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例え世界が変わっても  作者: パピヨン
第二章 皇国編
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19話 それぞれの思惑2

バハルス共和国


この国は今、政情不安による国内秩序が乱れていた。その原因は、先の戦争の敗北と、日本の統治の失敗。さらに追い打ちをかけるような全国的な不作と過激思想の蔓延。


インフレは最悪を日々更新し今やお札は子供の玩具になっていた。物は物々交換が基本であり、タバコがお金とも言えるようなものでもあった。


その原因は、日本の統治の失敗。それは日本が、大東亜共栄圏のような枠組みで統治をしようとしたのが最大の原因であった。日露戦争により日本こそがアジアの希望と考えていた東南アジア等。日本との文化や宗教観が比較的近い東アジアと違い、日本を全く知らず、さらに文化も常識も何もかもが完全違う異世界にて、皇民化擬きをすればどうなるか?

結果は単純。異文化の拒絶と日本への反発と、現政府への不信感。暴動。さらに戦争による人手不足による不作が続けば治安悪化は止められなくなる。さらに権力者の汚職も蔓延。


バハルスは腐ったミカン


と揶揄された。国内の右翼と左翼の激突は日常茶飯事。共和国連邦へ人々が逃げるという状態に。軍事へはお金をかけられず、弱っている上に更なる軍の弱体化。もはや何もかもが悲惨としかいえなかった。さらにルーデル共和国連邦による日本の支援妨害まで始めたのだ。それも、襲撃なのではなくバハルスの汚職議員を使っての妨害だ。

日本の支援物資を議員がルーデルに横流しする。

この国は既に終わっている。


この現状に頭を抱えるのは、この国の大統領であるカーゼル大統領


「どうしてこうなった?」


「諸悪の根源は戦争ですね」


と冷静に答える秘書のエリーゼ


「知ってるよ。さらに言えば、政権運営できる人達は軒並み全員戦犯で処刑か流刑か禁固刑。知識どころか文字すら読めない奴らが知事やってたりしてるんだぞ。この国終わりだろ」


そう。日本が帝政を終わらせた際、民間人への非人道的な事をしていた人たちを片っ端から軍事裁判にて処刑、流刑、禁固刑等していたのだ。その結果、帝国政府内ほぼ全員が対象となったのだ。将軍もほぼ全員が対象。その結果起きたのが権力の空白。


ここに日本から派遣された人達が臨時顧問として代わりに政権運営したが、失敗。日本は撤収し結果、学がない人達が政権運営するという異常事態に。


「なぁエリーゼ、その輝かしい海の髪の力で解決してくれ」


海の髪とは、青色の髪のことである。コバルト族の特徴でもあり、別名海の民とも呼ばれてる。


「海底資源の採掘許可が欲しいなら族長に。」


「だよなぁ。許可あっても掘る技術なんて無いけども」


今のバハルスにそんな技術も余裕もない。日本と共同なら出来るかもしれないが、それだと何割かが取られてしまう。


「後、大統領、ご報告が」


「何かね?些細な問題なら別部署に回してくれよ。もう大統領の仕事は手一杯なんだ。後2年あったら頭が禿げちまうよ」


「皇国軍が国境付近に集結しつつあるという情報があります」


カーゼル大統領は椅子から転げ落ちた。それはショックによるものだ


「は、は、は、もうダメだこの国。皇国が攻めてきたらこの国は確実に滅びる。この国に防衛できる力は無いんだぞ...外交でどうにかしなければ」


バハルス共和国は、危機に瀕していた。

◇◇◇◇


バハルス共和国北東部

アルヌ市 バハルスを流れる巨大な川の2つが流れ、合流するこの地は物流、水運の要にして、皇国との貿易やバハルス共和国の首都へ繋がる主要街道の1つでもある。交通の要衝。

その川の合流地点にあるこの街は、常に水害の危険を孕んでおり、その結果南北東側には防波堤がかなりの高さで出来ている。西は湿地帯が広がる。川の幅は100mほど。川には巨大な橋がかかっており、歴史の長さを誇る木造の橋だ。

又、共和国内の少数民族が多数いる地域でもあり、さらにその部族との平和の象徴としての街でもあり、日本の戦後統治の重要都市の1つだったこともあり多数の日本人が暮らしている。


この街を治めるグロー市長は愚痴を吐く。


「無能なこのワシが何故市長をやっているんだ?」


それに答える秘書のレイニー。


「それはあなたが元グロリア男爵家だからですよ。」


「偉いのは父であり、優秀なのは兄なんだがね。さらに先の戦争で爵位を失っておる。無能なワシである理由は無いのだよ」


グロリア男爵家は、バハルス帝国代々続く男爵家だ。と言っても特段優秀でもなく、可もなく不可もなく。平凡な統治が続いていた。しかし、その一族の中でグローの兄であるバナーは一族の中でも優秀であった。街の繁栄が約束されるくらいには。しかし、先の戦争で初陣を飾ったバナーは散った。さらに帝政の崩壊により貴族社会は崩壊。グロリア男爵はただの平民となった。

それが、何故市長になれたのか?


