【漫才】大好きな人のためにできること
甲→ツッコミ
乙→ボケ
二人「どうもこんにちわーーー!」
乙「一カ月前の話なんだけど……」
甲「急に俯いてどうしたの? 大丈夫?」
乙「大好きなお祖父さんがな……(鼻をすする)」
甲「え? ……ひょっとして?」
乙「うん……」
甲「そうかそうか……悲しいなぁ」
乙「そうなんだよ」
甲「……ご愁傷様です」
乙「僕、お祖父さんのこと大好きだったから」
甲「あー、君、そうだったね」
乙「お祖父ちゃんのね好きなものでね……あの、こう四角い箱あるでしょ? 入るヤツ」
甲「棺桶な」
乙「箱の中をね、飾ってやりたいんだ」
甲「それはそうだね。十分に弔ってやらんとね。この子めっちゃ優しい子なんです」
乙「そうなんです、僕、優しいんです」
甲「自分で言うな! そういうことは人に言われてこそなの! まあいいけど、それでお前のお祖父ちゃんは何が好きだったの?」
乙「パチンコが好きだった」
甲「パチンコ⁉ それはまた難しい話になるなぁ」
乙「あの四角い箱にね」
甲「棺桶な」
乙「普通花を入れるでしょ。だから入れてあげたんです。花の代わりにパチンコの玉」
甲「いや、それ燃えないよね?」
乙「いや人のお祖父さん燃やすとかひどいこと言うなぁ」
甲「そういう意味じゃなくて! 火葬よ、火葬の話!」
乙「はい? アンタお葬式に仮装してくるってどういう神経してんだ!」
甲「お前だよ! 誰が葬式に仮装してくるんだよ! リオの人にあやまれ!」
乙「リオの人も葬式はちゃんとしてる!」
甲「もういいよ! 話を進めなさい!」
乙「そうです!」
甲「そうです!じゃないよ! 葬式の話の続きでしょ!」
乙「うん」
甲「花の代わりにパチンコ玉入れたんでしょ」
乙「そうなのよ、ひとりずつ泣きながらね、ジャンジャンバリバリージャンジャンバリバリつって」
甲「いやおまえこそお祖父ちゃんばかにしてるじゃん!!」
乙「違う違う! 真面目だって!」
甲「あのなぁ、もう一回だけつっこんであげるけど」
乙「ほお、上からですな」
甲「パチンコ玉入れてたら火葬できませんよ」
乙「えええええ!!」
甲「えええ!!じゃないよ! そりゃそうでしょ」
乙「お前、葬式もバーチャルってどんだけ現代っ子なの!」
甲「そっちの仮想じゃない! ああもうめんどくさい!! 俺が言うのは火葬! ご遺体はね、そのままにしてると色々問題があるからね、火でね荼毘に伏すの! 寂しいけど!」
乙「あ、そっちね」
甲「いま理解したのかよ! ったく、まあいいけど。わかってもらえたら」
乙「じゃ、火葬の前にパチンコ玉また取り出すとしよう」
甲「あ、それならギリOKかもしれないな」
乙「お祖父ちゃんとお別れの時ね、泣いてたらみっともないと思うのよ。男は強くいきろって言われてるし」
甲「オレは泣いてもいいと思うよ。でもお祖父ちゃんがそういうなら気張らないといけないね」
乙「そうだろ? ちょっと練習してみてもいい?」
甲「よっしゃ、外ならぬ君のためだ、練習付き合うよ」
乙「「カチャンカチャン」(パチンコ玉入れる仕草)」
甲「あ、パチンコ玉入れてるとこね」
乙「お祖父ちゃん…いろいろ遊んでくれてありがとう。今でもお祖父ちゃんと一緒に作った竹とんぼ、大事にとってあるよ」
甲「ぐすっ(鼻をすする) いや俺の方が泣くわ」
乙「「カチャンカチャン」あ、ありがとうございます」
甲「他の弔問客も入れてるんだね」
乙「ありがとうございます。そろそろ出棺の時間ですね。家族みんなで運びますか。そっち持ってくれる?」
甲「あ、オレも手伝うのね。わかった」
乙「うーん!あれ? 重くて持ち上がらない」
甲「そりゃそうだよ、弔問客のぶんもパチンコ玉が入ってるわけでしょ? 重いよね!」
乙「うーん!」
甲「あんまり無理すんな」
乙「お祖父ちゃんの言う通り男らしくぅぅぅぅぅぅぅ!おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!! ガタン!! あっ、お祖父ちゃん!!」
甲「あっ! 棺桶が傾いた⁉」
乙「箱が傾いてガラガラガラーーーってお祖父ちゃんがパチンコの玉で滑って逝ってしまううううう!」
甲「パチンコ玉入れるからでしょ!」
乙「おじぃぃぃぃちゃああああああああああん!!!」
甲「ああもう、なんてことだ…どうするの?」
乙「あ、ちょっとまって、電話入った」
甲「いや電話よりもお祖父ちゃんどうするの⁉」
乙「もしもし? あ、おじいちゃん?」
甲「は?」
乙「え? パチンコで勝ったから焼き肉奢ってくれんの? いくいく! うん、あとで!」
甲「おい、お祖父ちゃん死んだんじゃなかったのかよ!」
乙「いや生きてる、めっちゃ元気」
甲「だってさっき」
乙「いや僕、死んだって言ってないし、今までの全部仮想の話だから」
甲「いい加減にしろ」
二人「どうもありがとうございましたーーー!」