12.氷河結晶討伐連合 / epilogue
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以前、素数連合の集会があった時と同じく、氷河結晶討伐連合の会議は裏首都帝国ホテルのパーティー会場で行われる。
視線を巡らせれば素数連合で生き残った猛者である騎士長、巨人が堂々屹立していた。氷河結晶の動きはここ数日でさらに活発化し、急遽会を開かなくてはならないほどの規模になっている。
「よっす」
「あ、結城君」
元ラバーズのミミーがいたので軽く声を掛けた。いつもはもっとテンションが高いような気がするが、今回はまるで一般人だ。居心地悪そうにしている。
寄り添っても解決しなさそうなので、スゥーっと離れてまた別の知り合いに挨拶をした。
「よっ、朧君」
「……勇気か、参加するんだな」
俺の唯一と言っていい男の友達――だと俺は思っている。
龍月朧。岩井塾、黎明期の生徒。素数戦線では共闘し、その後は生存の噂だけ聞いていたがこうして会ってちょっと安心だ。
名前を呼ばれて、本名を教えてなかったことに気づく。
「真倉黒也に頼まれた訳じゃないだろ?」
「うん。何というか、こういうこと言うとあれだけど――君に会いたかったというか……」
「なっ」
金色の一部混ざった髪が揺れた――。
朧君は仰け反って俺から距離を取る。疑惑の視線だ。
「ちょっと訊きたいことがあるんだよ」
「あ、ああ……そういうことな」
当たり前だ。ホモはフォースで懲りた。
名誉的憤慨は心の奥に仕舞いつつ、耳打ちする。
「糸言糸鳥って知ってるよな」
「ま、噂は予々」
「何か知っていることないか?」
唐突なのもあって、面食らった朧君だがすぐに返事を返してくれる。
「――岩井塾生に対して特に隠密に行動しているみたいなんだ。だから正直知らない。深い交流があるらしい義妹に聞けば何かわかるかもしれないけど」
糸鳥ちゃんは岩井塾生を警戒している。
極悪編隊に所属しているのも塾生からの干渉をなるべく少なくするためとも推測可能だ。だが、コロシアムでは俺が代理に出たことから、岩井塾のコミュニティに食い込んでいることはわかる。
岩井塾のメリットだけを抽出しているのか――?
ただの性悪かもしれないけど。
「義妹がどこにいるかわかるか?」
朧君は目を閉じて首を横に振る。だけど――、と。
「義妹の姉なら紹介できるよ」
「……義理の姉って糸鳥ちゃんのことじゃん。何? 叙述トリック?」
「言い方が悪かったかな。姉が二人いるんだよ」
「てことは糸鳥ちゃんの姉か妹か。三人姉妹なんだな」
「いや、違うよ」
「ん、んーっ!? 意味がわからん」
「二人の姉がいる…………だけど、その姉同士は姉妹じゃないんだよ」
「待て待て待て待て――、つまり二つの義理があるんだよな。それぞれ別々の関係で…………名前も二つあるってことか?」
「そうだよ」
ニヤリ、と頬を歪ませる朧君。イケメンがあどけない笑顔をするとかドキッとしちゃうよな。少女漫画みたいに。
「糸言木糸であり金糸雀金糸でもあるんだよ」
「面倒臭い関係だな……」
「ま、そうだね。俺が連絡を取れるのが金糸雀の方ね」
「そうか。じゃあ頼んでもいいか?」
「勿論」
あっさり目的は達成されてしまい、もはや氷河結晶討伐連合に参加する必要性はなくなった。だがまあ、俺の動線で不穏なことをするやつがいるのは業腹だ。
数分しない内に片腕義手の巨人がステージに上がった。自然と視線が集まり、空気が張り詰める。呼吸さえ忘れる閑静が圧力となって参加者を押しつける。異能なはずもないのに抗うことができない強さがある。空気に流されるとはこういうことなのだろうな。精神力のなさがありあり感じられた。
荘厳が服を着ているようは男は徐に口を開く。
「まずはこうして集まってくれたことに礼を言う」
ギラついた眼でガンを飛ばしながら言われても、と思うのは俺だけではないはずだ。皆無言で言葉に耳を傾けている。
首を回しながら最後尾からでもデカイ巨人を捉える。ふ、と息を吐いて思いを馳せてみた。
「さて、夏休み中に終わるのかね……」




