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第1話 いきなりクライマックス

初投稿です


表現が拙い箇所もあると思いますがご容赦願えたらと思います

憑き物降ろし


それはこの世界の者が15になった時に行われる儀式


その身に精霊などの憑き物を降ろし、その力を借りて人は生活または戦争に役立てる


大概の者は精霊憑きになるが、ごく稀に神獣憑きになる者もいる


その者は例外なく強い力を持ち、聖女や勇者と呼ばれる高位の存在へと昇華する



しかし約3年前、2つの前代未聞な事象が起こった


天使と悪魔


それぞれの力を宿した2人がこの世へと降り立ったのだ





カルディア帝国は隣国であるリオネス王国に自国を攻められ、どうしようもなく追い詰められていた



一年前、勇者を有するリオネス王国は本来の仇敵である魔族と手を組んだ


勿論それを諸外国が許すわけも無い


カルディア帝国含む12の国が集まる連合国がリオネス王国滅亡のために動き出した


圧倒的な物量


鍛え抜かれた各国の精鋭達


誰もが勝利を確信した


勇者が単独で100万人以上の先行部隊を全滅させるまでは





1人の人間に蹂躙されるカルディア帝都のスラム街、少女が細い路地を逃げ惑っていた




勇者達の力は帝国民の想像を遥かに超えるものだった


剣をひとふりすれば万軍が吹き飛び、手をかざせば光の矢が降り注ぐ


これこそが高等な憑き物を宿した人間の力だと宣言するように


帝国を始めとする諸国にも『神獣憑き』は数人ながらも存在はしていた


しかし相手はあの『天使憑き』の勇者


神獣など彼女の前では有象無象に過ぎない


先行部隊を全滅させた勇者は休むことなくカルディア帝国へと進撃した


待機していた軍団も惨敗し、彼女はついに帝国へと足を踏み入れた



そんな存在が少女の前に立つ


少女は幼いながらもその存在の恐ろしさを本能で察した


「あぁ...たす...け......」


その幼い喉を震わせ声を絞り出す


それを見ていた勇者は無表情のまま口を開いた


「あなたは何もしていない

ただ1つ罪があるとするならこの国に生まれたこと」


ただそれだけを言って光り輝く剣を振り上げる


人類にとって希望となるはずの剣は少女にとっての絶望でしかなかった


病気で亡くした母親のことを思い、少女は目をつぶった



......?



いつまでも訪れない死に疑問を抱く


まぶたを開けば黒い少年が勇者と少女を挟んで立っていた


背丈は平均ほど


黒髪黒目


黒い軍服に一昔前の学生が被るような帽子


そんな少年の手に握られていた黒いナイフで勇者の剣は受け止められていた


「何だお前は」


自らの剣が短いナイフで止められたことに驚きつつも淡々と言葉を紡ぐ


「カルディア帝国軍所属のノア・フィリアス

階級は一応、中佐です」


剣を受け止めたままの少年は笑みを浮かべてそう名乗った


彼の笑顔は少々場違いであったがそれを勇者は気にもとめず剣を振り払った


「おっと」


少年は少し後退して少女の耳元でささやいた


「さ、早く逃げて

ここから南の方に行ったらシェルターがあるから」


少女はその言葉に頷くと少年に頭を下げて走り出した


「さて、仕切り直しますか?

