12話 ゴブリンロード前編
リグルード王国領ロマン山脈最高峰のココロ岳の麓に来た日本陸軍第6小隊と王国軍第零特殊部隊。ここに来た目的は害獣、モンスター退治だ。なんでもゴブリンロードとかいうゴブリンの王が発生し近隣の村を3個滅ぼしたという。死者数は既に10人、行方不明者は90人を超えた。
行方不明者が多いのは、死亡を確認出来なかったのだ。何しろ避難できたのは20人ほど。
ゴブリンの数はおよそ600以上、ホブ10以上チャンピオンも5体は確認されている。この辺は非常に食べ物が豊富だ。だから数が多いのだという。
今回王国から渡された資料にはもうひとつある。それは王国軍第零特殊部隊だ。この部隊は王国内でもトップクラスの犯罪者、とくに動機が、ただ人を殺したかっただけという頭がイカれた集団で出来ている。そのリーダー、ヨモ リードリヒは過去に265人殺害、さらに傭兵18人、王国軍19名を殺害した凶悪犯だ。
なお殺害動機は、殺すのが楽しい、快感という快楽殺人者だ。
こんな部隊が存在する理由、それはひとえに戦闘力が桁違いに高いからである。個人の戦力が高いため対帝国の対策のために編成された部隊、超法規的措置の部隊。それが王国軍第零特殊部隊。
「編成に関してはとくに言う事は無いんですけど、なんで武器が全て旧式なんですか?とくにこのヘタリア製の銃とか、この歩兵戦闘車もヘタリア製だし、なぜです?」
隊長、厚木 洋二は、
「使い捨てということだろ。敵はゴブリンロード、その総数はおよそ1000はある。敵の数が多すぎる。武器を棄てて逃げるという事も想定してるんだろ。」
イタリア製 I56 イタリア陸軍大改造計画で造られたモデル。安価で大量生産でき、砂漠で撃てる様になっているものの、掃除のしやすさを追い求めた結果
弾の威力が下がり さらに壊れやくすくなった欠陥兵器だが、使い捨てが出来る点では有能だった。
イタリア製 チェンタウロ 歩兵戦闘車。そこそこ優秀。中東での紛争で大量に鹵獲した物。
「おっと、ゴブリンがいまっせ。しゃがんでな。距離50 数はおよそ4。」
目で見た訳でも無いのにゴブリンを察知したヨモ。本当に4体なのか確かめるべく、双眼鏡で覗くとそこには、革鎧を着、弓1 盾1 剣2の編成だ。だが装備はボロボロ。この点からヨモは、
「恐らくこれは狩猟だな。今のうちに始末するのもありだが、巣の場所を教えてもらう方がいいな。」
という事でその辺にいたうさぎを捕まえ、発信機をつけ、ゴブリンの目の前に放り投げた。
ゴブリンの知能は低いためなんも疑うことも無くうさぎを捕まえ持って帰った。
それから30分後、巣穴が判明。ゴブリンの警備の装備は鉄フル装備。
特殊部隊のパンは言った。
「おいおい、警備が鉄フル装備って、どんだけ規模がでかいんだよ。こりゃぁ魔剣とか魔具あってもおかしくねぇぞ。」
魔剣や魔具は、魔法が使えないものでも簡単に込められた魔法を使うことが出来るという。だが1度使用すると魔剣や魔具の魔力が回復するまで使えないという。魔剣や魔具は性能が良いため価値が非常に高い。またモンスターの傍に剣を置くと稀に魔剣となるそうだが条件は不明。
「では、突入するぞ。」
後ろは王国特殊部隊、先頭は日本軍という形だった。
やはり洞窟内はかなり暗く、そして酷い匂いがした。それはまるで死体の匂いだ。
「こりゃぁここで結構な数の人が殺されたな。数は、30人ってとこか。」
「おい、来たぞ敵さん。前から20ってとこか。」
流石はプロ集団の特殊部隊、懐中電灯で照らすよりも早く敵を見つけた。さらに、
「なぁ厚木さんよぉ。上からも敵が来るぞこれ。」
「は?ヨモ、何言ってるんだ?上は天井だぞ?」
「俺の上を見ろ。人1人分の穴がある。ゴブリン共は洞窟のあちこちに横穴を作る。その横穴から奇襲してくるんだ。奴らは一体一体は馬鹿だが集まれば立派な罠を作れる。ここから来る敵は任せろ。お前らは正面の敵を殺れ」
「分かった。おい、聞いたか?今からゴブリン共を殲滅するぞ。日本初の化け物退治だ。同士討ちだけはしないよう注意しろ」
正面から鉄装備、槍や弓、剣、棍棒を持った20匹程度のゴブリンが襲いかかって来た。ゴブリンは真っ直ぐ突っ込んでくる。
発砲、数秒でゴブリンは全員死亡。戦いにもならなかった。
しかし、何時ゴブリンが襲ってくるか、閉鎖された暗闇の中を歩くのはかなり精神的負担が大きい。
特殊部隊はみんな慣れているのか平気であったが、日本軍は初めてということもあり明らかに精神をすり減らし始めていた...