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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
23/91

20話 それぞれの思惑3

ルーデル共和国連邦

連邦議会があり、それぞれ加盟している国の代表が投票権をもち、それにより選ばれた代表が総統となる。

バハルス帝国により滅ぼされた共和国や王国が、帝国の崩壊により解放され、対バハルスの名のもとに集まった連邦だ。小さな国では大きな国に太刀打ちできない。それは、バハルス帝国の諸王国侵攻の際に実感したことである。だからこそ、バハルスや王国に対抗すべく、諸王国が結束し出来た連邦。

しかし、独立できたが資源も限られ、産業は壊滅。資源を比較的もってる国の発言力は結果的に大きくなり、連邦内の派閥、対立を生む。

さらに日本の支援も遠く届かず、王国からの一定の援助があるだけ。その援助も借款。返さねばならない。


王国はルーデル共和国連邦をバハルスの防波堤として見ており、将来的にバハルスが再び力を持つことを恐れている。

それは、バハルスには天然資源が豊富だからだ。西と南にある大きな山脈。そこからミネラル豊富な川が何本も流れており、土壌も豊かであり、農業大国。さらに、いくつも鉱山をかかえる天然資源大国。それはこの世界の中でも上位に食い込む。国土に対する割合で見ればトップクラスだ。


今は弱体化しても、数百年後には力を取り戻す事はよくある話だ。


連邦の総統であるチャオは、頭を抱えていた。


ルーデル共和国連邦には2つの派閥がある。

連邦内の各国を統合し、1つの国にする統合派。

筆頭は現総統でもあるチャオ ルーデル共和国連邦の暫定首都であり、連邦立ち上げ最初の国であるルーデル共和国州 出身だ。


それに対して、地方分権。各連邦内国州の権力拡大を目的とした分権派。

その代表は、連邦で数少ない資源が取れる ザーラリ王国州。


そんな状況下で皇国からひとつの連絡が来る。


「皇国のバハルス共和国侵攻における協力要請」


バハルス共和国に皇国は帝政復古の名のもとに侵攻をする。

その際、ルーデル共和国連邦に王国、日本との外交、物流等のありとあらゆる連絡網の遮断。

さらに、バハルス共和国に対して限定的な攻撃要請。

その見返りとして、バハルスの2つのエリアをルーデルに譲渡。バハルス帝国内の1部鉱山資源の採掘許可。


さらに、皇国はルーデルへの侵攻は考えておらず、王国との緩衝地帯とし、バハルス内の資源確保が目的という理由まで伝えてきている。普通ならここまで教えることは無い。しかし、それを明記している事は、「受諾しないからお前の国まで攻めるからな?」という意味も含まれる。皇国の軍事力なら王国まで攻められる。しかし、多数の魔導士を持つ王国に皇国は確実に甚大な被害を受ける。だからルーデルには壁としての役割を求めているのだ。


皇国と仲のいい壁として。


「メリットしかない上に、上手く行けば我々統合派が有利に動く。受けるしかないな」


着実にその時は近付く。

◇◇◇◇

日本 内閣府

北条首相は、膨れ上がる軍事費に対処するべく解決策を考えていた。


その中で、合理的に不要であろうという設置予定の設備をいくつか白紙にした。その中には小笠原諸島における新型レーダー基地設置が含まれていた。


王国の魔導士は、レーダーに引っかからない。

身につけている装備にもよるが、通常なら引っかからないのだ。それに対策するために王国の探知魔法を組み込んだ新型のレーダー。これにはドニラス帝国の技術援助もあり何とか完成に漕ぎ着けたが費用が高過ぎたのだ。さらに製造における時間も尋常ではない程かかり、量産も現時点ではできない。量産型にはまだ時間がかかる。


限られた数に加え、特にドニラスがこのレーダーを欲しがっていた事。技術援助の条件もあり優先的にドニラスに割り振られ、これが設置できたのは横田基地と、南方に近い満州 フルンボイル海軍基地に設置された。

南方は特に魔海獣、魔法をぶっぱなしてくる新種の海洋生物による被害が多数確認され、その対処が急務であったのだ。


そもそもこの世界の国々は南方がどうなっているのか分かっていない。それは、この魔海獣が大暴れしているのが大きかった。しかし、こいつらは満州より南が主な活動海域であり、それより北の日本海や、旧太平洋地域まではこない。そこが救いである。


