31話 ゴッサの戦い3
ソ連軍は予定通り地雷原に全軍で突っ込んできた
「さてこの戦闘の主導権、どっちが握っているか教えてあげる。遅滞戦闘とか言われてたけどその任務は達成出来なさそうね。だって敵をこれから壊滅させるのだから」
そう高らかに笑うかおる。
「さぁ、全軍反撃の狼煙を上げろ!敵に立て直す暇を与えるな!地雷原から逃げる敵を倒せ!砲弾はありったけぶち込め!」
この掛け声により、大量の砲弾が、銃弾が、ソ連軍に突きつけられた。
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ソ連歩兵
「地雷だ。逃げろ」
「後ろに逃げたら督戦隊に殺されるぞ」
「スナイパーだ。かがめ!」
「俺の腕が」
「戦車が吹き飛ぶのに歩兵が突破できるわけないじゃん」
阿鼻叫喚と化していた。
既にソ連軍は半分以上が溶けており地獄絵図が出来ている。
正面突破が出来ないとわかった時には既に全軍の5分の4を失った時だった。
ラーニン少将
「おい、サーカス中佐をここに呼べ!責任を取らせてやる」
と重い声で言う。ラーニン少将はこの戦闘の敗北の責任全てをサーカス中佐にするつもりだ。だが、
「ラーニン少将殿、既にサーカス中佐はここにはいません」
「どこにいる?」
「それが、逃亡しました。」
「あいつ、逃げやがった。くそ。追う時間もない。ここから撤退する。本国に作戦失敗の伝達をしろ。わしの命もここまでか。」
作戦失敗。すなわち責任者は処刑。
彼は督戦隊に連れていかれたのであった。
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夜の砂浜を歩く人影。サーカス中佐だ。
「いや、危ない危ない。もう少し脱出するのが遅れてたら捕まるところだった。予定通り、ラーニン少将は処刑され日本軍がこの戦闘で勝利する 給料分以上の仕事したんですから後で何か奢ってくださいよ かおる大尉。あと特別手当下さいよ結城中佐」
サーカス中佐は、いやサーカス中佐と自称していたものは軍服を海に捨てて、化粧を落としカツラも捨てて本来の姿に戻とった。
彼は、闇に紛れて次の任務地点へいくのであった。
彼のコードネームは ゼロ
ゼロの任務は架空の人物であるサーカス中佐になりきり主戦論のラーニン少将の殺害もしくは排除及びかおる大尉が率いる日本軍が有利に戦えるための手助けだった。
サーカス中佐は存在しないが、まるで存在するかのように喋り癖や行動、好き嫌いや知識、ありとあらゆるものを作り出した。
己の人格を殺し、サーカス中佐になりきる。それをやってのけるのが結城中佐の部下達である。
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その頃、戦闘後の処理を終えたかおるの部隊はこのゴッサ平野で焼き肉パーティーをやっていた。
「みんな、乾杯!誰一人かけることなくみんなで焼き肉を食べれることに私、嬉しいよ」
「隊長。俺達が死ぬとでも思ってるんですかね?あの訓練に比べれば実戦なんてなんて優しい世界。訓練の方がしんどいってなかなかないですよ」
1部の隊員は地獄の訓練を思い出したのか顔が真っ青になった奴がいる。
「訓練より実戦の方が楽しいってみんな頭がイカれたのか?」
「そうかもしれませんね。でももし相手がゴッサ平野を迂回したら負けたかも知れませんよ」
「あぁ。その事だが大丈夫だ。安心しろ。敵は絶対このゴッサ平野を通る。何しろ結城中佐がそう言ってるのだ。」
「あの、かおる隊長。結城中佐って、そんなにすごい人なんですか?」
「あぁ。彼はかなり凄いぞ。1度結城中佐の仕事の手伝いをした事があるがやつは化け物だ。結城中佐率いるスパイによる情報は驚くほど新鮮だ。陸軍の機密情報から将校の食事から好き嫌いまでなんでも揃えてくる。オマケに今回の敵のように一個師団くらいなら操ってのける。みんな知らんかもしれないが実は敵型には結城中佐の部下であるスパイが混じってたんだぞ」
その言葉にマジかよとか反応があった
「戦争は情報戦が最も大事だ。たとえどんな軍事力があれど、英国、米国には勝てない。暗号がバレればどこに敵がいるのかわかる。その辺はとくに英国情報部が得意分野だ。あいつらだけには日本軍の情報部では太刀打ちできない。だが結城中佐の部下は別だ。彼の部下はな英国情報部すら掴められないのだから。日本軍情報部なんか何度面子を潰されたか。」
結城中佐と日本軍情報部はかなり仲が悪いと有名だ。
その理由がこれか。
情報戦。日本はこれの重要性を太平洋戦争で学ばされた。
ミッドウェー海戦だって暗号がバレたというのが前提での戦闘だった。もし、暗号がバレていないと五十六大将が考えていたら恐らく日本は負けただろう。




