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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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28話 虐殺

市内に次々突入する皇国軍。

市民は次々と白旗を掲げ投降した。

第二軍軍団長ケーニッヒは、その光景をみて喜ぶ。


「市街地戦までするとなると、いよいよこの街を完全に消さなければならなかった。お互い避けられて良かった良かった。」


アルヌは、皇国のこの作戦の中でも補給基地として機能する予定の街なのだ。

ここまで破壊してしまった以上、当初の予定のようなことは出来ないが、まだ修正はできる。


「にしても」


街は瓦礫の山だが、想定以上に区画整理され、発展している。


「この発展具合を見る限り、地方都市レベルですか。確かここは田舎の街だったはずですが。」


想像以上に発展しているアルヌに驚く。元の情報によれば、アルヌは街道にある街であり、歴代領主により発展が遅れ、田舎町程度とされていた。それが、なぜこんなにもコンクリートや街灯、電線があるのか?


「うん?」


ケーニッヒの足元に、瓦礫に混じってなにか、絵のようなものが落ちていた。


「これは、なんでしょう?」


その本のようなものを手にとり、「機動 し ダム」と、1部汚れて読めない本を見る。


「ふむ、庶民の娯楽本ですか。なるほど。絵と会話で物語を作っているわけですか。豊かな国ほど娯楽が発展する。ここはそれほど豊かだったという事ですか。」


ケーニッヒはこの街の領主であるグローに興味が出た


「軍団長!ご報告があります」


「なんだ?」


移動司令所から走ってくる伝令兵。


「第213中隊が、グローら敵の司令部の場所を発見。多少の抵抗あれど、正面突破は可能です」


「なるほど。213中隊と、予備の1個中隊だけでも制圧可能な程の戦力なのか?」


「は、はい。そう聞いてます」


第213中隊の隊長は、ヤーニッヒ少尉。

彼は敵戦力を見誤ることはしない。なら


「よし、私も行こう。市長には会ってみたいしな」


「は、はい」


◇◇◇◇

放送局


レイニーは現状を伝える


「市内は既に4割が皇国の支配下です。ほとんどの市民は投降。1部抵抗している人達もいますが、今日中には完全に制圧されるかと。又、ここも既に1階、2階は敵に制圧され、時期にここにも来ます。」


3階の放送室。


「ワシらを守るといい、志願してここの防衛についてくれたもの達に深い感謝を。」


1部の市民は、既に逃げた。逃げれなかったもの達は投降している。どのような扱いになるのかは不明だが、祈る他ない。


「銃声が近付いてるな。階段辺りか。もう終わりだな」


ディーゼラは、笑顔だった。


「グロー市長」


「なんだ?」


「この俺に、指揮権を全て託して下さってありがとうございます。」


ディーゼラは、頭を下げた。


「最後に、全力で防衛が出来て、俺は...嬉しかった。俺は、帝国臣民を守るために軍人になった。帝国は無くなっても、臣民はいる。その臣民を守る機会をいただけて感謝しています」


「おもてをあげよ」


音が消え、そよ風が聞こえる。


これまでの頼りないグロー市長が、今は何故か、皇帝のような、表情をしている。



「ワシは、この街を守りたかった。しかし、ワシは何も出来ない。何も命令をくだせない無能だ。だからこそ、人にしか頼れない。ワシは、君を誇りに思う。」


ディーゼラは、涙を零した。


「レイニー、君もじゃ。ワシを良くも駒扱いしたな。よくやったわ」


「馬鹿と鋏は使いようって事です。」


「馬鹿はワシって事かいな」


「さぁ?」


レイニーは、扉に向かう。


「どこにいく?」


レイニーは、後ろを振り向かずに告げる


「ちょっとお花をつみに」



トイレは二階にある。つまり、そういう事か


「そうか。ちょうどいい時間だ。ほら、ワシの時計では19時だ。もう帰っていいぞ。市長権限で何でも1つ買って帰っていいぞ」


外は明るい。


「グロー市長、今、まだ12時ですよ。」


そういい、レイニーは扉を開け出ていく。


「そうかそうか。元気でな。」「今までありがとう。レイニー」



直後、近くで銃声が鳴り、そして止んだ...


「では、ワシは最後の務めでも果たそう。」


「お供します」


◇◇◇◇

バンと扉を開け、部下を引き連れて入るケーニッヒ。敵司令部である放送局3階 放送室。

中に2人の男性がいる。


真ん中の椅子に座っているのがグロー市長だろう。左にたっている軍服の男がディーゼラか。


「初めまして。アルヌ市 市長 グロー殿。私は、皇国軍第二軍軍団長 ケーニッヒと申します。」


「丁寧な挨拶ご苦労。ワシはグロー市長だ。彼は、軍の司令官ディーゼラだ」


「ふむ。実は此度の戦いに私、感動しまして。技術差、戦力の圧倒的な差を感じさせないこの戦い方。さぞ優秀な指揮官がいるのであろうと思い! 又、市内のこの発展。私は猛烈に感動している。私は、あなたがたを高く買っています。どうです?私の指揮下に入るなら命の保証とこの街の安全を約束しましょう。他の軍団長が今、ものすごくイラついてるもので、何をするのか想像もしたくなく...私らが今、頑張って抑えてるので」


