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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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32話 アラフォーン会戦

アラフォーンに皇国軍と貴族軍150万人が展開。

多数の戦車に、野砲、更には装甲車まで揃っている。皇国の最高戦力が揃っていた。


それに対して、首都防衛にバハルス共和国軍8万。日本軍2万人。中国軍4万人。合計14万人。


戦力差10倍以上..

だが、技術的、戦略的優位をこの時の日本は取っていた。


皇国軍は補給線が伸び切り、武器弾薬の補給は滞り、弾薬の使用制限がかかっていた。

オマケに進軍速度を重視していた為に、飛行場の建設が追いつかず、航空戦力は皆無。さらに、地形優位は敵にあった。


首都近郊の丘陵地帯は日本が陣を取り、完全に高所を取られていた。さらに何も無い平野。

それに加え、ルーデル連邦まで延長された高速道路は補給の優位を日本に与えた。

さらに、大量のトラックにスズネ岬で採掘された潤沢な石油資源による安定した燃料補給。日中戦争や太平洋戦争で補給不足による苦悩を味わった事による反省はここで活きてくる。


アラフォーンから少し外れた臨時の野戦司令部


第二皇子と第6、第7軍軍団長が先の爆発により死亡。規定に従い、軍の総指揮官は第一皇子に移る。しかし、指揮系統は半ば混乱状態。


第1軍軍団長 フリードリヒはザナック皇子に提案する。


「我が軍はニホン、バハルスその他連合軍に対し数的優位はあるものの、地形的優位はあちらにあります。特にこの丘陵、セルボを取られたのはかなりの痛手です。我が軍の陣形が丸見えになってしまい、かつ、ここを落とさねば首都を攻略することすら出来ない。ここをめぐって争うことになるでしょう。」


ザナックはなるほどと頷く。


「しかし、第3軍、第6、第7軍は軍団長の死により指揮は半ば壊滅に近く、細々とした連携は不可能であり、大雑把な攻撃しか出来ません。特に、第6軍の機甲師団の突破力を活かしにくくなっているのはかなりマズイです。さらに、共和国の寝返らせた貴族軍も、統制が取れず」


頭数だけが揃った状態。オマケに


「付け加えて深刻な物資不足。弾薬燃料に加えて食料の不足は致命的です。我が軍に150万人を支えられるほどの食料はありません。もって4日。4日以内に首都を攻略するか、我が軍の数を半数に減らさねば勝ち負け以前に崩壊します」


長期戦すら想定していない上に、寝返った貴族があまりにも多すぎる。さらにつけ加えて、貴族は食料を貯めてすらいなかった。

貴族共は、私腹を肥やす為に領内の食料を飢饉寸前まで輸出してお金、貴金属やアクセサリーに変えていたのだ。そのため、寝返った貴族領地にも食料を支援しなければ領民が反乱を起こしかねない状態となっていたのだ。


皇国の想定以上にバハルス共和国は腐っていた。


「で、フリードリヒはどのような作戦で攻める?」


フリードリヒは、作戦を話す。


「作戦という程の作戦はありません。このセルボを落とす為に弾除けとして貴族軍を突撃。その弾除けを支援するために、白煙砲撃をして敵の射線を防ぐ。ある程度前進させた後、第5、第6、第7軍を突撃。さらに、この突撃の側面を支えるために第1、第2軍を投入。敵の榴弾や爆撃にも注意が必要なため、密集ではなく散兵で攻め、こちらの砲撃の射程距離に入り次第、陣地化からの砲撃。後はもう、セルボを落とすだけ。」


「勝てるかね?」


「やるしかないでしょう」


そういう事だ。勝算は薄い。というか、敵の戦力、戦術すら把握できてないのだ。先日のあの爆発の仕掛けすら分かっていない。ただ1つ分かることは、敵は、ニホンは我々の想像を遥かに超える程強く、謎に包まれていること。



