13話 ゴブリンロード 後編
日本 内閣府
北条首相は参謀長、伊達から渡された報告書に驚いていた。
その内容は、
近いうちに皇国が攻めてくる。交戦事由は、バハルス帝国の再興。これは外務省の報告書からまとめたものであり、厄介なのが、神聖レミリア帝国はハーデンフェル皇国に対し資金、武器を援助する。その理由は皇国がドニラス帝国と仲が悪く、その対立関係を利用しドニラス帝国を潰すためだと言う。既に導火線に火は付いた。あとは爆発するだけという。皇国は着々と海軍を集め、バハルス共和国国境に軍を集めている。これに対し参謀本部は、人工衛星からの情報を元に作った作戦 ハロ号作戦を実行する。
と。
皇国が攻めてくる。それはある程度予期していた。理由は皇国がスパイを送りまくっていたからだ。戦争だけは避けなければ。皇国と友好関係を結ぶ為に幾度も使節を送っていた。だが全て拒否された。厄介なのが神聖レミリア帝国がかんでいる事だ。
北条は確認のために伊達に聞く。
「これは、確定か?」
伊達は、重い口を広げて言う。
「はい。情報機関Y機関と、嵐機関からの情報なので確実です」
日本の情報機関は2つある。表の嵐機関 荒っぽい手段で情報を取得する。「敵は殺せ。捕まったら死ね。日本人として誇り高く生きて死ね」これが訓示であり、陸軍管轄の組織である。リーダーは、大河原定親中将。
それに対し、メンバーは不明、情報取得はありとあらゆる手段を用い、あの戦争でも暗躍したY機関。「殺すな、捕まるな。捕まっても死ぬな。いかなる手段を使ってでも逃げろ。スパイとして泥にまみれながら生きろ。」
これが訓示であり、嵐機関とは真逆であった。
陸軍結城中佐個人が設立した組織であり、将校をあらゆる手を使って脅し、得た資金を作って作った陸軍中野学校がある。スパイ養成学校だ。
この2つが揃っていうのだ。確定だ。
「もう、戦争は避けられないのかもしれないな。参謀本部のハロ号作戦の準備に取り掛かれ。必要な部隊、航空機、軍艦はバハルスに移動させておけ。戦争起きたらまたマスコミから詰められる。なんて、言い訳したらいいんだか」
「売られた喧嘩に買った迄と言えばいいんじゃないです?」
「それで国民は納得しないんだよ。勝てば支持率上がるけども期間中はね。頭が痛い話だ...」
◇◇◇◇
ゴブリンロード討伐に来ていた厚木たちとヨモらは、既に60体近くのゴブリンを倒していた。その中にはホブもいた。
奥に進んでいくと、酷い光景を目にした。
それは、全裸の人間の娘を鎖で縛っていたのだ。
身体中にあちこち傷がある。娘は目が死んでる。
それに傷口が化膿してきている。間違いなくかなり危機的状況だ。周りを照らせば、似たような娘が他にもいる。しかし、その中に男や老婆はいない。
「これは、産み小屋だ。ゴブリン共は自分たちでは繁殖できないから人間、亜人の娘をさらって繁殖させている。娘の数が巣の大きさとも言われている。ここにいる娘は40人以上。今まで見てきた中で一番だ。恐らく、滅びた集落以外からもさらって来たな。」
とヨモの冷静な解説。その目は、ワクワクしたような目をしている。やはり異常。
しかし、任務が優先だ。直ぐに娘達の鎖を潰し解放した。
その時、寒気が走った。その原因は一体のゴブリンが来たからだ。
体調3m、でかい。金色のローブを纏い、金の冠を被り、大きな剣を握るそいつこそがゴブリンロード。
そいつは魔法の防具を着ており、いかにも強そうだ。
「おい、例の作戦でいくぞ!目と耳を塞げ!」
厚木はそういうと直ぐに閃光手榴弾を投げた。
投げた数秒後、洞窟内を激しい閃光が包み込む。目をやられたゴブリンロードはうめきながらフラフラしていた。
そこをヨモが斬りかかった。しかし、剣はやつの防具に防がれる。
「なっ、人の三枚おろしを軽々できる剣だぞ!」
ヨモは気付く。ゴブリンロードの防具に宿っている魔法を。それは、ゴブリンを光でおおっていた。
「防御魔法!しかもかなりの強度!強い衝撃を与えるしかない!」
厚木は閃く。
「強い衝撃か。ここにいいのがあるぞ。」
厚木は銃をロードに向け、装弾数24発全部やつの頭にぶち込んだ。
どんな強敵でも視覚や聴覚を奪えば余裕で倒せるという所はどんな世界でも同じらしい。