ハーフオーク、ヨシオカーを手に入れる
「スゥウ、スゥウ」
俺の不用意な言葉をきっかけに感情が爆発して泣き疲れた美香ちゃんは眠ってしまった。
目の下にある涙の後が痛々しい。
「ママぁ~、」
夢で真由子さんに会っているのだろうか。
弱弱しく母親を呼ぶ美香ちゃんの声に俺は罪悪感が半端ない。
「俺も少し寝るか。」
このまま美香ちゃんの寝顔を見ていたら罪悪感に押しつぶされてしまいそうだ。
ハーフオークになっても心の弱さは変わらないのだ。
美香ちゃんに謝るのを止め、明日に備えて疲労を回復させるために目を閉じた。
「ブタのお兄ちゃん!起きて!」
「う、う~ん、後5分だけ。」
可愛らしい女の子の声が聞こえるが独り身の俺の部屋にそんな存在はいるはずがない。
今日は土曜日なんだから起きるのは昼過ぎでいいだろ。
土曜日にしっかり寝て疲労をとらないと体力が一週間持たないのだ。
「ママを探しに行くんでしょ!起きないなら美香一人で行くよ!」
ママを探しに行く?誰が?美香ちゃんが!!!
微睡の中にいた意識が一気に覚醒する。
「ダメ!待って!すぐ起きるから!」
「も~、ブタのお兄ちゃんはお寝坊さんですね。そんなだとホントにブタさんになっちゃいますよ。」
「ゴメン、どうも朝は睡眠の誘惑から抜け出せないんだよ。ママに会いに行く前に食事にしよう。」
ファンタジーな薬品であるポーションの効果が高いのか一回の食事と睡眠で美香ちゃんはすっかり体調が良くなったようで顔色が良い。
これなら普通の食事で問題ないだろう。
「「ご馳走様でした。」」
「お兄ちゃん、早く行こ!」
美香ちゃんは昨日寂しさで大泣きしたのに元気に行動を始めている。
俺のせいで気持が沈んだままになったらどうしようかと思ったが大丈夫なようだ。
いや、また無理をしているのかもしない。
ただこのままここにしても真由子さんに再開できないことを認めて、どうすれば会えるかを考えて行動しているのだろう。
小さな女の子が母親に会えないで寂しくないわけはない。
ただ彼女が他の子よりちょっと強くて、ちょっと賢いだけなのだ。
真由子さんに会えるまでは俺が出来る限りのことをしよう。
少しでも美香ちゃんの心の支えになれば良いのだが。
「キャッキャッ!!すっご~い!!はやぁ~い!!」
美香ちゃんはヨシオカーに試乗中です。
説明しよう。
ヨシオカーとは改造して子とも要シートを上部につけた登山リュックを背負ったヨシオがレベルアップで上昇した身体能力を十全に使って走る乗り物のことである。
「ハァ、ハァ、ハァ。美香ちゃん。ちょっと休憩しても良いかな。」
「えぇ~、ブタのお兄ちゃん体力無いなぁ~。もう疲れたのぉ~。仕方ないなぁ~。ちょっとだけだよ。」
「ハァ、ハァ、ハァ。ありがとう。」
ヨシオカーはハーフオークと言うなのトラックである。
積載重量は一トンと多いが燃費が悪くすぐに燃料補給に加えてメンテナンスをしないといけないのだ。
レベルアップと言う名の改造を行うことで改善が見込める。
真由子さんを探して災害時の避難場所を一か所つづ探して回っているがこの地区の学校や公民館、公園などには人は全くいなかった。
いるのは緑小鬼だけである。
ファンタジー世界になったときのステータス補正を受けたからか美香ちゃんは緑小鬼がそれほど怖くないうえに俺が倒すことに忌避感がないようだ。
少し嫌なことをするだけだった。
変貌した世界で生きるために有用なことだけど、ちょっと複雑な気分になった。
俺や美香ちゃんが住んでいた地区にはすでに人がいないようだ。
他の地区に逃げたのか緑小鬼にやられたのかは分からない。
「仕方ない。隣の地区へ行こう。」
隣の地区には県警察署や消防署があったはず。
ここら辺で一番安全性が高いと思う。
「全速ぜんし~ん。」




