33話 モスコ航空戦
ソ連の陽動のための硫黄島強襲上陸作戦、ゴッサの戦いに勝利した日本は、主戦場であるドニラス帝国などの負担を減らすべく、さらに敵の工場破壊、敵のプライドを潰すべく作戦が練られた。
その作戦名は
「モスコ襲撃作戦」
ソ連首都であるモスコは日本から約3000㌔北西にある。
そこまで届く爆撃機、新型無人爆撃機 王電
航続距離 6000㌔
全長 10m
最高速度 490㌔
最高高度 15000m
一機10億円という高価なこの爆撃機が20機
さらにこのままいけばギリギリ燃料切れで帰って来られないため取り外し出来る燃料タンクをつける。これにより航続距離を一気に延ばせる。
作戦は簡単。この爆撃機でソ連首都モスコを爆撃だが目標はモスコ城と軍需工場、航空基地だ。
例え世界が変わろうとも非戦闘員への攻撃は禁止である。
なおこの爆撃機はもちろん遠隔操作であり、パイロットは那覇基地にいる。
武器とは殺戮の簡略化、そして人を殺すという認識の軽減と敵に恐怖を与えるものである。例えば火縄銃は殺傷能力はかなり低い。命中率が低く射程も短い。なのに長篠の戦いなどで使われた理由。それは火縄銃の音である。撃てば必ず誰かが死ぬ。それがはたして誰かとは分からない。自分かもしれない。そういう恐怖に陥れば兵は進めない。さらに銃を撃った者は、人を殺したという罪悪感が剣や殴り合いより少ない。それに銃なら農民だって使えるのだ。
だが罪悪感が減っただけであって無くなった訳では無い。必ず精神疾患になる者はいる。それを減らすために爆撃機による、直接相手を見る必要のない方法から、安全地帯から遠隔操作するだけという無人爆撃機が生まれた。だが精神疾患はゼロになった訳では無い。話を戻そう。
作戦決行は今日の夜10時
新月の真夜中にソ連領空に侵入する。気付かれないように高高度で飛行。
午前4時半頃にモスコに到着。爆撃開始だ。
この作戦の立案者、細田守大将は、
「この作戦で奴らのプライドをへし折ってやろうか」
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作戦通り無人爆撃機は無事ソ連領空に侵入。モスコまでもう少しの距離に来ている。
バレることなく楽に侵入出来ていて参謀本部の人達は驚いている程だ。
当時のソ連は、他国には戦闘機ではモスコまで航続距離が届かなく、ドニラス帝国の空中戦艦だと魔力感知ですぐにわかるためすぐに迎撃できる。
航空魔道士も魔力感知でわかる。
長距離爆撃機は高度もあまり高くなく、重く遅いため航空魔道士の敵ではない。
そう考えていたのだ。
その常識がこの王電には通用しないのだが。
モスコに到着した爆撃機はすぐに爆撃を始めた。
目標、モスコの青の広場、人間製造工場、軍需工場、そして避難する民間人が殺されないように、秘密警察本部の破壊である。
なおモスコ郊外にある飛行場はすでに破壊済みである。
そのため現在モスコ市内での避難はほぼ完了してるという。
え?秘密警察はすでに本文から出て活動してるから爆撃する意味は無いのでは?
ただの嫌がらせ行為だがなにか?
こうして爆撃が始まった。
1発も目標地点からズレない精密爆撃。
そしてこの爆撃機を落とさんと欲する高射砲は、高度の差で届くことも無く逆に潰されるのであった。
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モスコ市内地下鉄の駅内に避難した秘密警察の長官である、
アリヤは叫んでいた。
「なんだあの爆撃機は!初めて見たぞあの形!おい、リベロ将軍、あれはどこの国の爆撃機だ?」
アリヤ長官は秘密警察所属だがソビエト共産党の中ではナンバー2の地位にある。それも書記長から最も信頼されている人物だ。
無論歯向かったらもれなく粛清である。
そのためリベロ将軍は冷静に答える
「あれは、期待にあるマークから恐らくニホンの爆撃機でしょう。」
「ではリベロ将軍。なぜ遠い国のニホンがここにいるのだ?空軍はどうした?」
モスコ防衛の航空戦力はすでに壊滅した。いや、真っ先に潰されたのだ。その上近くの航空基地は遠い。戦闘機でも4時間はかかる。ここにも魔道士はいるのだが、魔道士の限界高度は1万だ。
あの爆撃機はおそらく高度1万1000だろう。
あの高度で1発も外すことなく工場などを爆破するとは。
敵の練度が高いだけではない。あの爆撃機の性能もかなり高い。
そんな敵に、練度がかなり低いモスコ防衛航空部隊が勝てるわけが無い。
モスコ防衛航空部隊はここは首都である。前線から距離が遠い。また前線の航空部隊が領空への侵入を許すわけがないという慢心があったのだ。
その事実をそのまま伝えれば間違いなく俺は、粛清。よくて極寒の地で木を数える仕事をしなければならないだろう。
だから誤魔化す事にした。
「飛行場は既に壊滅しており迎撃機を送れません。」
「そうか。今後は各都市の防空対策と防空壕の整備が急務だな。」
爆撃後、モスコには地下鉄の防空壕化計画が進められ、やがて世界一頑丈な防空壕が出来るのであった




