デカムシがあらわれた
腹の大怪我で出血多量で死んだらハーフオークに異世界転生した俺。
神様の計らいかキャンプ用品をまとめると人里を探して山道を歩いている。
「デジャヴだろうけど、この道を見たことがある気がする。」
道の曲がり方や木の間隔、大きな岩など昨日通った山道とそっくりだ。
木のサイズや草の育ち具合は全く違うからそんなわけはない。
「やっぱり元の世界に未練があるからここが異世界だと受け入れられないんだろうな。」
結婚していないから妻や子供はいないけど、高齢の母のことは少し心配だ。
ただすぐ近くに兄が家族で住んでいるし、姉も母に何かあれば東京から帰ってくるから大丈夫だとは思う。
「ア、あのデッカイ虫だ。思い出したら鳥肌が。」
意識を失っている間に足の上を這っていたのを思い出してしまった。
ただこれはチャンスだ。
ここが異世界なら出来るだけレベルを上げて強くなっておく必要がある。
地位も金もないから腕力くらいは強くないと生きていけないはずだ。
俺も異世界転生系のラノベで最低限の知識は持っているんだ。
そしてこの虫は一撃で倒せるのにレベルが上がるほど経験値効率の良い敵だ。
素手で殴って虫の体液が付着したらイヤなので今回は武器を用意する。
ハンマーだ。
今回はお手軽キャンプの予定だったので鉈などの刃物は持っていないのだ。
サバイバル研修の演習なのに鉈すら持っていないのは今回はあくまで野外での寝食をすることがメインの演習だったからおかしくはない。
むしろハンマーを持っていた俺を褒めても良いくらいだ。
「ハッ!」
ゆっくりと音をたてないように怪力スキルを意識しながら上段に構えたハンマーを振り下ろした。
ハーフオークと言う種族になって強化された腕力に加えて怪力スキルの効果を受けたハンマーは空気が爆発したような音を上げてデカイ虫に一直線に向かう。
「何!チィッ」
デカ虫をハンマーがとらえたと思った瞬間、デカ虫は羽を広げて飛び立った。
偶々なのか、空気の動きに反応したのかは不明だが躱されたことには変わりない。
ハンマーは硬い地面へと突き刺さる。
デカ虫を潰すために力は地面に叩き付けた反動でそのまま俺の腕に返ってきた。
「イッテェ~、よくもやってくれたな。絶対やっつけてやる。」
自業自得?
躱されたことを考えていない俺が悪い?
確かにその通りだが俺がイラっときたんだから仕方ないだろ。
この怒りを力に変えて虫を叩きつぶしてやる。
「余裕ぶっていられるのも今のうちだ!くらえ!」
目の前でホバリングしているデカ虫に向けてハンマーを再び振り下ろす。
「クソ!当たれ!この!チョコマカと!ハァハァ」
ハンマーは空気を切り裂くだけでデカ虫にカスリもしない。
何度も空振りされられて息が切れて来た。
そもそも止まっている虫に避けられたのに高速で飛行する虫に充てられるわけがない。
イラッとして頭に血が上ってムキになっていたがちょっと冷静になるべきだ。
ハンマーでの攻撃はどうしても攻撃の初動が遅い。
そのためデカ虫に避けるだけの余裕の与えているんだ。
その上このデカ虫のステータスは素早さ特化とみた。
だから一撃で倒せるし、俺のハンマーを躱せるのだろう。
このままでは何時までもこのデカカナブンを倒せない。
ここは俺も覚悟を決めて対処するしかない。
俺はハンマーを地面に置くと両手を開いてデカ虫を左右から囲むように構える。
決して両手で叩くわけではない。
そんなことをすれば両手の未来がどうなるかは火を見るより明らかだ。
俺がハンマーを手放して両手を構えたことに警戒したのかデカ虫が再びホバリングで空中に停止した。
そこへ目がけて俺は左手でデカ虫を叩くように左上から手のひらを叩き付ける。
ハンマーを持っていない分初速も早い。
デカ虫は慌てて俺の左手から離れるように飛ぶ。
「かかったな!お前の命運もここまでだ!」
予め予測していた通りにデカ虫が行動したので俺は準備していた右手でデカ虫を叩き落とす
(グチャ)
「よっし、俺もやれば出来るんだよ。・・・でもレベルは上がらないかったか。デカ虫が消えた・・・これは石?」
デカ虫は死ぬと光の粒子となって消えると紫色のクリスタルのようなものが残った。
死体が消えるとは異世界の代名詞ですね。
とするとこのクリスタルは魔石に違いない。
魔石を売ってお金を得る、鉄板ルールだ。
俺は魔石とハンマーを拾うと再び山道を下る。
最初のデカ虫の魔石?
最初の魔石は安いから誤差だ誤差。
気にしてないよ気にしないよ。
さっさと人里に行くことが重要なんです。




