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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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48話 リゼット市攻略戦

12月30日。日本陸軍第1機甲軍団はリゼット市近郊まで進軍し同市へ繋がる鉄道網を全て抑えた。残りは攻略のみ。

この都市はとくに要塞化されてるわけでもなく、陣地らしきものが無い。

ソ連の防衛陣地はかなりお粗末なものなのだが、それがひとつもないとそれはそれで不気味だ。

司令部ではこのリゼット市をどう攻略するか検討している。


「まさか、防衛陣地がひとつも無いとは。もしやあの都市にはソ連軍がいないのでは?」


と考える長門軍団長。何しろあの都市にはまだ一般市民がいる。戦場にするわけにはいかない。

だが、ソ連軍がいる写真が出される。その写真には、市内にバリケードや地雷を設置し市街戦をやるつもりだ。市民は避難すら完了して無いのに。


市街地戦は平原での戦闘とは違う。戦車が使いにくく、狙撃が有利になりやすくオマケに歩兵が強い。さらに待ち伏せや出会い頭の戦闘なんてことも多くこの軍団の弱点は市街戦を経験していない。オマケに建物に立てこもってしまえば砲撃の効果も薄くなり安く、建物を丸ごと吹き飛ばさなくてはならない。


わざと包囲網に穴を開けて敵をそこから逃げさせるということも出来ない。

オマケに高い建物も多く道は狭く、棄てられた車には恐らく爆弾が積まれているだろう。

略爆で焼き払うか。いや、市民がいるのだ。市民をどこかに避難させなければ、、、

「市民をのぞく。市民がいないと言わせればもしくは行動させればいいのか。岡島少尉、奴らにこう言ってみてくれ」


そばに居る岡島少尉は、長門軍団長がやろうとしている事に気が付き、恐怖したものの、これが損害が少なく簡単に市街戦を終わらせる方法なのだと自分に言い聞かせた。



ーーーーーーーーーーーーーー

リゼット市

ここで防衛しているソ連軍は、日本軍の動きを観察している。

ここの防衛責任者でもあるチェルノコフ少将は、自軍と日本軍の配置を見ている。

日本軍の戦車は脅威だ。対戦車砲も従来の戦車も日本のあの戦車には勝てない。それに射程距離の問題でアウトレンジされる上に威力も桁違いだ。なら戦車が使えない戦場にすればいい。この都市、リゼット市はかなり古い都市で道は狭い。とても戦車が通れるような道ではない。さらに都市の中心部は街の景観をぶち壊すような高い建物、40階建ての物があるのだ。狙撃スポットとしては最高だ。それに街のあちこちにバリケードを設置することによって敵の侵攻を食い止めたり、地雷を仕掛けたりすれば武器の性能差を覆せる。

それに時間が経てば本国から援軍が来るはずだ。


「ここから反撃の狼煙をあげるぞ。ん?なんか今日は寒いな。それに風もそこそこ強いな。」


チェルノコフ少将は空を見上げた。すると上空に1機の日本軍機が飛んでいる。

「ふ。爆撃でもしに来たのか?たった1機で何が出来る?」


日本の航空機は高高度から何かを落として去っていった。

落としたものは筒状のもの。だがその筒は一定の高度に達すると中身が割れて出てくる。

その中身は、熱した鉄棒と大量の油が入った容器。

目標地点は大きい建物と大きい建物の間。木造建築物が密集している所であり、備蓄用の燃料があるところだ。

この落としたものは焼夷弾だ。


落ちた焼夷弾は木造建築物に引火し火災が発生。隣の家にも焼夷弾は落ち、燃えていく。

単体の火は隣の火を呼び合い、新鮮な空気を吸収しながら成長していく。さらに10の火と10の火が合体したら20の火になるのでは無く、10かける10の、100の炎へと成長していく。これが火災合流でありこれが集まったものが火災旋風だ。

密集した木造建築物。さらに燃料タンクもある。燃料タンクに火が引火し大爆発が起こり、周りの建物やバリケードは吹き飛ぶ。

さらにこの冷たい風が炎を運んでいく。中心部で発生した炎は西へ、南へと運ばれ、車両や建物の中にいたソ連兵も民間人もみんな焼かれた。

街にいる人達は、火の手から逃げるために港へ川へ駆け込むが、そこへ避難しようとする車が群衆へ突っ込んだり、建物に衝突したり、車同士でぶつかりそこから火が発生したりした。

その後、火によって熱せられた空気は上昇気流をうみ、雨が降り始めた。この雨によって火災は全て消火され、街の中心部から南西地域は全焼。その他1部の場所も全焼し武器庫の爆発、兵士の壊滅によりソ連軍リゼット市守備は壊滅した。

死者数 ソ連兵 15万人以上 民間人 20万人以上。

この出来事をソ連では、地獄の炎の都市なんて言われるようになった。

結果的には日本軍は一兵の損害も出さずに都市機能を喪失したリゼット市を陥落させた。


これにより、大陸側にいるソ連軍は補給路を喪失。食料弾薬が一切届かないまま、日本、アトランティアスなどの連合軍の攻撃を受け年が明けた6日の昼、ソ連軍第1機甲軍団、第2~第4集団は投降した。

これにより東部戦線は終わりを告げた。

解説あった方がわかりやすい気がするので今回からつけてみます。(気が向いたら過去パートにもつけます。)

ナウペディア百科事典


東部戦線


東部戦線、もしくはドニラス東部戦線ともいう。

今次大戦の主要な戦線の1つ。

ドニラス帝国とハーゲル王国東部国境とソ連の植民地で起きた。

大戦初期の戦線であり、膨大な死者数を出した。

とくにハーゲル王国側では両陣営の合計死者数が1200万人を突破し死体で土が見えなかったと言われるくらいだ。

半年間の戦闘ののち、12月24日に始まった大規模攻勢により前線のソ連軍は壊滅。さらに日本軍第1機甲軍団の活躍もありリゼット市を陥落させた。

補給地の要でもあるリゼット市を失ったソ連軍前線部隊は最後まで抵抗したものの、1月6日に投降しここに東部戦線は終結した。


リゼット市の大火災

日本軍がリゼット市に立てこもるソ連軍に対して街の中心部に焼夷弾を投下したことによる大火災。

リゼット市は古い都市であり街の中心部だけが近代化されているのだが、ほとんどの建物が木造や道が狭く冷たい風が吹いておりさらにこの日は乾燥していたという大火災の好条件が揃っていたため大火災が発生した。

死者数は推定で30万人以上と言われている

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