35話 リヒテンフェルス海戦2
7月2日 15時
この大艦隊の旗艦 第2特殊魔導打撃艦隊 超超大型魔導戦艦 ノイデンブルク
対ドニラス帝国用に作られた、神聖レミリア帝国からもたらされた魔法技術を用いた特殊魔化技術。砲弾から船体に魔法を組み込み、超射程にどんな装甲であろうとも破壊する火力。さらにそれすら数発は耐えうる鉄壁の防御力。
まさに皇国最強の戦艦。
この艦隊の指揮官であるリッドシュタッドは海図を見る。
「第213航空偵察隊信号ロスト!」
「第214航空偵察隊信号ロスト!」
この海域周辺に広く偵察機を展開している。
敵を見つけるため
が表面上の理由だが違う。
「ニホン、奴らの通信妨害の技術は遥かにこちらを上回る。ならば、それを前提とした哨戒をするだけだ。信号が途絶えたということはその近くにニホンの艦隊がいるということだ」
撃ち落とされる事を前提とした索敵。
指揮官としては最悪だろう。しかし、これまで威力偵察も兼ねて何度もニホンに向けて潜水艦や偵察船を派遣したが全て、一言も発することなく消えた。一撃で沈められたにしても、何かしら通信できるはずだ。それすら出来ないのであれば、それは通信すら出来ない状態にされて沈められた。
それを出来る技術があるとしても、その効果範囲内に入らなければ無意味だ。
ならば、効果範囲内に入ったという事は近くに敵がいるという事。
次々ロストの報告がはいる。
そこから敵の位置を大まかに割り出す。
「敵の数は最低、20隻以上。概ねリヒテンフェルス海域から南に数km地点にいる。ゼール第1砲台の射程圏内にもう少しで入るところか。」
ゼール砲台、いや、この海域にある砲台の5割
計58門はみな神の砲台に変えてある。
神の砲台。魔導艦の主砲の陸上版、簡易版にして、対ドニラス兵器の決戦兵器の1つ。
長大な射程と威力を誇る反面、熱が凄まじく20分に1発しか撃てない。10発もうてば砲身が曲がり使用不可能になってしまう。
だが、その破壊力は凄まじく、ありとあらゆる装甲を破壊する。エミリア帝国が複製したドニラス帝国の空中戦艦の装甲を軽々と紙のように貫通した。
これならば、当たれば如何に我々を超える技術があろうとも、無事に済まないだろう。
ゼール砲台の方角を見ると、小さな爆発音と共に黒煙と緑色の煙が立ち昇っていた。
「緑、という事は敵影見えず...か。どれだけの長射程なんだ。」
◇◇◇◇
少し遡り作戦会議にて
「信号弾?」
リッドシュタッドはこの作戦における重要な連絡手段を話す。
「そうだ。今回の作戦、いやニホンとの戦争において無線での通信は不可能と判断して良い。それは幾度もニホンに対して攻撃を仕掛けた艦隊が何の連絡もなく帰ってこなくなったことから確定だ。」
「通信機が壊れたとか、磁場の可能性は?」
「それも無くはないだろうが、調査や哨戒に出た船総数120隻全部がそうなるとは到底考えられない。いや、無効化する方法があると仮定するべきだ。更には、こちらの通信を逆探知する手段もあるべきだと」
「リッドシュタット提督、さすがにそれは.」
ゼルダ提督は、無線の逆探知を聞いたことがないと反論するが
「既に皇国技術省は、通信設備の探知技術を確立させている。ある程度制約があり実用化はされていないが。我々ですらある程度は至れたんだ。相手はその上を行くと仮定する他ない。伝え聞く話が本当ならば、我々の技術の50年以上は先を行く。」
逆探知技術や、無線の無効化。さらにニホンの調査資料にあった塹壕、要塞。大型輸送機に輸送船。レーダーなるものなど。どうすればその発想に至ったのか不可解なものが多すぎる。ましてや総力戦などという概念もだ。
「さて、そんな敵と戦うんだ。通信設備は使えないならここは、昔ながらの方法でやろう。光を使ったメーニア信号と、信号弾による連絡だ。攻撃を受けたら信号弾を発射せよ。それと同時に味方に向けて状況を説明する為にメーニア信号で伝える。無線が使える所まで届けば、そこからは無線で伝えよ。但し、敵に傍受されている事を前提とした、簡潔かつ決められた暗号文として発せよ」
◇◇◇◇
緑色の煙、それは信号弾。「我、敵の攻撃受けたり。敵影見えず」
光の点滅により文字を伝えるメーニア信号でも、敵影見えず。海域の入口にある砲台が沈黙した報告が入る。潰されることを前提としている為余り兵力は配置していないが、それでも皇国の守りが壊されたのだ。敵の海域侵入を拒む事は出来ない。
それから次々と緑の煙が立ち上がる。
偵察機の信号が消える場所が徐々に近付いている。敵は正確に砲台を見えない不可視の距離から破壊している。
あまりにも正確すぎる。だが、ゼール第2砲台や他箇所に隠された、急造の砲台は破壊されていない。
そこからリッドシュタッドは、ニホンの不可視の攻撃のカラクリを紐解く。
「敵の攻撃はあまりも正確すぎる。つまり、何らかの手段で敵は我々の位置を特定している。無線を使っている砲台ならまだしも、電波を一切出していない砲台も破壊された。ここから敵の探知は電波だけの方法では無い。隠された砲台に攻撃がなされていない事を見るに、内部にスパイがいる可能性は限りなく低い。何しろ何ヶ所は、餌を撒いたのだ」
リッドシュタッドは、予め急造の隠し砲台を作る際にいくつか資材やその資料をわかりやすい用、情報を盗みやすいようにしたのだ。
ニホンはこれに食いつかなかった。いや、知らない様だ。
「ということは航空機か?遥か上空から観られている?そう仮定するべきか」
リッドシュタッドは、正解に辿り着いた。
日本はこの時、衛星写真を元に皇国の砲台、列車砲や艦隊位置を特定していた。レーダーによる探知もあるが、日本の作戦の砲台の破壊は衛星写真を前提としていたのだ。故に、夜の木々に隠された砲台建設を見破れず、完全に見落としていたのだ。
「という事は、敵はこれに気付けていない。勝機はまだある。」
リッドシュタッドはまだやれると確信した。
さらに続けて報告が入る。
「ゼール第3砲台 第211小隊から赤の発煙弾を目視。敵影発見との報告!敵艦隊、海域に侵入!総数、最低20隻以上!」
「来た!全艦に次ぐ。プラン4発動!皇国の荒廃この一戦にあり!全艦全速前進!進め!」




