表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/23

4

「グギィ!」


「くっ、このぉっ!」


 カァーンと弾かれる木の棒。木の棒を上へと弾かれたゴブリンは後ろに数歩たたらを踏む。その隙をついて盾で木の棒を弾いた少女、レーカが右斜め下から剣を振り上げる。


 ゴブリンは振り上げられた木の棒を急いで戻して、剣へとぶつかる。しかし、バランスを崩していたゴブリンの攻撃は、見た目より威力はないようで、剣によって切り落とされた。


 守るものが無くなったゴブリンへと、盾を振り上げるレーカ。そして、ゴブリンの右頬へと向かって盾を持つ左腕を振るう。


 ゴォン! と、鈍い音が森の中に響くと同時に、吹き飛ばされるゴブリン。顔を盾で殴られているが、まだ生きており立ち上がろうとするのを見て、レーカは走り出す。足下がおぼつかないゴブリンに向かって剣を突き刺す。


 ゴブリンは避ける事が出来ずに、真っ直ぐと喉元へと突き刺さった。そのままレーカは剣を右へと振る。ゴブリンの首を半ばからザックリと切り裂き、ゴブリンの血が噴水のように吹き出る。


 初めてゴブリンを殺したレーカは、その様子を呆然と眺めていた。自身の身をゴブリンの血で濡らしながら。


 僕は彼女の腕を掴んでゴブリンの死体から離れさせる。ゴブリンの死体から少し離れるけど、彼女は呆然と自分の手を見たままだ。


 まあ、それも仕方ない。初めて人型の生き物を殺したのだ。いくらゴブリンが醜いと言っても、人間のように二足で歩く生き物だ。少しでも人間の姿が被ってしまったのだろう。


 僕も初めて殺した頃は、殺した感触が蘇って何度吐いたことか。それに比べたらレーカも、先にやったレリックも強い。シオンは……まあ、出来なかったとだけ伝えておこう。


「落ち着いたかい、レーカ」


「……ええ、大丈夫よ、おと……レンス先生」


 レーカは少し青かった頰を赤らめてそっぽを向く。少し恥ずかしいところを見せてしまったとでも思っているのだろうか? モーズの話だとこの年頃は余り恥ずかしいところは見られたくないらしいし。


 少し離れたところで見ていたレリックやシオンもホッとしている。1対1でレーカがゴブリンと戦っているところを見ている時なんて、2人ともハラハラとしていたもんな。


 彼らを教えるようになってから2週間が経った。初めの日にあった突然ゴブリンが現れるというハプニングは、その日以降は起きる事も無く、安全なまま彼らに指導する事が出来た。


 あのゴブリンの事はモーズが他の自由兵にお願いをして森の中を調べてもらったけど、詳しい事はわからなかったそうだ。一応気をつけてとは言われたけどね。


 その問題があった日の次の日から3日ほどは、初日のように眠れ草や薬草などの採取ばかりを行い、ある程度見分けが付くようになってから、森での生活の仕方を教えた。


 この森は町から近いため、野宿をする事なく帰る事が出来るけど、これからもし町の外へと旅に出るのであれば、野宿というのは避けては通れない道だ。


 僕も1人になってから何度もやった事がある。ただ、1人ほど辛いものは無い。火以外の光がない中で、1人寂しく過ごさなければいけない。それに、魔獣や野盗は警戒しなければいけないため、まともに休む事も出来ないし。


 初めてやった時は最悪だったなぁ。周りにビクビクしながら休む事も出来ずに、夜が明けるのを待っていたのだから。


 彼らにはそうならないために、力を入れて教えてしまった。野営の仕方から、森での食料の取り方。大切な水分源である川の見つけ方。動物の捌き方も教えた。レリックは興味津々だったけど、女の子2人は嫌そうだったのが印象に残っている。まあ、それも数日経つと変わっていったのだけど。


 野営に慣れると、次は戦闘を教えた。まず手始めに一角ウサギを見つけてきて戦わせた。レリックは捌きの時と同じ……とは言わないけど、他の2人に比べて動きが良かった。


 レーカは初めは動きが鈍かったけど、一角ウサギがレーカの事を自分より弱いと思ったのか、積極的に攻撃をし始めてからは、レーカも一角ウサギは敵だと認識したのだろう、動きが良くなって、最後には首を切っていたな。


 シオンは……まあ、他の2人に比べて臆病過ぎるね。せっかく魔法が使えるのに、今はまだ2人の援護のためにしか使っていない。少しは慣れてほしいものだけど。


「レンス先生、これからどうするんだ?」


 この2週間の事を思い出していると、レリックが尋ねてくる。気付いたら僕の呼び方が先生に変わっていたんだよね。初めはこそばゆいものがあったけど、毎日言われているとなれてしまった。


「そうだねー、今日は少し早いけど町へ帰ろうか。3人とも精神的に疲れているだろうし」


 僕の言葉にホッとする3人。やっぱり精神的に疲れているね。明日は休みにしてしっかりと休んでもらおうかな。


 ◇◇◇


「明日休みになり……なったな、レーカ、シオン」


「もう家は近くよ。ここならいつもと同じような話し方で良いわ、レリック」


 私がそう言うと、ゴホンと咳払いを


「明日は休みになりましたが、どうされますか、レイア様」


 と、話してくるレリック。私の隣で同じように尋ねたいのか、見上げてくるシオン。明日か。どうしようか考えながら屋敷の中へと入ると、そこには会いたくない人が立っていた。それは


「あら、薄汚い下賤の女の子のレイアじゃありませんか。いつ見ても汚い格好ですわね」


 と、私を蔑んだ目で見てくる女性。私の義母に当たる女性のシャルメーラ・シーリス夫人だった。

良かったら評価等よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