ハーフオーク隣人の様子を見る
「美香ちゃん!」
入り口の影になった部屋の中に小さな女の子が倒れていた。
仰向けに倒れた小さな女の子は間違いなく美香ちゃんだ。
俺の声に全く反応しない。
寝ているかのように穏やかな顔だが、ただ寝ているだけだと思うほど俺も能天気ではない。
医学の知識などはこれっぽちもないが俺にできる限りのことをしないといけない。
「呼吸はしているな。外傷はない。」
着衣に血は付いていないし、手をかざすと微かに呼吸している。
美香ちゃんに基礎疾患はないので恐らく脱水症状か栄養失調だ。
脱水の人に水道水はダメだったはず。
スポーツドリンクか経口補水液を与えるってテレビで言っていた気がする。
自力で飲んでくれることを祈って一人キャンプ用に買っていたスポーツドリンクを数滴だけ美香ちゃんの口に垂らす。
(ゴクリ)
「よし、飲み物を飲む体力はあるみたいだ。」
一度に与えると上手く呑み込めず気管に入る可能性があるので慌てず数滴づつ時間をかけて水分を補給してゆく。
500ミリリットルを飲み終わるとさっきよりも呼吸が穏やかになった気がする。
水分の次は栄養だ。
しかし、体力が無い状態や内臓が弱った状態で食事をするのは無理だ。
そもそも体力の消費を抑えるために眠っているだから食事が出来るわけがない。
「体力回復と言えばポーションだろ。」
手持ちのポーションを水で薄めて美香ちゃんに飲ませてあげる。
これでしばらくすれば食事ができるくらいには体力が回復するはずだ。
疲れたときに試しにポーションを飲んで体力が回復することは確認しているので間違いない。
「呼吸も落ち着いたし顔色も良くなっている気がする。起きたらすぐに食事が出来るように準備の前にバリケードを作っておこう。」
この辺りにいるゴブリンなら5匹くらいまとめて相手できるが美香ちゃんを守りながらだと分からない。
美香ちゃんが寝ているのに戦闘なんかになれば起こしてしまう。
俺の部屋の机と冷蔵庫を持って降りて階段の前を塞ぐ。
恐らくこれで上ってこないとは思うが用心に二階の踊り場にもアパートの共同倉庫にあった一輪車や肥料にブロックなどを積み上げて塞いでおく。
俺の家が荒らされてなかったから何となく他人の部屋のものを使うのがはばかられたのだ。
応急処置にすらなっていないようなバリケードだが1日くらいは大丈夫だ。
美香ちゃんの部屋に戻って食事の準備をする。
ポーションで体力が回復したとしても消化の良いものが良いはず。
病み上がりの人に雑炊。鉄板だろう。
部屋から持ってきた土鍋に水を入れてキャンプ用のガスコンロに火をつける。
野菜はニンジンと玉ねぎをみじん切りにして投下。
柔らかくなるまでよく火を通す。
味の元と少量の味噌で味付け。
ゴハンを入れて火が通ったら火を消して卵を入れて蓋をする。
余熱で卵を温まったら最後にかき混ぜで完成。
部屋の中に雑炊の香りが充満してきた。
(グゥ~)
食欲をそそるニオイが俺の空腹を誘う。
「我慢、我慢。美香ちゃんの食事が終わって・・・、カ○リーメイトを食べよ。」
誰も知りたくないと思うけど俺はチーズ味派です。
「ん、ん~」
可愛らしい声が静かな部屋に中に響く。
美香ちゃんが意識を取り戻したのだ。
「美香ちゃん、大丈夫?」
大きな声を出しそうなのを堪えて声を抑えて話かける。
「ん?ブタのお兄ちゃん?」




