ハーフオークは浮かれる
「そろそろ良いかな?」
美女の凛とした声を再び聴いて身体が痺れそうになるが己の意志を総動員して何とかあがらう。
「ブタのお兄ちゃん、この人は誰?」
美香ちゃんの声が強張っているのはこの狂った世界のせいだろう。
緑小鬼やデカ犬が襲い掛かってくる世界である。
かつての日本で会っても知らない人に話しかけられてもついて行ってはいけないのが当たりませなのだ。
変わってしまったこの世界ならどんな相手で会っても警戒するのは正しい反応である。
つまり美香ちゃんは美女に話しかけられて惚けてしまった俺以上にしっかりとこの世界に対応しているのである。
どっちが保護者か分からんな。ガンバレ俺。
「この人がたくさんのデカ犬を倒してくれたんだよ。」
あれはすごかったな。
上空から何かのスキルを使ったのだと思うのだけど何をしたのかサッパリ分からなかった。
気が付いたらデカ犬の首が切られていたのだ。
おそらく切られたデカ犬も何が起こったのか分からいままに死んだのではないだろうか。
美しいだけでなく強いとは。
天は二物を与えるんだな。
「そうだったんだ。ありがとうお姉さん。」
きちんとお礼が言える。
美香ちゃんはやっぱり良い子である。
「危ないところを助けてくださってありがとうございます。俺はカタヤマヨシオです。こっちは美香。大したことはできませんが出来る限りのお礼をしたいので何でも言ってください。」
ここでただお礼を言っただけではそれで終わってしまう。
損して得とれではないがお礼の約束をしておけば今後の交流に繋げられるはずだ。
遠くから見られるだけでも良いと言ったけど、近くでその○○を拝められるならそれに越したことはないのだ。
これは全人類の共通の思いに違いない。
「どういたしまして。私は華煉桜よ。それと警官として当たり前のことをしただけだからお礼なんて気にしなくて良いわ。」
戦っているときの凛として真剣な顔も素敵だが笑顔はもっと素敵だ。
あの笑顔が・・・ないな。
そうじゃない。お礼と言うなのお近づきイベントを回避されてしまった。
遠くから眺めるだけで満足するしかないのか。
「・・にいちゃん。ブタのお兄ちゃん!」
「おぉ!どうした美香ちゃん大きな声を出して?」
急に美香ちゃんが大声を出すものだから驚いてしまった。
それに理由は分からないけど美香ちゃんは不機嫌だ。
どうして分かるかって?ほっぺを膨らませて目を吊り上げて腰に手を当てているんだから誰が見ても不機嫌だろ分かるでしょ。
「急にじゃないよ。さっきからずっと声をかけているのに生返事しかしないからでしょ。美人にあって舞い上がっているのは分かるけどいい加減シャキッとしてよ。そんなんだとまたモンスターに襲われて桜さんに助けてもらうことになるよ。」
うっ、それは不味い。
華煉さんに呆れらるわけにはいかない。
せめて良き友人くらいのポジションには付きたいのだ。
「ゴメン美香ちゃん。ちょっと浮かれてたよ。美香ちゃんを不安にさせないように頑張るよ。」
「無理はしないでね。」
「うん。ありがと。」
え?もちろん美香ちゃんは俺の登山リュックに備え付けた座席に座ってますよ。
気合いを入れ直してヨシオカーは進みます。
これから物資回収という重大なお仕事が待っているのだ。
華煉さんの荷物持ちともいうがこれはお礼というよりもご褒美な気がするのだが良いのだろうか。