勇者さん」


「そうしよう

貴様には少々興味が湧いた」


無感情な言葉が続く


「なんてことは無い

ただの軍の犬ですよ

お国のために尻尾と武器を振るうための存在」


「その割りには恐ろしい目をしているな

私よりも人を殺している目だ」


勇者はその剣が止められたことよりも少年の黒い目の無機質さに着眼した


先日100万人以上を殺した自分よりも明らかに多くの命を屠ったと思われるその目に


「そんなことよりも...」


少年がニコニコと笑いながらナイフを逆手に構える


「そうだな」


勇者が剣を構え、超速で間合いに入る


縦振り、横薙ぎ


無数の斬撃が彼を襲う


常人ならば視認することすら叶わないその斬撃を少年は時にはナイフでいなしながら避け続ける


一際強い斬撃をナイフで受け止め少年が距離を置いた


そして少年は不可解なことにその短いナイフをその場で横薙ぎに振りかぶる


その行動に危機を察知した勇者は剣を自らの脇腹を守るように素早く動かした


その瞬間、勇者の体はとてつもない衝撃で揺さぶられる


「驚いた

この攻撃が受け止められたのは初めてです」


少年が持っていた短いナイフは振りかぶった直後、不自然なほど長い剣となって勇者を襲ったのだ


「それが貴様の能力か

物体を創造する

神域にさえ達し得る力」


勇者は激しい衝撃に襲われた体の痛みを感じながらそう問う


「ええ だいたいそんな感じです」


「やはり 貴様が...」


それまで無表情だった勇者は剣を構え



笑った



勇者がその場で剣を縦に振る



今度は少年が危機を感知し、横に飛んだ



空間が断絶され先程まで少年の後ろにあった家屋が空が地面が真っ二つになる



遠距離からの完全防御無視攻撃



仮に少年がその斬撃をナイフで受け止めようとした場合、彼の体は

黒い魔力で薄くコーティングし、ドラゴンのブレスさえも無に帰すその体は


勇者に立ちはだかる者としてこの世から分断されていたことだろう



少年はニコニコ笑うのをやめようやく真剣な顔になる


対面する存在の危険度を本当の意味で理解する



悪魔が黙し、天使が笑う




互いの身体能力が跳ね上がる



少年は黒い翼を背中に生やし、身体中の筋肉に自らの魔力を絡める


脳が事象を感知し、筋肉に伝わるまでのラグはこの戦いにおいて余りにも致命的だ


だから精神と直結し、距離の概念が無い魔力で筋肉を強制的に動かす




勇者は白い翼を背中に生やし、光の鎧を纏い風の靴を履く


光の鎧は少年の掠めるような攻撃を無効化する


手数の多さで言えば少年の方が圧倒的だ

いくらかすり傷とは言え、極限の戦いにおいて蓄積するそれは彼女の負けを意味する




互いの精神、身体にかかる負荷は半端じゃない


しかし誰ひとり観客のいないその戦いは何よりも高貴だった


美しかった


この世の「強さ」を濃縮した光景がそこにあった



超速の戦いは熾烈を極め、互いの体がブレる



勇者の斬撃は全て能力によるもの


一撃も当たる訳にはいかない



少年の攻撃は多種多様


瞬時に展開される大量の黒い箱


それら全てから大量の黒い弾丸が発射され勇者を襲う



しかしことこの戦いでの弾丸は攻撃手段として成り立たない


何故なら弾丸よりも彼ら自身の方が速いから


だから少年はそれを誘導のために使用する



弾丸を避けるという動作が介入する以上、動き方に多少のセーブがかかる


彼はそこを狙う



筋肉が千切れる音がする


魔力を急激に使ったことによって激しい頭痛が2人を襲う


視界が霞み、互いの息も切れる



本来彼らの魔法は一撃必殺


今大量に発射している弾丸は一発でドラゴンを殺し、帝都を蹂躙している大量の斬撃はひと振りで魔王をも殺す



明らかに過剰戦力の2人



だからこそ、この戦いだけが彼らの全力を出せる唯一無二のもの



―次で終わりにする



互いの考えが運命的に合致する



距離を取り悪魔と天使が向き合う



無残に切り刻まれ破壊し尽くされ更地となったその都市で聞こえるのは互いの呼吸だけ



天使が先に動く


横薙ぎの斬撃を少年は最低限の跳躍でそれを避ける


その瞬間、天使が宙を舞う悪魔を狙い剣を縦に振る


空中での移動は出来る

ただ地上のそれと比べた場合、圧倒的に速度が劣る


天使はそこを狙った


しかし結果的に



悪魔は両断されなかった



空中に黒い足場を創造し、それを蹴って避けたのだ


寸でのところで間に合ったが左腕が切断されてしまった



しかし悪魔はこれを気にもとめずに天使に肉薄する


天使は死を確信した


しかし眼前にまで迫った悪魔の次の言葉によってそれが霧散する




――綺麗だ




「.........へ?」


勇者は一瞬で顔を赤くし、それを無意識のうちに呟いた少年も慌てる


すると先程まで王都全体を支配していた緊張が消え失せた


勇者に攻撃するために近付いた少年は止まることが出来ずに勇者に激突する


結果勇者を押し倒す形となり気まずい沈黙が流れる


「あ、あの...」


意を決して勇者が何か言おうとした時、少年が気絶した


気の抜けた勇者もそれに釣られて意識を落とす




これが後に最強の夫婦を生み出す由縁となった

「色ボケ悪魔の呟き」

だった























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