうだったんだね。すっかりさっぱり忘れていたよ」


 意外と記憶力が危うい魔女だな。


 リリベルはすぐさま立ち上がり、黄色いマントを翻して羽織った。

 ボロボロの布切れを羽織ったままに黄色いマントを羽織ったので、その布切れが如何に大切なものかということが改めて分かった。


 そして、その場でくるりと回ってマントをなびかせながら感想を求める魔女に俺は一言。


「似合っている」


 黄衣の魔女は再びただの少女に戻った。

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