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「私の休日が突然に消滅した件。」

第二話です。天使二人がこっそりと人間界に降臨します。どうか最後まで読んでいただければ。

 暗闇の夜を月明かりだけが路地裏を照らしている。

「なんで…なんで私が…久々の休みなのに…」

 セプトが憂いと絶望のオーラを全身から噴出しながら項垂れている。彼女の溜息はもはや実体化して地に積もり始めそうな域だ。天使特有の白髪が悲しみに揺れた。

 セプトは第七級天使セプティムである俺の後輩だ。俺は第四級天使クァティムなので実質的な部下である。寮の自室でゴロゴロしていたところを引きずり出してきた。

「文句を言うな。世界の存亡をかけた極めて重要な任務なんだぞ。」

「わかってますよ!だから嫌なんです!心の準備をする時間くらい用意してくれませんかねえ!?」

「諦めろ。」

「うわあああぁぁぁ!私の休日!!私の優雅なティータイム!!しかもそんな大変な仕事を背負ってるのが先輩と私の二人なんすか!?どう考えても責任の分配おかしいでしょう!」

「仕方がないだろ。これが限界なんだ。むしろ二人しか選ばれない任務に指名されたことを誇りに思え。」

「それは…そうですけどー。」

 神や天使が人間界に干渉することは極端に規制されている。もちろん俺たちがここにいることも本来なら決して認められることではないのだ。

 それでも無理やり規則の穴を突きに突いて降りてきた結果、俺たちの天使としての固有能力はほぼ全て失われた。

 天使には数多くの能力がある。飛行、テレパシー、ワープ、透視、分析、などなど。また、天界の言語を理解したり神器を使用するのも人間界の者にはできないことだ。その多くを俺とセプトは失い、人間とほぼ同等にまで弱体化している。

 とはいえ神器は今まで通り使えるので、それでなんとかカバーすることはできるだろう。

「うぐぅ…まあ、いいですよ…来ちゃったからにはやったりますよ!ええ!人間界こっちはご飯が美味しいらしいですからね!」

 なんか本人の中で決心がついたらしい。理由がとても俗っぽかった気がする。まあやる気を出してくれたなら何でもいい。

「オーケー、じゃあまず件の転生者の情報を確認しよう。」


 『キサラギツカサ』、16歳。高校1年の半ばでいじめが原因で不登校になり、引きこもりとなる。日本時間の西暦2019年11月13日22時31分、コンビニから帰宅中に雷に打たれ死亡。遺体を神が回収し蘇生。『キサラギツカサ』はスキル『支配者』を与えられ異世界に降りる。

 『キサラギツカサ』は始まりの町『トラトス』で魔王城の方角を聞きだし、『支配者』で四輪バギーを生成。魔王城に向けて出発する。

 28日をかけ魔王城に到着する。なお道中の食糧や燃料、寝床は『支配者』で生成する。また、道中襲ってくるモンスターや野獣、盗賊は同じく『支配者』で消滅させる。その後魔王城を囲う結界を消滅させると、『キサラギツカサ』の異常性に気が付いた魔王『リヴォルグリード』の停戦を無視し魔王城及びその周辺にいた魔族を消し去る。

 人知れず魔王討伐の目的を達成した『キサラギツカサ』は世界の全ての国を巡るという目標を掲げ旅を始める。


「…といった感じだ。」

「改めて女神様の狂気の沙汰に呆れました。」

 きっと今頃女神様は始末書かされているのだろう。泣いてないといいが。

「ちなみにキサラギが魔王を討伐してから現在約一か月ほどが経過しているが、駆け出し冒険者の『アルフィ』、新米行商人の『べトラ』、元奴隷の獣人『ガルマ』、家出した貴族の娘『デルティア』、大魔法使いの孫の『エプセル』の5人の少女が彼の旅に同行している。」

「一か月で?」

「一か月で。」

 セプトは露骨に嫌な顔をした。信じらんない!といった感じ。

「彼らはこの町にいる。俺たちの任務は彼が世界に大規模な影響を与えないよう監視することだ。そしてもし大規模な影響が及んだ場合…わかってるな?」

「間抜けなクソ野郎の尻拭いですね。」

「…ああ。」

「女好きのイカレ野郎を四六時中遠巻きに見つめるために私の休日は消滅したんですね?

「……ああ。」

 どうやらセプトのキサラギに対する評価は地獄のどん底にまで落ちたらしい。そういう顔をしている。あれでも一応魔王を討伐してくれたことは事実なんだがな…。

「そうだ!今から二人で何か食べに行きません?仕事は明日の朝ということにして、今夜はパーッと景気よくやりましょう!そしたら休日の件はチャラにしてあげます。」

 いたずらっぽく笑ってセプトは言った。都合のいい奴だ。だがまあ、そんなことで許してくれるというなら俺としても万々歳だ。彼女の休日が消えたのは本当だし、それに俺も人間の食べ物には少し興味がある。

「仕方がないな。今夜だけだぞ。」

「そう言って、先輩だって食べたいんでしょう?」

 さっきまでの不機嫌はどこへやら。満面のニヤケ面で夜の街に吸い込まれていったセプトを追う。始まりの夜風は意外にも程よく涼しく心地よかった。

世界を管理する仕事がホワイトなわけないだろ!オラ!働け!!


つまんねーなと感じたときにはいつでも解除してくれて構わないので、少しでも面白いと思ったらブック―マークや感想、レビュー等してもらえると嬉しいです。


次話もよろしくお願いします。

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