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「おい、お前たち!」
モーズが指差す先の少年少女たちを呼ぶと、3人ともビクッと震える。まあ、この厳つい顔で呼ばれたら驚くわな。
3人は驚きながらもこちらへとやってくる。少年は金髪にツンツンとした髪の毛。見るからに高価な鎧を着て、高価な剣を持っているが、明らかに着せられている感がある。親はどこかの良いところのようだ。
黒髪のおかっぱの少女は紫色のロープのようなものを羽織って、手にはとんがり帽子を持っており、反対側の手には杖が握られていた。見るからに魔法師という出で立ちをしている。
そして、最後の1人が金髪を後ろでポニーテールに括り、背には片手で持てる盾と剣を背負っていた。見るからに3人の中で1番実力を持っている。そして、僕の方をジッと見てくる。顔に何か付いているだろうか?
「おい、レンス」
その3人を見ているとモーズに呼ばれた。モーズの側まで行くと顔を近づけられる。少し引いたけどどうやら内緒の話があるようだ。少し焦ったじゃないか。
「何だよ、モーズ」
「3人の新人教育なんだが、大きい声では言えないが良いところの子供たちだ。本来なら他の色位の奴に頼むところお前に頼むのは……まあ、察してくれ」
この感じ、組合長も絡んでいるな。よう、死なないように助けてやってくれって事だろ? また面倒な依頼を。何を思ってこの子供たちの親が自由兵に来させたのかは知らないが、普通なら護衛などを付けさせるだろうに。
「……断る事は?」
「さっきのを聞いてそれを言うのかよ。申し訳ないが組合長命令だ。うちの組合でトップのお前に任せたいんだよ」
断る事は出来ないと。仕方ない。組合長には世話になったからね。
「わかったよ。受ける」
僕の言葉を聞いて笑みを浮かべるモーズ。長い付き合いの僕は笑っているってわかるけど、他人が見れば獲物を見つけたような悪い顔を浮かべているように見えてしまう。中身は本当に優しい奴なんだけど。
そんな俺の考えを他所にモーズは受付に来た3人に話をし始めた。僕の紹介をしてから、何故か僕の功績を話し始めるモーズ。僕の2つ名の由来になったオーガジェネラルとの殴り合いの話を少し誇張気味で話しているし。
僕の紹介が終わると、次は3人の紹介が始まった。金髪の少年の名前はレリック。剣と魔法を使う魔法剣士なんだとか。おかっぱの少女はシオン。回復魔法と風魔法が得意の後衛だと言う。
そして、最後の1人がレーカ。前に貴族の依頼を受けに行った時にたまたま出会った貴族の令嬢にも負けないほどの美貌を持つ少女で、盾で攻撃を逸らすか弾くかで隙を作って戦うスタイルのようだ。前衛レーカ、中衛レリック、後衛シオンって感じか。
「まあ、モーズから聞いたと思うけど、僕の名前はレンス。君たちが3人でやっていけるようになるまで指導する事になったからよろしくね」
「ああ、よろしく頼む」
「お、お願いします」
「……よろしく」
レリックは貴族の子息らしく堂々と、シオンは少しおどおどした雰囲気で、レーカは少し素っ気ない感じで挨拶を返してくる。
そして、ずっと僕を見てくるレーカ。そういえばレイアも彼女と同い年ぐらいか。金髪碧眼の美少女ってところも似ているし、名前も何処と無く似ているな。女性的特徴も程よく成長してしている。あの子もこのぐらいに成長して……
「何ジッと見ているのよ」
僕がジッと見ていた事に眉をひそめるレーカ。少し見過ぎだようだ。僕は視線を逸らして誤魔化すように咳払いをして3人を見る。
「さて、まずは依頼を探そう。やる依頼を決めない事には仕事は出来ないからね。それぞれ1つ依頼を選んで来て。それを僕が選ぶから」
別に僕が勝手に決めてしまっても良いのだけど、彼らが初めに何を選ぶのか興味がある。3人は少し考えるけど、直ぐに依頼が掲示されている掲示板へと向かう。
5分ほどして3人とも戻ってきたため、持ってきた依頼を確認する。レリックが人食い狼の討伐、シオンが眠れ草の採取、レーカがゴブリンの討伐だった。まあ、まず
「レリックよ人食い狼の討伐は却下な」
「なっ、どうしてだ!?」
「どうしてだ、って言われてもレリックは魔獣を討伐した事、殺した事ある?」
「それは……ない」
「だからだよ。それなのにいきなり人食い狼は無理だ。戦いにすらならない。まずは生き物を殺せるようにならないと。その理由でレーカの依頼も却下。シオンの依頼を受けながら森の中にいる動物を狩って少しでも慣れていこう」
僕の言葉にホッとするシオンに渋々頷くレリックとレーカ。まあ、森での動きを見次第、ゴブリンなら戦っても良いかもしれない。いざとなれば僕が間に入れば良いわけだし。
それから依頼をモーズのところへと持って行き、依頼を受ける。モーズが心配そうに見てくるし、今日は眠れ草が取れる入り口らへんで今日は終わらせるか。
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