34話 リヒテンフェルス海戦1
アラフォーン会戦から少し時は遡り、
皇国海軍は山場を迎えていた。
「諜報部からの報告によりますと、ニホンがこの前線の大陸領の我が国の補給地点を狙って破壊を企んでいるという情報を掴みました。」
海軍大将ザリーニは、海域の地図を広げる。
「我が本国と大陸領には大きな海域がある。ニホンはその海域を通過し、大陸領最大の軍港ディジョンを破壊するだろうと。 」
皇国大陸領最大軍港ディジョン。ここから前線に向かう皇国軍主力を支える要であったのだ。ここを潰されると皇国軍の大陸派兵軍。つまり、第2、第3皇子の軍は干上がってしまうのだ。
大陸派兵軍からの物資要望は莫大であり、それを支えるために民間の輸送船どころか漁船すらも徴収していた皇国。既に限界を迎えつつあった補給問題だったがここを襲われると、皇国大陸軍は詰む。
これだけの大量の船を収容し、捌ける軍港は大陸領にはここしかないのだ。
あまり大陸領を重視してこなかった、また強大な敵がいなかった皇国にとって今回のような大規模な派兵は想定すらされておらず結果、このような状況を招いてしまったのだ。
「なるほど。ここは我が軍のザルニ腱というわけか。」
「軍神ザルニも足の筋を潰されれば動くことすら出来ない。正しくそうだな。」
「それでザリーニ殿はどのように対処されるつもりで?」
海軍大将ポロニアはザルーニに問いかける。
「私はここで決戦を行おうと思う」
この場の全員が固まる。
それもそのはず。既に皇国海軍は嫌がらせと戦力の把握を踏まえた潜水艦隊によるニホン、リグルード間の輸送船襲撃作戦を実施していた。しかし、途中で信号も通信も途絶え、さらに帰ることすら無く、情報は何も掴めない。
そう、何隻も組んで送っても全滅したのだ。
この事実は海軍を恐怖させるのに十分であった。何も情報を得られない。相手がどのような船を使っているのか?敵の探知能力、攻撃方法に火力も何もかもが不明。唯一わかっていることは、突然こちらの船の信号、通信が遮断されると言うこと。
「我が海軍はこの事実から電子戦において確実にニホンに劣っている。故にその電子戦の不利を少しでも補わなければならない。」
「なるほど。ここならば、東西は陸で挟まれ飛行場も近く、航空機も出しやすい。さらに点在する島々には多くの砲台がある要塞化されたリヒテンフェルス海域。オマケに、海は浅く大型艦は動けるが潜水艦が自由に動きずらい。考えたな。」
皇国がこの世界に来た時に周辺の地形が大幅に代わり、点在する島々が形成されたこのリヒテンフェル海域。それを皇国は上手く活用し、海域丸ごと要塞化させたのだ。これならば、ニホンの侵入ルートは絞られる上に、要塞、航空機、軍艦で攻撃出来る。
「決戦を挑むなら全戦力で潰そう。主力艦隊で前を塞ぎ、ニホン艦隊を誘導させつつケツから予備艦隊をぶつける。全方向からの攻撃ならば、如何にニホンが強かろうとも倒せるはずだ。そう思わんかねザルーニ殿」
「それならば、速度を重視した高速機動打撃艦隊を編成して殴り込みにかかるのもいいのでは?」
「それだと敵の攻撃が集中するだろう。ここは航空機も護衛に沢山つけて、沿岸からの砲撃、野砲も付け加えて攻撃するのがよかろう」
着々と決戦に向け準備は進む。
そして...
7月2日
リヒテンフェルス海域北部
皇国海軍主力艦隊
空襲部隊
第1航空艦隊 空母3隻
第2航空艦隊 空母2隻
第4航空艦隊 空母3隻
第7航空艦隊 空母3隻
警戒部隊
第21駆逐艦隊 駆逐艦4隻
第11高機動艦隊 巡洋艦3隻、駆逐艦1隻
第15高機動艦隊 巡洋艦2隻、駆逐艦2隻
第7哨戒艦隊 水上偵察母艦5隻 駆逐艦3隻
第12特殊魔導艦隊 水中魔導艦3隻 水上魔導母艦2隻
第1主力打撃艦隊
第1打撃艦隊 超大型戦艦3隻 大型戦艦2隻 巡洋艦1隻 軽空母2隻 駆逐艦2隻
第2打撃艦隊 高速戦艦4隻 巡洋艦3隻 駆逐艦4隻
第6打撃艦隊 高速戦艦5隻 巡洋艦1隻 駆逐艦5隻 軽空母4隻
第2特殊魔導打撃艦隊 超超大型魔導戦艦1隻(旗艦) 高速戦艦4隻 巡洋艦3隻 軽空母4隻 駆逐艦6隻
第2主力打撃艦隊
第3打撃艦隊 大型戦艦3隻 巡洋艦2隻 駆逐艦3隻
第4打撃艦隊 大型戦艦2隻 巡洋艦3隻 駆逐艦5隻
第8打撃艦隊 高速戦艦5隻 巡洋艦3隻 軽空母5隻 駆逐艦8隻
第1特殊魔導打撃艦隊 超超大型魔導戦艦1隻 魔導航空母艦1隻 高速戦艦3隻 巡洋艦3隻 駆逐艦6隻
その他護衛艦隊、特殊艦隊、補給船加え合計約400隻にも及ぶ大艦隊がこの海域に集結した。
さらに、多数の沿岸砲台に加え、大型列車砲、数百機にも及ぶ航空機も集まった。
皇国が列強第3位として認められた所以の大艦隊であり、皇国としての栄えある誇りのような艦隊でもある。それに日本は挑む事となる。




