ハーフオーク自室へ行く
住人に一人も遭遇せず築50年のボロアパートにたどり着いた。
住人には遭遇しなかったが緑の小鬼には10人以上遭遇している。
このあたりにはもう人はいないのかもしれない。
「とりあえずこんなものかな。」
スーパーやホームセンターは略奪されていたけどアパートは対象外だったようで部屋から無くなったものはなさそうだ。
部屋が散らかっているのはただ単に俺が片づけできないだけだ。
とりあえず、包丁と工具と救急箱、米にインスタント食品に調味料を回収した。
部屋の中の物は全て回収したいのだが持てる荷物は限られているために次の機会に回収することにする。
アイテムボックス系のスキルがほしいと真剣に思う。
「真由子さんと美香ちゃんは無事だろうか。」
ハーフオークになったばかりの頃は自分のことで一杯一杯だったけれど、レベルの上がりモンスターを相手にするのが苦で無くなって余裕ができたために自分以外のことに気を回すことができるようになっていた。
真由子さんと美香ちゃん親子はお隣さんである。
何故か美香ちゃんが俺のことをブタさん、ブタさんと言って懐いて来たので交流するようになったのだ。
真由子さんは仕事の都合上、夜留守にすることが多いので夜間保育が利用できないときに俺が美香ちゃんを預かったりしていた。
週末は夜間保育園が利用できるという話だったので少なくともここに二人はいないと思うが、数少ない交流のある人なので無事の確認くらいをしておきたい。
「ヨシオです。真由子さんいますか~。」
扉の前から声をかけるが返事は帰ってこない。
ドアノブが回るので鍵がかかってない。
これはどう判断すべきだろうか。
慌てて避難したために鍵をかける余裕がなかったのか。
それとも中で息を殺して隠れているから鍵が開いているのだろうか。
いや、部屋に隠れているなら鍵がかかってないのはおかしい。
刑事ドラマだと返事がないのに家の中に入ったら人が死んでいるシーンである。
もし亡くなっていたとしても埋葬くらいはしてあげたい。
「ヨシオで~す。真由子さ~ん。お留守ですか~。」
ドアを半分開けて中の様子を伺いながら声をかけるがやはり返事はない。
女性親子の部屋に入るのは戸惑われる。
「無事の確認をするだけ、決してやましいことではない。」
誰も見ていないのだから誰に咎められるわけではないのだがどうしても無断で部屋にはいるのは戸惑われる。
スーパーには勝手に入っていたのは良いのだ。
お客さんなら店に入るのに許可は必要ないのだから。
物資を調達するつもりだっただろうと言いたいのだろうが、今みたいな災害?のときにはスーパーは被災者に様々な物資を融通してくれることの一環だと思えばおかしくはない。
しかし、災害時だからと言って個人宅から物資を調達するのは犯罪である。
モンスターが跋扈する現在に法律を当てはめるのは間違っているかもしれないが俺の心情的に抵抗があるのだ。
ドアを開けて中の様子を伺うが人がいるかどうかは分からない。
テーブルの上に食事が終わった食器がそのまま置いてあるがそれだけでは何も判断はできない。
「ん?声がした?」
ほんとうに微かだが声が聞こえた気がする。
不法侵入とか気にしている場合でない気がする。
部屋の中に誰もいないことを確認すべきだと俺のオークの血が言っている。
俺は意を決して部屋の中に入った。