なるほど。街を人質とした脅迫。


「そうか。断る。」


グロー市長は、机の上に置いてあったリモコンを手に取る。


「この局に大量の爆弾を仕掛けた。」


ケーニッヒは慌てて懐から銃を取り出す。部下も銃を構える。


「今すぐリモコンを離せ。でなければ街が大変なことになるぞ」


「断る。その命令は断固拒否する」


ケーニッヒと部下は発砲。ディーゼラも発砲し、グロー市長は胸に2発被弾。ディーゼラは頭を撃たれ即死。部下も二名死亡した。


「や、やめろ! 」


「断る!」


グロー市長は、残りの力でリモコンのスイッチを押した。グロー市長は、笑っていた。

(レイニー、みてるか?花火が見たいと言っていたな。花火は結局出来なかったが、この景色だけは見て欲しいな)


直後、放送局は木っ端微塵に、跡形もなく吹き飛んだ。


◇◇◇◇

「第2軍軍団長ケーニッヒが亡くなっただと!」


ザナック殿下は、その訃報を聞き驚く。

勝ち戦で軍団長が亡くなる。ザナックの今後の政治生命に致命的な傷が残る。

あの変人は、優秀な人間を見つけるのが得意であり、それで固められた第2軍は、皇国の中でも1番融通の利きやすい、様々なことに使える軍団でもあった。ケーニッヒがいなければ第2軍は、これまでのような柔軟な動きは難しい。


「元はと言えば、アルヌが降伏していれば良かったんだ...こんな下等な奴らに...おい、どうする?」


そばにいた第1軍団長 シャルルが答える。


「罪を償わせましょう。我ら皇国に従わなかった罪を。早く降伏していれば、ここまではならなかった。」


「そうだな。全軍に告げよ。市民に鉄槌を下せ」



ザナックのストレスは既に頂点に達し、恐るべき命令を下す。


「は!国際戦争法第210条、捕虜への虐殺は禁ずる。但し、抵抗を試みたものにはこれは当てはまらない。つまり、そういうことですな?」


「ああ。」


法には抜け穴がある。

それを使った


「奴らに皇国へ刃向かった事を思い知らせてやれ」

◇◇◇◇

アルヌへ到着した日本軍救助部隊は、この世界の国際法に乗っ取り、非戦闘員の救助活動をしているとアピールすべく、専用の旗を掲げる。

白と赤のシマシマ模様の旗。


「これは、酷い...着陸できそうな場所がほとんどないぞ」


パイロットの狗神 明はこの光景を見て悲しくなる。


瓦礫の山と化したアルヌ。あちこちから煙も出ている。街の南側はまだ、建物が残っているが北側は完全に更地だ。

皇国軍もこちらに気付いてるが、何か仕掛けてくる様子は無い。旗と、オープン回線で呼び掛けてるからだ。皇国軍は、第二次世界大戦程の技術レベルを有していると聞く。なら、無線も使っているだろうと推測したのだ。

この世界の魔法はよく分からない。翻訳魔法というのは確かに便利で、言語の壁を超えるが、本や電波に乗った音声は翻訳されない。

だから、予め決められた内容をハーデンフェル語に翻訳して繰り返し流している。不便なところもあるか。


「南側に着陸できそうな場所を見つけた。こちらは引き続き、状況を見張るため、Bー01からBー08は任務を果たされよ」


「了解」


救助用の大型ヘリが、公園だろうか。広場に向かった。

今回の任務は日本人救出が主だが、この広さの街からどうやって日本人を救い出せというのか疑問だ。形だけでもしたという事実が欲しいんだろう。記者も載せているのはそれだろう。


「政治のゴタゴタに振りまされるこちらの身にもなれよ...」


パァン!

しばらく止んでた発砲音が再び鳴り出す。


「何事だ!各員、状況を知らせ」


「Bー01からBー00へ。市内各地にて、皇国軍が非戦闘員へ向けて発砲!」「Bー02からBー00へ。投降した捕虜に対し皇国軍が発砲」「Bー03からBー00へ。野戦病院と思われる場所へ皇国軍が砲撃!」「Bー04、こちら襲撃を受けている。即時撤収する」

護衛機から次々と報告を受ける。

街から悲鳴のようなものが聞こえる。街を見ると、逃げる市民、打たれる市民。そして、発砲する皇国軍と、地獄が広がっていた。


「おいおいおいおい、任務は中止、各員、任務は中止。至急戦域から離脱せよ。繰り返す!...」


目の前で繰り広げれれる虐殺。

それを目撃した我々。皇国は何を考えている?

さらにこちらは記者を載せている。


間違いなく、最悪なことが起きることだけは確信できる。


さらに、NHKの生放送でこの光景が放送された....

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