その魔海獣の危険もなく、偵察機や人工衛星の活用で小笠原諸島方面は問題なくカバーできると政府は判断し、小笠原諸島におけるレーダー基地設置計画は白紙になった。


「魔法とは不思議なものだな」


「そうだな。フィクション作品にほぼ必ず出てくる魔法が今やノンフィクションときた。魔法の恩恵もあるが問題も起きてる。」


と北条の呟きを聞き話を出す黒岩大臣。


「あぁ、あのマジカナル教とかいう新興宗教か」


マジカナル教

母はイエス キリストの生まれ変わりで父はアラーの生まれ変わり。息子である自分はブッタの生まれ変わりとかというよくある新興宗教の設定だが、他と違うのはこれに魔法要素が加わる。

魔法を神聖視し、魔法を一般人でも使えるようにした魔石を人に埋め込む手術「魔入」の国内導入と全国民への強制を主張し、さらに信者を魔入手術が出来るリグルード王国へ送ろうとした事があった。

リグルード王国にとって魔法が使える事はは当たり前であり、稀に魔法が使えなかったり病気や障害により使えなくなる事があり、魔法が使える事が当たり前となっている社会構造な為にその救済措置として魔入手術が開発されたのだ。しかし、それなりのリスクはある。そのため王国内では手術を受ける場合必ず王国民であると証明する証明書の提出が求められる。又、魔石も魔獣から取れる物を安全に加工したものでなければならず、その工程は王国の国家機密として秘匿されている。

手術をした病院には補助金と魔石が送られる。


なのだが、悪い奴らというのは異世界でもいる。


王国を訪れる外国人をターゲットに証明書を偽造して、粗悪品の魔石を埋め込み、国から補助金を着服し、質のいい魔石を売る医者がいたのだ。


証明書の偽造が発覚したのが先月。役人の不正賭博が発覚し、解雇になった事がきっかけであった。後任の役人が偽造された証明書を見破ったことが事の発端。さらに事情聴取を取るために医者を呼び出した時に賄賂をもちかけられ、さらに以前の役人が賄賂を受け取り対価として黙っていたことが判明。

その医者をその場で逮捕。さらに病院への調査により、5年前から起きてた事が分かり、2万人に及ぶ不正手術をしていた事が分かった。


問題はその中に日本人や中国人が多数含まれていた事。

人数は895人。内日本人が596人。

さらにわかる範囲内で調べた、警察の発表では逮捕者86人中79人がマジカナル教の信者や、2世だったのだ。

7人は好奇心や憧れから。他510名は調査中。さらに、逮捕者の中で手術による副作用による体調不良が多数出ていたのだ。


いや、体調不良で調べた結果、本来人体に無いはずの魔石が見つかり、操作の結果逮捕に繋がったパターンがほとんどであったのだ。


その体調不良も、常時顔色の悪さ、色素の変異、咳が止まらない等様々であり、ありとあらゆる機器では正常としか出てこないのだ。これが魔入の副作用であり、それに対策した国の魔石では無いものだと余計酷くなるという。


「北条さんよ、そろそろマジカナル教の解散命令を出した方が良いんじゃぁないか?」


「解散命令ね。宗教の自由を掲げる憲法の理念に反するから出すのが難しいんですよ。下手に出せば野党からバッシングされるし。」


「国民を守らなければならない国が、その理念に反するからといって見捨てる方がよっぽど憲法の理念に反するんじゃぁありませんか?」


憲法に国家は国民を守る義務があると明記されている。宗教の解散命令も法律上その理念で成立した。しかし、これが施行された事は1度もない。


「せめてもう少し決定的な証拠を集めてからでなければ。先日、裁判所からマジカナル教の支部である高槻教会に強制捜査の許可が降りました。その結果次第です。せめて証拠がないと、大々的に打ち出すのは厳しい」


事が起きてからでは遅い。しかし、事が起きる前に行動するのも難しい。


「わかったよ。」


黒岩大臣は大人しく引き下がった。


「それよりも明日は大阪にいかなくてはならないんだよ。早く準備をしなくては」


北条らは、関西空港の大規模改修の完成を祝したイベントに参加しなくてはならず、その準備を始めた。


しかし、この後最悪の事態が起こり、北条は後年、自分の手記にこう書き記す事となる。


「憲法に縛られ、国民の反発に怯え、対応が遅れてしまった。これまで後手の対応が多かったが、先手が取れた対応もある。それがこれだ。この対応の失敗は間違いなく自分の政治家として最悪の事であり、今後大いにその点を批判されるだろう。もし戻れるなら、国民の反発、支持率など無視して最優先で解散命令と、違憲覚悟の国主導の強制捜査を行うべきであった」と。

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