「敵軍の弾薬が少ないことを願うしかないな」


◇◇◇◇

7月1日。両軍が睨み合って2日目。快晴。最初に動いたのは皇国軍だった。皇国軍の最初の砲撃が開戦の狼煙となった。

皇国軍の白煙を出す砲撃により、セルボから500m先は煙に包まれ、視界は取れない状況になった。さらに貴族軍の突撃。

しかし、これは日本軍に読まれ、航空機による偵察を元に自動車科ロケット砲による集中砲撃を開始。瞬く間に貴族軍は数を減らされていく。

セルボから800m地点に到達した貴族軍をみて、第5~7軍が突撃。セルボの北部から東部にかけて広く軍を展開。


これに対応すべく、セルボの砲台が火を噴く。

北部から来る第5軍を狙い砲撃。数で劣る日本軍は、とてもこの皇国軍全軍に対処する事はできない。

30分後には、貴族軍はほぼ壊滅。敗走し、第5軍も組織的抵抗が出来なくなった中第6軍、第7軍は300m地点まで到達。さらに第2軍はセルボ南東へ周り、各軍簡易砲撃陣地を作りセルボへの砲撃を開始。日本の砲撃が緩む。

明らかに戦況は皇国軍優位。


そう思われた時、先程の比では無い程の日本からの砲撃が、皇国軍全軍に向けられた。

分散砲撃。しかも全域における砲撃。皇国軍にかなりの損害が出たが、集中していない分被害はかなり抑えられていた。


皇国第2軍。


セルボから南南東200m地点に到達し、集中砲撃しつつも突撃準備へ兵士達が準備していた頃。


「後15分でこの砲撃は止む。そうしたら突撃だ。」「そうか。これで戦争は終わるのか。」


そう、安堵した時、南から異様な音と共に、日本の戦車が襲った。この攻撃により次々と大隊が壊滅。すぐさま対戦車砲、対空砲で反撃に出るも、皇国軍の大砲では日本の戦車の装甲は貫けない。

さらに、続けて砲台目掛けてロケット弾が叩き込まれていく。



野戦司令部では


「第2軍の南から敵軍出現!」

「第2軍すでに半壊!このままでは第7軍まで食われます!」「大至急、砲兵隊を向かわせろ!」「敵戦車砲撃効果無し!」「履帯をうて!足を止めろ!」


内部は混乱状態。

フリードリヒは冷静に戦況を見る。


(ここでニホンが打ってきた。しかし、目的なはなんだ?敵軍の進軍の先はここだが、なぜ第2軍の南から来た?ここを狙うなら、第2軍ではなく、迂回機動して叩くべきだ。第2軍を抜けたところで、第7軍、第6軍がいる。さらに予備戦力の第3軍もいる。合理性がない。狙いはここではない?)


砲撃陣地はみな、セルボへ向けられている。そのため側面からの攻撃には弱く、容易にうち崩せる。しかし、それは奇襲だからこそであり、向きを変えればいいだけであり対処可能。

ニホンの戦車と我が国の戦車での一騎打ちでは負けているが、数で囲め足を停めればやがて倒せる。


そんな分かりきったことをニホンがするはずがない。


その時、報告が入る。


「バハルス軍の奇襲攻撃!第6軍の背後から出現!」


「敵の狙いは、第6軍の機甲師団か!」


皇国最強最新鋭の戦車が揃う第6軍。日本はこの戦車をドイツ軍のティガーⅡと同等以上の性能をもつと判断。特にこれが集中運用されている第6軍、第3軍を脅威と判断していた。

1台の敗走をも許さず全滅させる。これが日本のこの戦いの最大目標でもあった。何しろこの戦車には特殊砲弾が使われており、日本の戦車も傾斜装甲など関係なく一撃で破壊可能。

アラフォーンにこもられると、市民に被害が出る以上、戦場に出てきてもらわないと困る。


虎の子の戦車。それを投入するタイミングは非常に重要だ。ここで日本は皇国軍に戦車による決戦を挑んだ。...ように見せかけることに成功。第6軍の機甲師団である第8~第26機甲師団は第2軍支援のために南へ急行。第7軍の中央を通ったタイミングで、手薄になった第6軍を狙い、分散砲撃による戦場の煙に紛れてバハルス軍が背後から奇襲したのだ。


さらに続けて


「バハルス軍と連携して敵の航空機が侵入!対地攻撃機のような兵器でバハルス軍を援護の模様。このままでは分断されます!」


フリードリヒは選択を迫られていた

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