44話 怪物
森でソ連軍は魔物と遭遇し戦闘状態に入った。
開始から10分で既に24人がウィレレに殺られた。
手持ちの小銃ではやつの硬い皮膚に弾かれてしまう。
携帯型対戦車兵器が欲しい所だがそれを伝えたところで伝わらないだろう。
ソ連前線とソ連陸軍の中枢である参謀本部との戦場の考えは違った。
前線のソ連兵「最低でも重砲が無くては進軍出来ません!」
通信兵「重砲さえあれば進軍可能」
ソ連野戦司令部「重砲が来たら勝てる」
ソ連参謀本部「順調に進んでいる」
という状態だ。なお重砲の支援は無かった。さすが脳筋国家。
だから武器を頼んでも届く事はない。
なら武器を使わずにこいつを退けるしかない。
大隊長は最悪の作戦を思いついた。
「第4小隊は発砲しながら裏の森へ進め。それ以外は物音を立てずにゆっくりと前進しろ」
と大声で作戦を伝える。第4小隊は囮だ。ウィレレは目が見えなくて聴覚が優れているという点を利用して裏の森へ返すというものだ。この第4小隊は全滅するだろうが、ここでソ連軍が壊滅するよりかはましであるという判断だ。
この事に対し第4小隊は何も言わなかった。了承したということだ。これが人体錬成で出来た人の特徴だ。
俺達は木々に隠れ第4小隊は発砲しながら裏の森の中へ姿を消した
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その頃かおる達はソ連兵を発見した。
ソ連兵は休憩しているのか、座っているものが多い。
先程発砲音が聞こえたため何かと戦闘していたんだろう。
幸いまだソ連兵はこちらには気づいていない。
狙うなら今が好機だろう。敵の数を考えなければ。
見たところソ連兵は100人いるが、他の場所にもいる可能性がある。
「さてヨモさん。どうやって倒す?」
「......罠と奇襲を仕掛けて敵を減らす。恐らく敵の規模は1個大隊だ。つまり敵の予想戦力は1000人。重装備の兵はいないだろう。あちこちに罠を張り敵の注意を前方に引き付けた後後ろや横からナイフを使って敵を狩る。そうだな、指揮官を殺せれば楽になるな」
確かに数で不利な場合は敵の指揮系統を潰すのが鉄板だが、3対1000だ。いくらなんでも無理がある。
だがヨモは確信していた。ソ連軍の最大の弱点を。
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10分休憩した後ソ連兵は作戦を再開した。
予想外の戦闘で56人が死亡してしまい作戦の成功率が低下してしまった。さらに時間もかかった為、行軍速度を上げなくてはならない。だがいつ魔物や敵が出てくるのかわからないという恐怖で
きついとしか言いようがない。
慎重に歩いていると突然先頭を歩いていた3人の兵士が姿を消した。
直後、地面から悲鳴が聞こえる。
「落とし穴か。これも魔物の仕業か?」
と中を確認すると、落とし穴のそこに先端が尖った木の棒があった。
オマケに先端には糞や毒が塗られている。
出血で死ぬか毒で死ぬか病気で死ぬか。こんなクソみたいな罠を作るのは人間だ。ドワーフでもこんな考えはしない。
大隊長は拡声器を手に持ちこう言った。
「全兵に伝えろ。敵にバレた。罠に気をつけて進め!」
敵がいるのは分かるのだがどこにいるのかわからない。足音がしないのだ。足音はしないのに矢が飛んできたり、地雷や無数の落とし穴、トゲ付き捕獲網やらで1人、また1人と死んでいく。
森林という条件もあって敵を見つけにくい。
「この辺は全て罠だらけか。こうなったら迂回するしかないな。」
大隊長が指示を出そうとしたその時、脇の木から女がナイフを持って現れた。
突然の事で反応できなかった上、距離はたったの数メートル程度。
手に持っている銃を女に向けようとしたが、間に合わず次の瞬間に俺は、喉を切られた。
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零番隊とかおるの奇襲攻撃により大隊長を失った敵軍は混乱し蜘蛛の子を散らすように逃げていった。そのおかげで3対1000という状態になることも無く、オマケに統率が取れてないため罠に簡単に引っかかっていき、数をだいぶ減らせた。
返り血まみれのかおるは、敵がいなくなったため手に持ったナイフをしまい、近くにあった石に座る。
「これでこの任務は完了だな。」
ヨモも嬉しそうに言う
「これで日本が明日実行する作戦の不安要素を取り除けたな。まぁ明日の作戦には俺達も出るんだ。」
かおるの部隊は明日の作戦には参加しないため、戦場でこの辺りにバラバラの死体があるという光景を見ることは無いと安堵した。




