ハーフオーク美女に出会う
クソ、両手が重い。
かれこれ何匹のデカ犬を殴っただろうか。
いや、飛び上がって来た犬を叩き落とすように殴っているから倒せていないのかもしれない。
地に足が付いていない状態で殴られても力の半分以上はデカ犬を突き飛ばす運動エネルギーに変わっているわけだから着地さえ出来ればダメージは少なくなる。
ただ飛び上がったデカ犬を殴らないと後ろに抜けさせることになる。
美香ちゃんは隠れているので危険は少ないが、命がかかっているのだからリスクを減らすためにも一匹も通さなつもりだ。
しかし、このままだとデカ犬が諦める前に俺の体力が尽きそうだ。
「ギャン!」「ヨッシャ!」
何匹目かのデカ犬を殴り飛ばすと同時に気合いを入れ直す。
「「「「「ワォオオン!!!」」」」」
俺が疲れを誤魔化すために気合いを入れたのを見計らったかのようにデカ犬の動きが変わった。
クソ!
今まで二匹づつしか襲い掛かって来なかったのにここで一度に五匹だ。さばききれるわけがない。
地面を二匹が走りその上に一匹ジャンプで飛びかかって来る。
それに加えて左右の壁を蹴って二匹のデカ犬が襲い掛かかってくる。
重たい腕を気合いで動かすが左右のデカ犬をブロック塀に叩き付けるだけ精一杯だ。
まぁ、後ろに通さなければ物理耐性があるからデカ犬に少々噛まれても死にはしないだろ。
痛いかな?痛いだろうなぁ~。
そう思うと全身が強張る。
3匹のデカ犬が大きく口を開けて噛みつこうとしている。
ん?
なんか影が通ったような?
鳥でも飛んでいるのか?
「煉華流刀術『連幻葬』」
力強く凛とした女性の声が聞こえたと思ったらデカ犬どもの首から鮮血が飛び散った。
聞こえて来た声の美しさからは想像できない現象に俺は驚きの声すら上げられない。
「どうやら、無事のようですね。」
身長はハーフオークとなった俺と同じくらいだがスラっとした体つきから俺よりも背が高い印象を受ける。
服装は剣道着のような胴着と袴を着ている。
男が来ていたなら無骨に見える服装だが、そんなものでは彼女の美しさは隠すことはできていない。
テレビで見かけるモデルやアイドルが霞んで見える。
世の中にはこんなにも美しい人がいるんだ。
はぁ、こんな人と・・・無理だな。
仮に、天地がひっくり返ってそうなったとしても俺の心臓が保てない。
はぁ。
「君、大丈夫か?あのモンスターに毒はないはずなんだが?」
「あ、はい。大丈夫です。助けて頂いてありがとうございます。」
あまりの美しさに見とれていてしまった。
変な人だと思われていないだろうか?
彼女とどうこうなるとは思わないけど避けられるのは嫌だ。
遠くから眺めるくらいの権利は欲しいのだ。
「あ!美香ちゃん!」
いくら絶世の美女があらわれたからといって小さな女の子のことを忘れるなんて保護者失格だ。
真由子さんに合わせるまで俺が責任をもつと誓ったのに一日も経たないうちにこれではダメだ。
そもそも俺のような男が女性に期待することが間違っている。
そんな俺に親切にしてくれた真由子さん親子のことを第一に考えるべきなのだ。
それなのに他の女性に現を抜かすとは。
「お、お兄ちゃん・・・。」
「美香ちゃん!もう大丈夫だよ。」
美香ちゃんは隠れていたスチールロッカーから恐る恐る出て来た。
怖い思いさせてゴメンね。
美香ちゃんが怖い思いをしないように俺はもっと頑張る。
絶対に無事に真由子さんと再会させてみせるから。