理由は単純。



「あなた以外にこの街を統治できる人が、最低限文字を読め、それなりの地位があり、それなりにコネがある人があなた以外存在しないのです。あなたが無能であってもグロリア男爵家という名前だけは色々使えますし便利ですので。」


そうこれだ。市民の識字率は10%ほど。これでもほかよりマシなくらいだ。


「でもわし、何も出来ないぞ。判子しか押せないし、政策なんか思い浮かばない。」


「知ってます。あなたは黙って判子を押せばいいのです。」


「それでいいのか?」


「なら何か政策考えます?」


グロー市長は考えてみるが何も思い浮かばない


「ダメだな。無能のワシじゃなにも出てこぬ。今の問題の解決策すら浮かばなぬ」


「そうです。なので黙って判子押しておいてください」


「そうするよ。」


「そうそう、市長。新たな問題が起きました」


レイニーから告げられるその問題の内容は大抵酷い話が多い。というか、小さいものならワシに報告しなくても勝手に解決している。本当は良くないのだが。

この場合にくる問題というのは直ぐには解決できない問題だ。浄水機能が壊れたとか、排水設備の故障か。


「なんだ?優秀な人材がこの街から逃げたとかか??」


「それもありますけど、皇国が軍事侵攻してきます」


「え?」


ーーーー

レイニーからその報告を受ける。皇国軍が国境付近に展開している事。もし戦争になれば首都までの主要街道があるこの街は必ず攻撃を受ける事。

又、今のこの国に皇国を止めることも出来ないこと。


「逃げますか?」


今なら確かに逃げられるかもしれない。批判されるのは確実だがその市民は間違いなく攻めてきた皇国により死ぬだろう。

政府は逃げたワシを追いかけるような余裕は無い。だが


「ワシは無能だが恥知らずではない。帝国貴族として、グロリア男爵家を貶めるような事はしない。帝国貴族の末裔として、先祖代々守り抜いたこの街と共に死ぬ事こそワシの使命だ...と思う。」


ここには、母も父も、叔父も祖父も、一族みんなの墓がある。

帝国貴族として、己の土地の為に生き、戦い、死ぬ。それこそが貴族としての生き様であり誇り高く生きた証だ。帝政の崩壊により爵位がなくなり貴族でもないが、その有り様まで無くなった訳では無い。


「これでもワシはまだ帝国貴族として生きようと思う。最後まで残ってしまった帝国貴族として恥ずかしくない死に方を選ばせてくれ」


「ものすごく輝いてますよ。その目が本来の業務に向いてくれると嬉しいんですけど」


レイニーが少し嬉しそうな顔をする


「分かりました。籠城を前提に防衛の用意をしておきます。ただ、どう頑張ってももって3日でしょう。その覚悟でいてくださいね」


「3日もあれば十分だ。先祖たちに胸を張って言えるさ。」


この街を防衛できるような戦力はとてもない。

天然の要害があるため、防衛しやすい地形だがそれを守る兵は圧倒的に足りない。街の治安維持にいる兵しかこの街の戦力はない。


「レイニーも逃げていいのだぞ。責めるつもりは無いし、逃げるのなら財宝を渡そう。残す意味もないからな」


「逃げませんよ。私もここで生まれ、育った身です。ならここで死ぬのも本望です。それに、私がいないと書類の整理すら出来ないんですよ?」


ほぼ全ての仕事をレイニーやほかの部下に任せており、本人は座ってハンコを押すだけの日々。

レイニーの仕事を他の人ができるかと言われれば出来ない。


「確かにそうだったな...長年共にした美女と共に死ねるならそれもいいかもな...」


かくして、この街の防衛陣地作成が始まった。

資材も人手も全てが足りないという状況下で

日本の統治失敗は、アメリカのアフガンや、中東、ベトナム等の統治政策を参考にしてます。日本という成功例があったからこそ、ベトナム等で失敗したアメリカ。この世界だとそれが日本に置き換わるそんな状態です

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