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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
33/91

30話 工作

アレクシアは何度も失敗を経験した。

それは、皇女という地位に甘んじて、何でも物事は権力さえあれば解決すると考えていた事に加え、経験の浅さが原因であった。

彼女はその失敗から学び、急激に成長した。

アレクシアは穏健派を作り、その筆頭にマクラーレン卿を置いた。それは、マクラーレン卿が持つ諜報組織の存在。更に議会における絶大なる発言力を期待していたのだ。


だから彼女はマクラーレン卿を味方につけ、穏健派筆頭にした。


しかし、それは結果的には大失敗であった。


ウメダでの工作に、作戦目標は果たせたもののニホンを過小評価してしまったのだ。

いくら優れた兵器があっても、正しい情報、命令、伝達網が機能しなければ使えない。

それがマクラーレン卿なりの戦争への考えであり、情報こそが戦争の勝敗を分けるものだと考えている。そのマクラーレン卿から見たニホンは、「取るに足らない存在」「情報を秘匿する能力がない。お粗末」「国民は簡単に騙されやすく、情報の管理も杜撰。」「よって、皇国が負ける理由がない」と見ており、今や穏健派ではなく、拡大派へ鞍替えしてしまった。


そして、穏健派リーダーとなった彼女は今や覚悟を決めている。


クーデター計画。


継承権をもつ皇子はみな、戦場に出払っており国内には天子のみ。

しかし、軍や各種報道機関を味方に付けなければ確実に失敗する。

既にアレクシアは陸軍、海軍の勧誘を開始。


陸軍 中立派の筆頭 ゼータ

中立貴族の取り込みに、陸海の若年将校集団の取り込み。皇国技術連盟や民間企業も取り込んだが、それでも全体の20%


決定的ななにかが足らず、実行に移すのは未だ不可能。


その最中、神聖レミリア帝国の義勇軍派兵。

しかも、日本本土への直接攻撃。


「ただでさえ、日本との全面衝突を避けるように色々やってたのに、世界最強国家の一角が味方につくなんて言われたら、止まらなくなるわよ...」


ドニラスと同格の超大国にして、皇国では手も足も出ない、出鱈目国家。神聖レミリア帝国。

皇国としては敵対したくない国であり、皇国の魔法技術の発展に協力してくれている国でもある。


「協力ね...あれはどう見ても私たちとドニラスを戦わせたい、駒としか見てない扱いよ。」


神聖レミリア帝国はエルフの国。そのエルフと会ったことがあるが、彼らはみな私たちを虫けらでも見るような目で見ている。

だが、それでも皇国は魔法技術の発展により、いかなる装甲をも破壊する砲弾の完成に、超長距離で飛ばせる砲台。さらに、量産化はまだできてないが、圧倒的防御力と火力、機動力を誇る新型戦車に、新型戦闘機の開発。と恩恵はかなり受けている。


「それでも、日本には勝てない...あの国は、それを超える兵器を持っている上に、生産力も違う。何より戦い方がまるで違う。」


しかし、それをはっきり分かっているのは、富士での演習を間近でみた私だからであって、恐らく皇国では誰も真の意味で理解する事はないだろう...


「経験しなければ理解されない。誰の言葉でしたっけ?」


アレクシアは、それでも前に進む。愛する祖国を守るために。


◇◇◇◇

マクラーレン卿は笑っていた。というのも、この戦争にレミリアが義勇軍とはいえ参加する。

しかも、東京への直接攻撃。


最初聞いた時は正気を疑った。ニホンは確かに技術力は我が国をも超える。しかし、レミリアのあの船は常識が通用しない。ニホンでは撃墜どころか傷すら付けられないだろう。


「何しろ、歴史上、レミリア帝国のあの兵器に対抗できたのはドニラスのみだ。」


抵抗することさえ許されない圧倒的な破壊力。これによりニホンの首都は焼き払われ、もはや派兵所ではなくなる。ハーデンフェルの栄光は目の前だ。




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