50話 国家の建設
2011年1月12日
今年初の国会で陸軍参謀本部から提出されたひとつの占領案が賛成多数により可決された。その名も「青い鳥」。
その占領案を他の国にも通達し承認を得、実行する。
18日、日本軍占領地域 リゼット市の公民館
ここに去年まで存在した国家の王族や貴族を集めていたのだ。
「みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます。今日はこの占領地域の統治についての会議をします。議長はこの私、日本陸軍 細田守大将です。さて、皆さんに渡した配布資料を見ていただきたい。」
青い鳥
それは占領するだけでもコストと人を使う。だがそんなのに兵力をさけるほど日本に余裕はないし、数の多い中国軍もやりたくは無い。ならいっその事現地の人に任せればいいじゃないか?というのがこの作戦だ。
要は、この地域にあった国々をまとめて「東ドニラス連邦」にしてしまえば占領の維持費やパルチザン、敗残兵なんて気にしなくていい。これに対し各国はとくに文句を言わなかった。なぜなら、ドニラスやハーゲル王国といった周辺国の国境付近は死体と血、不発弾や毒ガスなどで汚染された土地が多く、それらの土地を整備する金も余裕も既にない。莫大な戦費を土地で補う事は不可能だったのだ。それにドニラスは対神聖レミリア戦で手1杯であり、ハーゲル王国は日本からの武器購入したために戦費がとんでもないくらいに膨れ上がっており早急に財政を建て直さねば破産するレベルまで来ているのだ。
アトランティアスは大陸外の領土に一切の関心はなく、他の諸王国地域は、自国の復興に忙しくてそれどころでは無い。ということもあり誰も反対することも不満もなかった。
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「統治機構に関してはこの配布資料をご覧下さい。現在、去年まで存在した王国、公国、大公国やその他の国々がそれぞれの地域を統治してください。この中で7つの選帝侯を選挙で決め、この7つの選帝侯の内1人がこの国の議長になるというものです。」
この辺は神聖ローマ帝国を少し真似た。
神聖ローマ帝国、神聖でもローマを領有してもいない、帝国でも無いという国名詐欺みたいな国だがその統治機構は割と使える。
「なるほど。確かにこれなら平等に決まるでしょうな。だがこれでは団結なんて無理だ。やがてバラバラに分裂するぞ」
と危惧する元ザーランド国王。
「ええ。あくまでこれは仮の国であり戦後の独立は保証します」
「なるほど。つまり戦後は分裂しようが知ったこっちゃねぇがこの国がお前らの傀儡国になる訳では無いか。でこの国は、共同交戦国としてお前らに食料の提供と軍事通行権、その他のもんを認めろってことか。」
「不満ですか?」
「いや。お前ら、去年俺達はソ連に負けた。負けた結果どうなった?俺はあの戦争で国、地位を失った。妻を、家族を失った。神を、信仰を否定された。我が国の文字を、文化を失った。国民、国民の土地、地域、権利を失った。神を否定し、文化を否定し、身分を否定する共産主義によって俺は何もかも失った。だが今日俺は国、土地、地位を取り戻せる機会がきた。さらに奴らに復讐できる機会まである。なら俺はこいつらの言う国家に賛成する。」
ザーランド国王の演説はその場にいた王族貴族の心を揺さぶった。彼らもまた、愛する人や国、地位や名誉を失ったのだ。この時彼らの心はひとつになった。
ここに多民族、王国、大公国、公国その他の体制がまとめられた、東ドニラス連邦が誕生した。
ナウペディア百科事典
東ドニラス共和国連邦
2011年に成立した、旧ソ連領ドニラス大陸東部にあった国々から独立した国家。当時、個人の自由が認められない共産主義に対して自由を認める、民族自決を推進し、その民族が集まった連邦国家。実際は連合国の占領維持費削減とソ連支配地域の反乱を誘うのが目的と言われている。
共和国連邦なんて名乗ってるがこの連邦に共和制の国は無い。




