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血を流して

一か月以上更新を止めてしまい、申し訳ありませんでした!

もう架空戦記創作大会も秋になってしまったのに、未だに終わりの目途すら見えず……。

でも、これからはまたコンスタントに仕上げていくので、よろしくお願いします。

1945年9月4日


大西洋上 戦艦 キングジョージⅤ世

「……2世紀ぶりの里帰りか」

 そうつぶやいたのは、英国本国艦隊司令官である、ヘンリー・ムーア中将だ。

 彼の眼前に広がるのは、見渡す限りの船だ。

 その数は数百を超える。

 水平線まで続くはずの海よりも、面積が多いのではと問いたくなるようなその光景は、この地球上で最大の工業力を持つアメリカの力の象徴であり――そして今は、落日の象徴でもあった。


 天使という災厄が地上に出現してから、まだ1カ月。

 だがその1カ月の間に、米国は壊滅的な被害を受けた。

 中部から発生した天使群は狙ったかのように人口密集地を襲い、

 僅か4日で彼らは米経済の中心地であるニューヨークにまで達し、無差別に人間を切り殺した。

 不幸なことに、本来ならばこういう事態に対し、指示を出すはずのトルーマン大統領は行方不明になってしまっていた。

 その結果この天使の情報を国民に伝えるチャンスが失われ、結果として多くの人間が気づいた時には、天空が無数の使徒によっておおわれていた、という事態に陥っていた。 

 最も、天使がやってきて住人を殺戮しているから避難しろ、などと言われても時期外れのエイプリルフールと勘違いされて終わっただろうが……。


 だが大統領がおらずとも、そこにすむ人々は生きたいと願い、またそれを行動に起こしていた。

 大西洋艦隊司令長官であるジョナス・H・イングラム大将は東海岸にいるありとあらゆる船舶を使用して、住民たちをとにかくこの大陸から脱出させようと奔走した。

 幸いにも対独戦も終わり、ニューヨーク付近には故郷帰りの順番を待つ兵士たちが多数残っていた。

 彼らを防衛線の維持に当てつつ、その兵士たちを乗せてきた輸送船に民間人を乗せて、イギリスへと脱出させたのである。

 また空船以外にも、資材を運ぶはずだった輸送船から荷を海中投棄させ、空母からは艦載機を陸上へと移させ、それにも女子供を乗せられるだけ乗せた。

 その結果何十万もの民間人が輸送船によって脱出することに成功したが、それでもまだ多くの住民がニューヨークに取り残されている。

 やはりこちらも西海岸のサンディエゴ、サンフランシスコなどと同様に、海軍艦艇の基地であることや入り組んだビル群によって天使の暴虐には何とか耐えきっていた。

 そして、まだ戦時の空気の抜けなかったことが幸いし、英国は直ちに艦隊を編成。残存する民間人を救うため、自ら死地へと飛び込むのだった。


「南西上空に機影!!」

 見張り員の叫びを聞いて、ムーアはそちらの方向へと目を向けた。

「なるほど。まさにアポカリプスだな」

 噂には聞いていたが、確かに圧巻だ。

 今日が晴天ということもあり、逆光を背に翼を広げ、天を覆う姿はまさしく、世界を終わらせにきた神の使徒を思わせる。

 だが――


「さて、上手くいくかな?」

 ムーアは祈るような思いで、右舷前方へと視線をずらす。

 そこにあるのは、速力20ノットを出せる高速タンカーだ。

 すでに人員は脱出をしており、無人のまま艦隊から離れる方向へと移動していく。


「神よ――」

 と言いかけて、ムーアは苦笑する。

 神は今、我々の命を狙おうとしているではないか。

 だが、何かに祈らずにはいられなかった。

 どうか、この船団に加護があらんことを、と……


 その想いが通じたのか。

 天使達は英国艦隊から10キロほどの距離まで接近した後、唐突に進路を変え、無人となったタンカーに群がり始めたのだった。



同月9日。東京

 軍令部第三部第五課に宛がわれた部屋で、その課のナンバー2である実松譲大佐は小さく溜息をついていた。

「懐かしいなぁ……」

 そう、彼の心にあるのは懐旧である。

 彼の所属する第五課は、米国の情勢把握とそれによる敵の作戦行動の予測である。

 しかし今現在、米国は天使という災害によって壊滅状態であり、情報把握どころではない。ゆえに――

「1年前に逆戻りか」

 驚くことなかれ。

 敵国の情報を把握するという重要部署でありながら、日本は1944年になるまで、わずか5人でこの課を動かしていたのである。

 1944年に生起したマリアナ沖海戦の後には50人(それでも米国に比べてはるかに少ない人数である)にはなった者の、米国崩壊によって「じゃ、もう必要ないよね!」とでも言うように、あれよあれよと人員を引き抜かれた結果、結局5人にまで戻されてしまったのだ。

 これから北米情報を調べて、天使について調べないといけないんじゃないの?

