8話 帝国の終焉
バハルス帝国参謀本部は揉めていた。連日の敗北。そして、
「なんという事だ!主力軍の壊滅にポツダムの陥落、更には海軍の壊滅。敵の進軍速度が速すぎて軍の展開が間に合わない。」
「こんなのは戦争じゃない。蹂躙だ。もはや帝国に勝利は無い。」
「帝国が負けるというのか貴様!」
「あぁそうだ!主力軍は壊滅し更に敵は帝都近郊の都市ポツダムを落としているのだぞ!予備兵力を帝都に集めさせてはいるが間に合わん。海軍も壊滅した今、後方への強襲上陸もできん。戦争を続ける事は不可能だ。もはや講和するしかない」
と、戦争前の空気とは逆になっていた。
「これ以上の犠牲は、無駄だな。日本と和平交渉をしよう。」
2日後、帝国は王国と日本へ休戦協定を提案し
4日後、日本と王国が同意したことにより休戦協定が成立、その3日後には和平交渉のため講和会議が開かれた。
場所は日本占領下のポツダム
王国外交官 ハミルモンは
「王国側からは帝国の属領の解放を要求する。」
日本代表 中嶋 流子
「この度の戦争の帝国の処理ですが、まず我が国日本は6000万ピールの賠償金及び1部の割譲、専制の廃止と民主化を要求します。」
ピールは帝国の通貨であり、1ピールに当たり約10円だ。
この案に対し帝国側は、
「帝政の廃止は無理です。現体制を変えることはできない!」
という。
こういう回答がくるくらいは流子も予想してた。だって、体制変えろって言ってはい分かりましたって言う国はそうそう無いだろう。
だがそれを無理でも押し通せって、無茶苦茶だよ。
そう考える中嶋は、仕方なく、
「なら、まだ戦争を続けますか?次は帝都が落ちますよ?」
それが決め手となり、帝国はこの条件を受諾した。これによりバハルス帝国は共和制になり、属領だった53ヶ国が解放され、この53ヶ国はルーデル共和国連邦として新しい道をあゆみ始めた。
戦後の日本、戦争が始まった事により雇用が増え、失業率は大幅に低下しほぼ完全に転生時の経済ショックから立ち直れた。
さらに季節と暦のズレを無くすためこの世界の暦、統一暦を導入し、未知の成分調査もほぼ終わり、さらに世界地図も完成し、王国からもたらされた魔法学が、急速に発達していった。
帝都大学魔法学部
帝都大学は日本一の名門大学であり、ここには日本の中で数少ない魔法学部があり、国内の中でも唯一の学部だ。これは国の意向によって設立された学部だ。
その学部長である西園寺 貴洋は、いつものように叫んでいた
「空中浮遊魔法ことフライって、出来たらカッコイイよね?」
「確かに飛行機を使わずに飛べたらいいけど、王国ですらフライ出来る者は少ないようですよ」
と返事する者は九条院 彩子 副部長であり、帝都大学一の変人である西園寺の助手だ。この2人は帝都大学でも有名なコンビであり、日本一の魔道士でもあるのだが、
「そもそも使える魔法が念力、水の生成、天気予報に風の操作くらい。念力は消しゴム程度の重さしか動かせないし、半径5m超えたら力は半減する。水は最大10mlしか出来ないし、天気予報なんて魔法使わなくてもいいし、風の操作は扇風機の弱レベルよ。」
「そもそもどうやって念力が発動するのか?エネルギーはどっから来てるんだ?」
「科学で出来ないことが魔法でしょ。」
2人が目指すのはおとぎ話の魔法使いであった。
自由に空を飛び、炎や水、風を操るという事が出来るようにしようしとしていたのだ。これは転移前より考えていた事であり、西園寺に限っては真剣に考えたさらにどうすれば出来るかという論文を作るレベルだった。だがその論文も前提が、魔法を使えるというものだったから認められるワケもなく、変人として知れ渡った。だが成績は良かったので教師の評価は良かった。
ちなみにこの学部には18人ほどいる。だがそのうち10人は魔法が使えない。
そもそもこの世界の魔法は地球でよく知られる魔法とは、少し違った。大地のエネルギーを借り、それを意のままに操り、質量保存の法則やエネルギー保存の法則などをある程度無視できるのが魔道である。その中で物理法則そのものを否定するのが魔法士である。
だが、魔法士は王国には存在しない。人間にはほぼ無理なものだという。かつて王国に1人だけ魔法士になったものがいるくらいだそうだ。
学部の部屋に一人の男、十文字 隼人が紙を持ってきた
「朗報だー。ドニラス帝国から魔道見学の招待が来たぞ!」




