4話 経済
あけましておめでとうございます!
転移してから三日後、日本政府は正式に電波障害ではなく、日本含めいくつかの地域が異世界へ転移したと発表した。さらにその証拠としてマグロやウナギなどの魚介類がとれなくなった事。さらに新種の魚がとれること。現在わかる範囲での衛星写真を公表した。
この出来事により株価は大暴落。さらに漁業関連の会社は軒並み倒産した。マグロなどは養殖でしか手に入らなくなり、養殖中心の企業以外ほぼ全ての漁業は廃業に追い込まれたのだ。
今や魚は高級食材となったのだ。
それだけではない。ガソリンの値上げ、気候のズレによる異常気象が多発。それによる不作が続き、暴動が各地で起きた。この出来事を人は、暗黒の1週間と呼んだ。
転移してから10日後、暴動は鎮圧されガソリンの値上げは電気自動車の普及率が上がったことにより安定した。電気は、火力発電を減らし、その代わりに原発や水力発電、風力発電その他を増やしている事により、数ヶ月後には電力不足もかなり解消される。そして株価の大暴落もようやく止まった。この株価暴落が止まったのはリグルード王国との国交樹立と貿易協定、相互保証条約が成立したからだ。
現在、
北条首相とその他閣僚が集まっていた。
「リグルード王国との貿易は、食料を輸出してもらう代わりにインフラの整備や日本製品の輸出をすること。さらに、貿易拠点を確保するためにオストランド半島のスズネ岬を購入した。そこから現在オーズウェルへ鉄道をひいていると。で、完成は何時だ?」
インフラ整備などが専門の交通省 織田 悠斗大臣は、
「現在急ピッチで作っているので5ヶ月ほど先になると。」
と答えた。
未開の地で港もない。まず港の整備から始めなくてはならず、距離もある。港を作った後に森を伐採、土地を慣らし、鉄道を引く。国家最優先の事業であるため、金に糸目はつけない。
そして、現在の日本は過去最悪の失業率になっていた。何しろ暗黒の1週間により倒産した企業は1000を超える。中にはインドなどに工場を作っていた巨大企業が、転移により工場がほぼゼロに追い込まれ倒産したという事もあったのだ。この失業率はww1後のドイツもビックリなレベルだ。その為大規模な国家事業をして対策するという方針になった。その1つがこれだ。
経済大臣 堀田 庄司大臣。
「現在、失業率低下のために大規模国家事業を3つ程やっています。オストランド半島の鉄道と中国北東部の湾岸整備、離島の貿易中継の拠点化です。とくにリグルード王国との貿易ルートは硫黄島を経由するため硫黄島に街が出来ています。」
水産業大臣 向田 邦子
「転移により漁業はほぼ壊滅状態です。ですが今回発見した新種の魚計5080種のうち500種は食べることができ、そのうち86種は販売を開始。これにより漁業の再建はなんとかなりそうですが、予想通り、1500種以上は成分不明の物質が混ざっておりそれの解析に時間がかかります。」
成分不明の物質。毒なのかそうでは無いのかがわからない、元の世界には無かった物質だ。その為解析は慎重に進められている。
気象庁 大川大臣
「転移による気象変動は過去の火山噴火による気候変動より深刻な状況となっています。観測衛生や観測船のデータ解析によると、地球基準で例えると日本全体が亜熱帯気候になりました。さらに秋から突然春の気候になったので季節についていけずに大量死する動物が増えております。」
現在の日本は鹿や猪、牛、鳥、虫などが大量死しているという報告が相次いでいる。絶滅という事は起きないが、猟師の激減や乳製品や牛肉、鶏肉などの値上げが予想されていた。
北条はこの事を聞いて
「よく国が滅びなかったな。」
といった。普通なら暴動からの無法地帯が大量に出来るようなくらいの出来事である。だがそれが起きていないのはやはり不安だからだろう。ここで暴動をしたら餓死は避けられない。そう悟ったのだろう。備蓄の食糧は1年分あるという安心もあるのかもしれないが。
「それともう1つ、大気成分に妙なものが混じってます。5%程度ですが、解析不可能な物です。」
「緊急事態です!バハルス帝国がリグルード王国に対し宣戦布告、既に王国国境を越えたという情報が!」