1.誰得?
むかーしむかし、この星に隕石が落ちてきました。
衝突による環境破壊、津波、急激な温度変化やらその他もろもろで人類も動物もいろんな生きとし生けるものみな仲良く滅亡の危機。
被害の少なかった先進国が主となって色々動いてはいたけど、とある問題が発覚。なんと、徐々に男性の比率が著しく少なくなっていったのだ。
このままじゃいずれ滅びるわーって中、今度はどこにでもいる健康優良な思春期の女子たちがばたばたと謎の奇病で倒れはじめた。病名は「眠れる森」とやたらメルヘンチックではあるが、体から苔に似た植物が生えてきて昏睡状態とか、もはやパニックホラーの域。
おえらい学者さんたちがこぞって調べた結果、原因は隕石についていた微生物……簡単に言えば、生存本能しかないエイリアン? それに寄生されてしまっていたらしい。それもどうやら、すべての生き物が。
このままデッドエンドかと思われたが、エイリアンはどうやら友好的なやつらだったらしい。悪玉菌を捕食して細胞を活性化、そして自分たちの宿主である人類を生かす手伝いを迷惑と言えるレベルで積極的におこなっていた。つまりはこうだ。
「人類減り始めてなくね?」「メンズ足りてねぇじゃーん」「じゃあウチラで増やしちゃえばよくね?」的なことを始めていたらしい。バイタリティ溢れるパーリーピーポーか。
かくして、眠れる少女達は数年後に目覚め、エイリアンたちの策謀によりて立派な『青年』へと変身していた。人類滅亡の危機は回避され、世界は復興の道を歩み始めた……。
「とまぁ、このことはもちろんご存知ですよね?」
担当医の若くて美人な女医さんが、目の前でにっこりと上品に微笑んだ。普段ならどぎまぎしただろうが、今は放心状態でそれどころではない。
「人口も増えてここ百年近くは『変身』する子たちもずいぶん減ってきていたのだけれど……それにこれは初のケースね。何らかのエラーみたいなものなのかしら? 経過観察もかねて特別調査チームを組んであなたを診ることになるけど、心配はいらないわ。通常の変身した子たちと同じように政府も援助を惜しまないでしょう」
いやいやいや、不安しかないです。
「とにかく、あなたは新たな人生を始めることになったわ。お誕生日おめでとう、雛形旭君……いいえ、旭ちゃん」
お祝いの言葉に涙がでそうだ。
はい、僕は生まれ変わりました。男から女に。