コント『異世界転生とドッペルゲンガーとハンバーガーショップ』
B…ボケ T…ツッコミ
B「実はボク、異世界転生に憧れてまして」
T「それ近頃よく聞くな。特殊な力を身につけて、別の世界に生まれ変わるとかいうやつだろ?」
B「そう! したいよね、異世界転生!」
T「あのなあ、そんなこと考えるな」
B「それがですね。ボク、さっき死後の世界に行ってたんですが……」
T「さっき!?」
B「いやね、道歩いてたらボクそっくりの男にばったり会っちゃって。もう見た瞬間にわかりました。こいつドッペルゲンガーだって!」
T「それ、見たら死ぬってやつか!」
B「はい。そのドッペルゲンガー見てたら急に目の前が暗くなってきまして」
T「やばいじゃん!?」
B「ええ。思わず口から出ました。ラッキーって」
T「ラッキー!?」
B「ほら、これで異世界転生の夢が叶うと思ったんです」
T「おまえはアホか!?」
B「ふと気がつけば、ボクはとても広いお花畑の中にいたんです。そこで白いドレスを着た女性が微笑んで手招きしてました」
T「それ臨死体験! 招かれても行っちゃダメなやつ!」
B「きっと女神様だと確信し、急いで駆け寄りました」
T「行っちゃった!?」
B「女神様は言われました。『いらっしゃいませ。お一人様ですか?』」
T「ファミレスか!」
B「ボクは女神様に問いました。一人では寂しいので、友人と一緒でいいですかと。もちろん友人というのはキミのことです」
T「やめろ! オレを道連れにする気か!」
B「女神様は頬に手を当てて困り顔で言いました。『それでしたら一度現世にお戻りになって、お友達をお誘いになられてからいらして下さいね?』と」
T「誘われたってあの世になんか行かないからなッ!?」
B「キミならそう言うだろうと思い、女神様に相談したんです。そうしたら、人をお花畑に連れこめるという能力を授かりまして」
T「それ人をあの世送りにする能力だろ!?」
B「キミもお花畑へ連れてこれるなら寂しくなくなると喜んだんですが、ボク女神様に確認しておくことがありました」
T「自分は地獄に落ちますかって!? 当然はいと言われたろ!」
B「いえいえ。ほら、異世界転生ってできますかとお尋ねしたんです」
T「そっちかーい!」
B「女神様はこうおっしゃいました。『はい、異世界転生おひとつですね。ご一緒にチートはいかがですか?』」
T「ハンバーガーショップか!?」
B「それでボク、どんなチートがありますかと尋ねました。そうしたら『巻き戻し』っていう、死ぬと時間が少し前まで巻き戻されてから復活する能力をおすすめされまして、じゃあそれでってお願いしました」
T「ポテトのサイズみたいに決めたな!?」
B「すると女神様は微笑んでこうおっしゃいました。『能力はお持ち帰りですか? それともここで身につけられますか?』」
T「やっぱりハンバーガーショップだ!」
B「ちょっと考えて、ここで身につけますと答えました。すると女神様が巻き戻しバーガーを作ってくださったので、その場で美味しく頂きました」
T「ハンバーガーショップ確定ッ!?」
B「そのバーガーを食べて能力を身につけたとたん、辺りの景色がお花畑からこちらの世界へと変わったんです。急なことに驚いてたら、ボクそっくりのドッペルゲンガーにばったり会いまして」
T「またーッ!?」
B「このままではやられてしまうと思い、速攻でお花畑に送ってやりました。するとドッペルゲンガーのやつ嬉しそうな顔をして『ラッキー』と呟き、ぱたりと倒れたんです。その瞬間、ハッと気がつきました」
T「あ、なんかオレ一連の話がわかったかも!」
B「そうです。ボクが最初に死ぬ原因となったドッペルゲンガー。あれの正体は、まさにボク自身だったんです」
T「やっぱりか! つまりこうだ。ドッペルゲンガーにあの世へ送られたおまえは、人をあの世送りにする能力をもらい、巻き戻しというチートまで身に付けた。その時すでにおまえは死んでいたから、巻き戻しが発動して死ぬ前のこの世界へと戻ってきた! そこで話の最初のおまえに会い、ドッペルゲンガーだと思ってあの世送りにしたんだ!」
B「そう、それが真相です。悲しいことにボクの異世界転生は不可能になりました。もう死ねないから」
T「むしろ良かったじゃないか! きっと異世界なんてろくなとこじゃないぞ? 空や海がものすごく汚れていたり、やたら病気が流行っていたり、悲惨な戦争が絶えなかったりするんだ」
B「まるで実際に見てきたみたいですね?」
T「そ、そんなことはないぞ! それよりほら見てみろよ、今日は世界樹があんなに綺麗だ」
B「ホントだ! 雲を突き抜けて輝いてる。エルフたちが手入れしてるお陰かな。ドラゴンたちもあんなに高く飛んでる!」
T「こんな美しい世界に住んでるんだ。もう異世界になんて憧れるな!」
B「ええ、そうします。きっとあちらにはボクの好きなハンバーガーショップも無いでしょうしね」
T「ハハハ、それは案外あったりしてな……」