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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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46話 ジャルタ要塞

ジャルタ要塞、それは高い壁に囲まれた城塞都市だ。

ここに日本軍は到着し包囲を完成させ早速攻略に取りかかった。


包囲完了後、航空機による制空権の確保と対空兵器の排除。そして武器庫の破壊を徹底した後、30機の爆撃機による無差別爆撃。追加に陸軍による壁を狙った砲撃。

1発や2発は耐える壁でも同じ場所に20発撃たれるとやがて壊れる。それを利用し1番目立つ場所の壁の破壊に成功。

破壊に成功したと同時にわざと包囲網に穴を開ける。

壁が破壊出来たら後はジャルタ要塞内にソ連の軍服を着させた日本兵を送り込みソ連語でこう言わせたらいい。


「大変だ!壁が破壊されてもう時期日本軍が入ってくる。ここはもうだめだ。幸い包囲が崩れている東側なら逃げられる!俺は逃げるぞ」


と大声で言いまくった数分後には町は混乱状態に陥った。

都市から我先に脱出するものが続出しジャルタ要塞の防衛軍は崩壊。都市に残っていた100人ほどの兵は都市に入った日本軍に殲滅され、都市から逃げた人達は、もれなく榴弾砲の餌食になった。


この朗報を聞いた長門軍団長は満足した。「そうか。日本版モヒの戦いは成功したのだな。とりあえず今日はここまでだな。」


地図を見直す。このジャルタを掌握したことによりここを中心に前線への補給路が確立出来、さらに敵の補給路の1部を圧迫する事もできた。これなら作戦もすぐに完了しそうだ。


だが現実は甘くない。先程、ソ連軍が我々の補給路を断つべく補給部隊を何度も攻撃していると知らせが来た。既に敵21個師団を退けたもののまだ敵は諦めておらず今も攻撃し続けているようだ。

ソ連の物量戦は想像を超えていた。畑から人が採れ、さらに無尽蔵に湧いてくる兵器。

地球にあったソ連と似たような国だが学者曰く、国力はあの地球版ソ連(1950年代)の100倍はあるという馬鹿げたような数値をたたき出しただけはある。

オマケに核兵器もちだ。情報部によればまだ核ミサイルの開発は出来ていないため制空権さえ取れば問題は無いとか。

そもそもこの作戦自体博打に近いのだ。

完全に制海権を確保しているなおかつ制空権の確保、補給路の確保が前提の作戦だが、今辛うじて制海権の確保と細長い補給路という残念な状態だ。補給に関してはこの要塞を攻略したことによって鉄道が使えるようになったのは大きい。明日も大きな都市を1つ攻略しなければならない。果たして一日で落ちるのか。

長門軍団長は机の上に置いてあるひとつの書類を手に取り、そして机の上に再び置いた。

その書類の表紙にはこう書いてあった。


「ダイナモ作戦 ソ連の新型兵器 劣化ウラン弾を使える重戦車を投入したソ連軍の防衛作戦か。これが事実ならソ連への考えを改める必要があるな。」



ーーーーーーーーーーーーーー

日本政府

北条首相は頭を抱えている。その原因はこのソ連の軍事作戦、ダイナモ作戦。

「これが真実ならソ連の認識を変える必要がある。」


ダイナモ作戦

日本陸軍情報部がもたらしたソ連の軍事作戦のひとつだ。内容は、今作戦の日本軍の進軍予想地点に地雷や大量の兵を置いて進軍を遅らせ、別働隊が日本軍後方を奇襲する。この奇襲に使われる敵戦車がまさかの劣化ウラン弾を使用するというものだ。


劣化ウラン弾は核の廃棄物である、劣化ウランを使用したものだ。劣化ウラン自体は鉄よりも重くさらに着弾すると自然発火する。核の廃棄物という事もありコストはかなり低い。だが所詮核の廃棄物。普通のものより放射能が高いことには変わらない。とくに厄介なのが、放射能を含んだ物質が空気中に巻き散らかされ辺り一体が汚染されてしまう。そういう危険性もあるため現在日本では使われたことがない。

これをソ連が所有しさらに使用してくるとなるとその損害は計り知れない。たとえソ連の砲撃に耐えられても空気感染は免れないのだ。マスクは必須なのだが今の日本軍全てにマスクを届けるほどの余裕は無い。マスクが届くまで彼らは汚染された空気を吸いながら戦わねばならなくなる。その場合の被害を考えれば政府の信頼と財政は一気に下がるだろう。隠蔽すれば良いのだろうが隠蔽したことが発覚すれば北条内閣総退陣もありうる。


最終的には、「現場の判断に任せる。マスクは生産次第すぐに前線に送る」という事にし、丸投げするしかなかった。

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