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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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45話 クーデター5

「す、直ぐに党本部と連絡を取れ!最優先事項だ。」


市街地での暴動を監視していた共産党員は、この放送を聞き直ぐに本部への連絡を取る。


あまりにも多い情報量、あまりにも重大すぎる情報。無線機だと傍受される上に、高価な機械を持っていると怪しまれる為、連絡は昔ながらの方法しかない。


そして、その行為その物が罠であることも知らず


◇◇◇◇

陸軍参謀本部


「クソ、クソ、クソ!何がどうなってやがる!」


ゼーレヴェ元帥は、あまりの怒りにより周囲の物を壊し始めた。手は、出血により染まり、顔もまた、血のように赤く染まっていた。


「す、既に市街地における我が軍は、3割が武装解除をし、軍の統制維持は困難となっております。特に、ここから離れた部隊ほど多く...」

ハイパー中将は、恐る恐る話す。


「天子殺しなどやっていない!大逆などできるわけがなかろう! 近衛師団長はどこにいる!?そもそも奴が皇居にいれば」


「こ、近衛師団長は...」


ガナー中将が割り込んで発言する


「近衛師団長は、先程、マルゲリン街道ボルト交差点付近にて、暴動と化した市民に襲われ亡くなられました。」


ハイパー中将より、ガナー中将の方が元帥との付き合いは長い。元帥のこの怒りがこのままではハイパーに向いてしまい、軍内の不和になりかねないと判断したガナーだが。


「では、憲兵団は?」


「呼び掛けには応答がありません」


「海軍は?」


「応答ありません。将校みな所在も不明...」


「政府機関は?」


「市民団体に囲まれて孤立している為、連絡取れません」


「確か近くに869歩兵大隊がいたはずだ。彼らを近くの部隊と合流させて制圧しろ」


「869歩兵大隊は、投降しました...」


「では、ヴェルディ戦闘団を派遣しろ。あやつらは強いからな。所詮、市民共の集まり程度、装甲車で容易に突破できるはずだ。それに確か近くにいたはずだ」



「そ、それは...」


一瞬の静粛。この回答は、元帥以外みな知っていた。知っているからこそ、伝えにくかった事。



「ヴェルディ戦闘団は....」「既に武装解除し、アレクシア殿下の元に降伏したとの事」




元帥は、 手を震わせ、静かに手に持っていたペンを置いた。そして



「どいつもこいつも無能どもめが!」


と怒鳴り始めた。あまりにも強く杖を叩いたことで、机は大きく凹んだ


「まともな命令すら聞けんのか!どいつもこいつも、このワシの命令を無視するとは!皇国最高指揮官たる元帥だぞ!」


元帥は、立ち上がり、周囲の将校達を凝視しながら話し続ける。


「ワシは、天子様の天命を叶えるためにひたすら軍拡を主導し続けた 。魔法とかいう未知のものすら軍に取り入れた!その時に馬鹿どもはワシを笑った!それらを押さえつけワシは、新型兵器の開発を推し進め、それは成功した!」


ここにいる将校達は、元帥が当時どれだけ異端扱いされていたか知っている。


「ワシが本当にしなければならなかったのは、粛清だったんだな。」



元帥の思い描いた、世界に冠たる皇国。

それは、日本との戦争により打ち砕かれる。しかも、1度否定し、科学ではなく魔法へ切り替えた事を嘲笑うように、純粋たる科学技術の差で。歴史で、戦術で。積み上げた死体の山の差で。認めたくなかった。それは、科学を信じきれなかった皇国、いや、わしの人生そのものを否定する事になるから。認めたくなかった。それが、例えこうなる未来が見えた予兆があっても。無視した。


「おしまいだ。もう終わりだ。お前らも投降しろ。これ以上の戦闘は無意味だ。お前らまでも逆賊の汚名まで着る必要はない」


元帥の目からはもやは生気がない。軍が鎮圧の為に市民へ発砲した。これはゆるぎがない事実であり、仮に軍が皇居を抑えたとしてもそれはクーデターを実行したと宣言したようなものであり、アレクシアの発言が事実だったと認めるようなものである。

しかし、ここで投降しても市民への発砲を指示したという事で罰せられるのは確定。

大逆罪もついてくる。


既に詰んだ。どっちに転んでも詰んだのだ。


「アレクシア...舐めていたよ。所詮はいきがってるだけの頭の弱い女だと。まさか一撃で、ここまで有効打を打ってくるとはな。」


「諸君、今現時点で総司令官として最後の命令だ。全軍、直ちに武装解除しアレクシア皇女殿下の元に投降しろ。」


◇◇◇◇

14:00


アレクシアの指定時間となった。

参謀本部は投降。アレクシアの部下が突入した時には、参謀本部の将校達は自殺していた。各地のデモも解散をはじめ、事態は終息へと向かい始めた。更に、次々と貴族の不正が告発される。皇国の衰退の原因は全て軍と元老院貴族が悪いという世論が形成されつつあった。


