41話クーデター1
東京決戦
甚大な被害を出したこの戦いは日本の勝利で終わった。しかし、受けた傷は大きかった。
42年東京空襲以来の被害であり、それを超える事態に国民は絶句した。
ある者は、愛する人を無くしたことで泣き崩れ後を追い。
ある者は、復讐を近い軍に入隊し。
ある者は、政府を恨み。
ある者は、恐怖で引きこもり。
ある者は....
政府は、少しでも軍事費を削減しようと、国防を疎かにした。
この致命的な失態は、言い訳のしょうがなく。内閣の支持率は危険水域に達し、国内ではデモが溢れた。
横須賀基地の壊滅は、首都防衛に著しい穴を作り出し、その穴を埋めるべく、主力艦の再配置が行われ、硫黄島を含む小笠原諸島の要塞化が最優先事項として開始された。
この戦争に反対していた左派勢力の政党はみな、手のひらを返し、この小笠原諸島要塞化に賛成し、むしろこの要塞化をしなかった与党をこぞって批判した。
メディアも、陸上イージスや電磁投射砲の全国配備を進めろと煽り、SNSを初め全国でデモや色んな情報が錯綜した。
内閣
「北条さんよぉ、これはもう終わりじゃないか」
北条内閣最大の失態とも言えるこの東京決戦は、国内産業にも大きな打撃を与え、買い占め騒動や治安の悪化を招き、数々のデマが流れ出す。
「総辞職して収まると思うかね?」
終わるとは思えない。だが.
「人事次第だな。」
「誰を推薦するつもりだ?」
「彼しかいないだろう。経験は浅いが、人気は高い。戦争が終わってもいないこの重大局面の時に任せるのは気が引けるが...」
7月21日 北条内閣は責任をとり総辞職を発表
次期首相を中泉 一護(28歳)に推薦し、中泉内閣が組閣された。
この事態は様々な影響を与え、記者会見が直ぐに開かれた
マスコミ「第98代内閣総理大臣として今後、どのような日本を目指しているのでしょうか?中泉首相?」
「このままの日本ではダメだと思っている。なので、このままの日本を変えようと思っています。この日本にはいくつもの問題があります。戦争や復興支援、外交や異世界との交流。地球への帰還や資源。その他にも色々あります。10年後の自分は何歳なのか。その時の自分が、この国はいい国だと誇れるような、いい日本を作れるように頑張りたい所存です。以上です」
◇◇◇◇
ポエマーとして話題にするマスコミ。
容姿の整った中泉を推す婦人会。
賛否両論で荒れるネット。
国内では荒れていた。
この急な辞職は、戦争にも大きな影響を与えていた。東京決戦により各地に展開していた軍は、国防の再計画による配置転換を余儀なくされ、皇国の輸送船団への攻撃も、アルヌ以北への攻撃計画は全て中止。
共和国軍も、日本軍の支援なしの追撃は難しく、撤退を終えて迎撃態勢を整え、連携の取れた皇国軍の前に歯が立たず、戦線は停滞。
前線の皇国軍は、貴族反乱軍と共和国軍の対処に専念し、立て直しをしていた。
だが、これをチャンスと見た者が動く。
皇国 統帥会議
「なんなんだ!この報告書は!?マクラーレン卿!」
戦争を円滑に行うための陸海統合作戦司令部 統帥会議。
ここで計画を建て、最後に御前会議にて天子大元帥の許可を得る。
だが、この機能は既に崩壊している。この統帥会議で出た結論がそのまま御前会議を通さずに決定されている。それを良しとしているのが、ゼーレヴェ元帥。
「はい。その報告書に書いてあるとおり、セントラルニュースは、アラフォーン会戦、リヒテンフェルス海戦、そしてトウキョウへの襲撃の結果をありのまま伝えようとしています」
マクラーレン卿独自の調査により、和平派が近頃活発になっている。特に海軍は及び腰だ。まだ負けてはいない。ここで和平などとんでもないのだ。
その調査の中で、セントラルニュースは、何らかの方法で戦闘結果を知り、近いうちにトップニュースとして報道するつもりだ。
そんな事は許されない。
だからわたしは、この事を直ぐに議題として取り上げたのだ。本来ならわたしはここに参加する資格は無いのだが、情報部の力があれば、ちょっと将軍にお願いするだけで入れる。
「マクラーレン卿、この記事はいつ発刊される? 」
陸軍 モルバ中将は震えた声で言う。
「明後日の朝。まだ本社に原文は残されています。今なら手を打てます」
明後日の朝。という事は、明日には新聞記事は完成し、印刷され各営業所に回される。その時に差し押さえても遅い。
「なら、今しか無いだろう」
と他の陸軍将校は声を上げる。
「もう、遅いのでは?仮に抑えれたとしても、このことは既に外部へ漏れてしまっている。セントラル以外の報道機関が掴むのも時間の問題だ」
と否定的な海軍 ジャズ中将
「否、今すぐに軍を動員しセントラルニュース本社にてその記事及び記者を取り締まり、徹底的な情報封鎖をすべきだ!今なら揉み消せる!」
ゼーレヴェ元帥はそう断言し、「セントラルニュースを国家転覆罪の容疑で取り締まれ!」と、鬼の形相で発言。
軍は動き出した...
それが終わりの始まりとは知らず...




