51話 静かなる夜
もうちょいでソ連戦終わりそうです。あと10話くらいで終わるかな?
リゼット市陥落、ソ連軍前線の崩壊と大規模包囲殲滅から既に3ヶ月が経過した。この間、ソ連と連合国は一切交戦していない、小康状態を保っている。というのも、ソ連海軍は日本とアトランティアスの海上封鎖により船を損傷してしまい修理中。強襲上陸している余裕も無かった。
日本はと言うと、ソ連本土は冬、気温氷点下30を下回っており地面が凍っているため無理に攻める必要は無いのだ。ナポレオンやナチスの二の舞だけは避けねばならない。
冬の消耗戦は普通の戦争とは違う。いくら冬装備があったとしても、氷点下30度はキツすぎるし、冬の戦闘は普通のとは違う。向こうの方が有利だろう。あの無敵のナポレオンの大陸軍ですら大敗北したし近代化兵器で戦ったドイツだって1度敗北したのだ。日本が背後から奇襲しなければ確実に敗北していた。だからこそわざわざ冬に戦闘する必要は無い。
そういうことで本格的な上陸作戦は4月上旬となった。既に作戦名は決まっている。日中総力を上げた大規模作戦、オーバーロード作戦。最終目標は、冬が来る前にソ連の首都を陥落もしくは講和会議に持っていくことだ。
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ドニラス帝国 皇帝会議
ドニラス帝国の最高議会でもある皇帝会議。ドニラス帝国皇帝と次期皇帝、軍部代表、産業大臣、経済大臣、その他の大臣が集められている。
この会議の議題は、神聖レミリア帝国に押されているという現状の打破だ。
「さて、会議を始めようか。まず軍部より現在の戦況を報告せよ 」
「は。まずソ連戦線は決着がつき、その場所の統治機構が成立しました。」
「領土は獲得出来なかったのかね?」
「はい。何しろ戦場になった場所は死体や不発弾、毒ガスなどにより汚染された土地で復興するために多額の費用がかかり、消滅した村も多く、土地を獲得するメリットが一切ないどころかデメリットだらけなので...」
これが総力戦。土地は戦争で荒廃し、|財政崩壊するかもしれないソ連《請求先があるのかすら》分からん。人と金と資源を大量に消費して何も得られませんでしたという結果になりかねない。
「日本が以前言っていた総力戦理論。あれは本当の事だったのだな。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて真剣に読まなかったが今度読む必要があるな。他になにか報告は?」
「実は研究機関より例のものが完成したと。」
「なに、例のものだと!」
例のもの。それはドニラス帝国初の巨大航空母艦、キサラギ
全長1056mにも及ぶ巨大な鋼鉄の城。ドニラスの設計にしては珍しく装甲は薄く、高速艦となっており大量の戦闘機、爆撃機を積めるようになっている。
だが問題はコストが高くて1隻しか作れなく、装甲が薄いため護衛艦が必要だということだ。だがそのコストに見合うだけの活躍はしてくれると期待する帝国だった。
アトランティアス
この国もこの大戦を冷静に分析していた。まずドニラス帝国と神聖レミリア帝国との戦線は地図上ではレミリアが優勢。だがドニラス帝国はまだ戦力を温存しておりカウンターのタイミングを伺っている感じだ。さらにドニラス帝国が失った土地の殆どは無価値な土地。まだまだドニラスは大丈夫そうだ。
正直、リグルード王国がかなり活躍していたのが想定外だ。
日本は技術が高いことは分かってたしあの国とは関わりたくない。だがリグルード王国は別だ。この国にとってリグルード王国は前近代、いやもっと古い時代を生きる雑魚国家という位置なのだがそんな国がいつの間に近代化したのか?
調査をしてみると既にリグルード王国には首都から日本領オストランド半島を結ぶ鉄道を中心に鉄道網が発達しており既に車が走っている。といっても車自体はあまり無いが。
この短期間でここまで発展するのはおかしい。恐らく日本が入れ知恵してるのだろうが、他国の発展のためにそこまでやるのか?
おかしすぎる。アトランティアスにとって日本は関わりたくない国から強者としての利益を求めてないような、大国の権威を振りかざさないような、そんな不思議国家に見えたのだった。
「ニホンは実は他の国とは違う国なのかもしれぬな。」
皇帝は、日本への評価を変え始めた。
ソ連 人民会議
ソ連政府の最高議会でもあるこの人民会議には共産党のトップや重役と陸軍、海軍、空軍のトップが集まる。
「同士諸君、戦況の報告を」
共産党のトップでありソ連の最高指導者、ヨセフ スターリーノ書記長。絶対的な権力を持ち、反抗するなら容赦なく処刑する冷徹男。
「は、はい。現在陸軍はドニラス帝国に派遣していた軍の撤退に成功し再上陸の準備に取り掛かっております」
と恐る恐る答える陸軍のトップ。この男の言った事は嘘である。ドニラスに派遣した軍は敵の海上封鎖により撤退することが出来ず全滅した。だがそんなこと正直に言えば自分の首が飛ぶ。それが分かっているからこそ嘘をついたのである。
だが負けたことには変わりがない。この男はこの会議のあと、行方不明になったのだがそれは少し先の話だ。
「そうか。では空軍。」
「は。あの爆撃の後、本土防空に力を注いでいるため本土での制空権は完全に取れています。」
と答える空軍のトップ。だが現実は、防空に注力しすぎて前線に送れる戦闘機が減ってしまい、前線では制空権を奪われてしまう結果になったことは言わなかった。
「そうか。では海軍」
「は。現在中央海軍の活躍によりアトランティアス艦隊を撃破し、アトランティアス周辺の制海権を確保しました。」
この中で唯一勝利したのが海軍だった。だが幸か不幸か、この中央海軍主力艦隊はアトランティアス周辺を航行中に日本海軍主力艦隊と遭遇してまうことをまだ彼らは知らない