「これも、全て殿下の筋書きでしょうか?」


アレクシアは、にっこりと笑顔で答える


「残酷な粛清は一撃でせよ...だったかしらね。腐敗してしまった国を立て直す。それに加えて、国内の不穏分子も一斉にあぶりだして根こそぎに潰せたわよ。」


アレクシアは、逮捕者リストを出す。


「皇国赤軍、武装解放戦線、ゾート解放戦線、革命軍、ゼーラ教団。オレンジ主義団。よくもここまでいっぱいい湧いたものよね。」


今回の成果でいちばん大きかったのは、共産党の隠れ家の摘発だった。かなりの量の武器の押収に加え、ソ連の武器設計図まで出てきたのだ。もはや、言い逃れできない証拠。

更に、多数の役場に仲間がいたことに加え、貴族も間接的に関与していた事も判明。


「さて、主要機関は全て制圧に成功。次に狙うのはここよね」


皇国軍。海軍は、既に皇女側についたが、1部の陸軍は未だに皇女側につかなかった。特に、大陸側のは。


今のアレクシアは、代理だ。継承権第1位から第3位がいないから。では、彼らが全員亡くなったとなると?


「さて、戦争終結の為の第2の作戦を始めるわよ。この文章を、バハルス共和国に送りなさい」


「アレクシア様、これは?」


「これはね、大陸側の皇国軍の位置情報よ。それと同時に、和平締結の条件。」


和平内容は、締結時即時停戦と皇国の大陸領の完全撤退。


「!?しかし、それでは共和国も納得するとは」


「そのための生贄よ。それと1つ、日本側に1つ情報を流すの。近いうちに神聖レミリア帝国は全世界に向けて侵攻を始めるとね。ついでに、共産党から発見したこの世界革命計画書も付随してね。」


神聖レミリア帝国が動く。それは、大戦争を意味する。相手は、ドニラス。戦争の影響は測りしえない。となると、瞬く間に全世界は火の海となる。そうなると最早


「戦争している場合ではなくなると」


「ええ。なので皇国はね。賠償金?一切払わないわよ。大陸領と、皇国軍の生贄で我慢させるわよ。」


◇◇◇◇

バハルス共和国

「なっ、なんなんだこの報告書は!?」


アレクシアの電報と、日本から持たされた情報をまとめた報告書を読んだカーゼル大統領は思わず叫んだ。

内容を簡潔にまとめると


・皇国は、半ば内戦状態。アレクシアによる新政権が樹立され、陸軍、海軍はそのまま新皇国軍として編入

・皇国は、戦争による消耗によりこれ以上の戦争継続が困難である事

・戦争の結末がどうであれ、外部勢力である神聖レミリア帝国による内戦介入の危機

・神聖レミリア帝国のドニラス帝国侵攻計画の情報

・皇国の立地上、ドニラスとの協力関係を結ぶのであれば存続は必須

・皇国は、北の脅威の防波堤としての存在価値がある事

・よって、即時停戦及び、和平交渉と終戦に向けた協議をするべき、そして最低条件として賠償金の支払いは無し


・ただし、バハルス共和国の北側の地は全てバハルス共和国のものとし、残存する全ての資材、兵器はバハルスのものとする


という内容。

「国土の大半を奪われ、奪い返したとはいえ賠償金なしで領土のみの講和だと!?」


あまりにもバカにしている。北方の資源は豊富だ。しかし、その資源を採掘する技術も設備も今の共和国にはない。何より、憤慨するのは一通の通知だ。


・皇国のこの停戦内容について以下の国は賛同する


アジア連邦加盟諸国 ルーデル連邦 リグルード王国 ユグドラ共和国 ドニラス帝国


この戦争は、あくまでバハルス共和国と皇国との戦争であったはずだ。それが、我が国抜きの講和交渉と、停戦への圧力。

これを無視するのは出来ない。皇国軍は壊滅したとはいえ、残存兵は非常に厄介であり、共和国軍では勝てないのだ。補足すら厳しい。


「これが、国際社会における我が国の立場ということか...」


バハルス共和国は、皇国との即時停戦を宣告し、講和交渉へと入った

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