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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
32/91

29話 衝撃

アルヌの虐殺。


それがテレビで、一般家庭で放送された。


しかも生放送で。


慌てたNHKはすぐさまフェリーの映像に切り替えた。しかし国内最大のSNS、青い線ことスカイラインはこれが大きな話題となる。

トレンドはこの映像に関する話題で1色となり、各報道機関が一斉にこれについて報道し始める。

テレビ番組では


「私の娘、加藤絵里もあの街でなくなりました...私のたった一人の娘が。絵里は漫画家で、街の資料が欲しいとアルヌに行って...こうなると知っていればあの時止めたのに...」

「娘の愛梨も、絵里さんと凄く仲が良かったと。娘は、看護婦でたくさんの人を救うのが夢だって。娯楽の少ない向こうでは、体の傷を治せても心の傷は治せない。でも、絵里の漫画なら心の傷も少しは治せるって、そう手紙に書いてあったんです...」


日本国内は半ば、パニックのような状態となった。

さらに、アルヌの状況、映像から次々と日本人が特定されていく。

さらに、どこから流れたのか、皇国のこれまでの統治による状況が出回り、より1層熱が上がる。


「ハーデンフェルはバハルスから撤退しろ」「ハーデンフェルに制裁を!」



「国会前で推定10万人のデモ。さらに、大阪、仙台、名古屋、博多でも大規模なデモ。暴徒化1歩手前という状況だそうだぞ北条さんよぉ。どうすんだこれ」


黒岩は北条首相に問いかける。


「まさか、ここまでやってきたことが裏目に出るとは。」


「梅田でのテロで内閣支持率低下。それを防ぐために危険地帯にて日本人を救出する日本軍。B級映画らしい脚本でお涙頂戴をやろうとしたらまさかの全国放送での大虐殺映像が流れる上に被害者には日本国民がいる。このままいけば、大暴動が起きるぞ。」


「日比谷焼打事件の繰り返しか」


「そうだ。」


日比谷焼打事件。1905年9月5日。日露戦争での講和内容をめぐり、甚大な費用と死者を出しながら、ロシアから賠償金が1円たりとも貰えなかったことに対する市民のデモが激化。暴徒化し日比谷公園を中心に暴れた事件。


「それどころじゃねぇぞ。野党の帝国保守党がかなりの勢いをつけていやがる。なんでも、異世界の国を滅ぼしてしまえだのとな。」


黒岩は、最近できた帝国保守党のチラシを机の上に出した。


「大日本帝国の遺志を継ぐとかいう、自称愛国者の亡霊共か。」


「近頃のえすえぬえす?ではそういう過激な言動が人気を得やすいからな。左翼のこうわ見廻組や社会主義党まで参戦1色だ。どうするつもりだ北条さんよぉ」


黒岩の言うことはその通りだ。帝国保守党に限らず、共産主義に近い、こうわ見廻組。陰謀論のアルカリ党等が出始めてる。インターネットの普及がこのような流れを作っている。


「こうなれば、腹を括るしかないだろう。国民を守るのは政府の務めだ。」


「てことは、北条」


「ああ、戦争しかない。既に選択肢なんてない。今までの戦争とは比にならないぞこれは」


日本がついに動く。


◇◇◇◇

ルーデル共和国のチャオは、現在のハーデンフェルとの戦争を見て方針を考える。


現在、ハーデンフェルは、西部の軍は大敗し未だに国境付近に留まっている。

中央はアルヌを占領し、寝返ったバハルス旧貴族軍と合流し、首都へ向けて進軍中。しかし、アルヌ陥落前に共和国軍の手痛い反撃を受けて、旧貴族軍は瓦解。立て直しに時間がかかる模様。

東部では、皇国軍が首都近郊にまで迫りつつある。

そして、我が国はハーデンフェルとの密約に従い、国境地帯の一部を無血占領し、それ以上の侵攻予定は無い。


しかし、状況は変わった...

日本の参戦。いや、参戦するだろうという、ハーデンフェルに対する最後通牒が送られた。


「天は我に味方せずか。日本と戦争するのは論外だ。ならば、ここは撤退しかない。」


ルーデルのバハルスの1部領土占領は、国内における統一派の発言力を高める効果があった。しかし、ここで引けば振り出しに戻る。それでも撤退するしか、生き残る道は無い。選択肢は無かった。


「全く、頭が痛いよ。」

ルーデルの派閥争いはまだ続く

◇◇◇◇

リグルード王国

賢王リードハルト王は、ハーデンフェルによるバハルス共和国侵攻の報告書を読み終え、日本から取り寄せたコーヒーを飲んでいた。


「えげつない作戦を考える者がいたものだな。技術差を覆す作戦か。だが、それは小手先の技でしかない。大局的に見れば...か。」


「魔導士による、このような突撃戦法。ありだな。参謀長にでも、我が国でできないか聞いてみるか。」


このレポートの本題は、それでは無い。本題は


「アルヌにおける虐殺。国際法でも禁じられてる行為をやるとはな。しかもニホンに喧嘩を売るとは。」


日本は、ハーデンフェルに対して即時停戦命令と、アルヌにおける虐殺の調査団受け入れ。及び虐殺に関係した者の引渡しを要求。それをハーデンフェルは拒否しさらに日本を侮辱した。


これに対し日本は開戦日時を添えて宣戦を布告。恐らく、直ぐに軍を派遣出来ないためにこのような文言を加えたのだろう。

問題は、我が国はどう動くべきかだ。

日本が勝つのは間違いないが、参戦するべきかどうかだ。まだ経済改革の最中で今、派兵できるほどの余裕があるのか?


「軍と相談しなければ始まらないか」


後日、リグルード王国は日本との軍事同盟を理由にハーデンフェルへ宣戦布告した。

◇◇◇◇

ハーデンフェル

アレクシアは、半ば発狂していた。

恐れていたことが起きてしまったのだ。


数時間前、元老院


「本日の議題は、アジア連邦ニホン国が我が国に宣戦布告してきた件についててです。」


元老院議長 エルメスは日本からきた布告書を読み上げる。

さらに


「さらに、アルヌにおける虐殺を明確な国際法違反とし、アジア連邦、リグルード王国、ドニラス帝国、ユグドラ共和国、ルーデル共和国連邦の国印が押されてます。」


議会がざわめく。


「アジア連邦だの、リグルードだの、ルーデルだのはどうでもいいが、ドニラスがいるとは」「かの国まで相手にするのか」「元から奴らは敵では無いか!」


皇国の思惑とは裏腹に、状況は悪化していく...


「ドニラスとはいずれ戦争するんだ。その前にドニラス用の決戦兵器をニホンで試せば良いでは無いか?いい実験材料だろ?」


元老院議員の1人が呟く。それに呼応して「そうだそうだ」と上げる議員ら。

議会は既に対日戦へと切り替わり、更なる戦争へ突き進む皇国。


これを憂う者も当然いる。そう、この議会に参加し、見ていた彼女は、動き出す

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