 米国と協力しつつ、その対価を得る交渉材料探さないといけないんじゃ……

 と海軍省に行ってみたが、「もう決まったことなので」という役所らしい返答が返ってきただけだった。

 もうこうなったら笑うしかない。


 天使情報を集めつつ、開店休業となった部屋を占有して珈琲を啜っていた実松は、その日の午後に渡された報告書を読んで目を見開いた。

「本気……いや、正気か?」 

 第七課(ソ欧情報)によると、日米講和が成った8月25日に樺太から5隻の輸送船が出港、9月1日には米アラスカ領ノームへに上陸したらしい。

 天使関連で身動きが取れなかった米国はそのことを知る事なく、脱出してきた民間人が訴えてようやく事情を知ったとのことである。

 そしてそのタイミングを見計らったように、ソ連がノームへの上陸を発表した。

「天使という災害は米国が引き起こしたものである。その天使はすでにシアトルにまで迫っており、我が国土に侵入するかもしれない。それを防ぐための橋頭保が必要なため、一時的に軍を駐屯させている」

 とのことらしい。


 いやいやいや、どうみても火事場泥棒だろう。

 お前ら昨日まで同盟じゃなかったのかよ。

 さんざんレンドリースしてもらっておいて、よくもまぁこんなことできたなぁ、と実松はあの国の面の皮は鋼鉄でできているのだろうと確信した。

 過去に「欧州情勢は複雑怪奇」とか言って解散した内閣の気持ちが少しは分かった気がした。

 ちなみにアラスカ領ノームには、米国がソ連へのレンドリースを行うための最終中継点であるため、飛行場の整備は行き届いており、制圧後は続々と輸送機が舞い降りてきているらしい。


 ちなみにノーム上陸発表と同時にソ連はヤルタ会談を暴露。

「米国はソ連に対してレンドリースの代償として日ソ中立宣言を破棄するように圧力をかけてきた。しかしながら我が国は約束を守る国であり、そのようなことは認められなかった。日本とは引き続き、極東にて友好的な交流をしていきたい」

 と、要約するとこのような発言を行っている。

 この放送は意外に効果があり、陸海軍内部で「休戦を破棄して米国を徹底的に叩き潰せ!」だの「他国に条約を破らせる国など信用できない。何かしらの担保を要求すべきだ!」などという騒ぎが起きている。

 いくらなんでも素直というか、裏を考えない単純な連中が多すぎだろう……と、自国軍人の単細胞さに呆れつつ、現実から逃げるように実松は、テーブルの上に広げられた米国地図を見る。

 天使の発生に伴い、その動きを確認するために新たに取り寄せた地図だ。


「まぁ、ある意味美味しい役か」

 すでに情報として天使が石油を食らっていることはこちらとしても確認済である。

 そしてアメリカ中央部からシアトルにまで襲来したことを考えれば、次はアンカレッジが危険であり、実際米軍は住民をハワイへ避難させ始めている。

 そうなれば次に向かう、石油や人間が過密している地域は――


「いや、やはり納得いかんな」

 閑散とした室内で、実松はニューメキシコからシアトル、アラスカまでを指でなぞり、首を振った。

 天使の発生源がニューメキシコとするならば、ワシントン州やニューヨークに向かうのは明らかにおかしい。

 彼らが石油を求めるならば、西は海軍基地のあるサンディエゴかロサンゼルス、東は米国最大規模の油田があるテキサス東部を目的地とするはずだ。

 だが彼らが真っ先に現れたのはサンフランシスコとシアトルだ。

 東側は情報が少ないが、ノーフォークとワシントンDC周辺がほぼ同時、遅れてニューヨークとのことだったので、位置を考えると一度テネシー州かケンタッキー州に集結しているのではないかと予測できる。

「アパラチア油田か?いや……」

 確かにその周辺にも油田はある。

 だがその規模は東テキサス油田には及ばないはずだ。


「……いかんいかん」

 油にばかり拘り過ぎていることを自覚し、実松は首を振る。

 天使という前代未聞の珍事に囚われ、作戦(この場合は生態の方が正しいかもしれない)予測の基本について忘れていた。

「そもそも、天使はなぜ発生した?」

 予測の基本、それは統計、つまり全体を俯瞰してみる事だ。


「天使はニューメキシコでの原爆実験によって地下から現れた……。何故だ?」

 何故天使は急に表れ、そして人々を襲い始めたのだろうか。

 今のところ主流なのが「原爆によって、住んでいた地下の天井を破壊されたため、怒っている。もしくは支配領域を拡大しようとしている」というのが通説ではあるが、地下に住む生物が飛翔能力を持っているとは考えにくい。

 支配領域を広げるにしても、地下生物が地上という別環境を狙うのも解せない。猿が海底に住居を作ろうとするようなものだ。

 また原爆で地面が割れたとしても、その相手が人間であると何故分かる?報告を聞く限り、彼らには知性は無く、ただ石油を啜る事と人間を殺すことだけを目的としている。

 そうなってくると「地下生物説」は否定される。


「……いや、生物ですらないのか」

 報告によれば、彼らは石油を食った後、死んで天空へと飛んでいくことが確認されている。

 また生殖器も存在しない。まさかあの大きさで無性生殖という訳でもあるまい

 生物でないとするならば、一体――


「大佐。まだいたのか、そろそろ上がらないか? どうだ、この後一杯やらんか」

「一杯、ですか。気楽ですね、課長は」

「そりゃそうさ。もう米国は存在しないんだ、俺たちも暫くすれば他の課に回されるかもしれないという話だぞ。そうなったらまたここに寝泊まりの日々だ。暫くは羽を伸ばしてもばちはあたるまいよ」

 一人考えていた実松の下を訪れたのは、第五課課長の竹内馨少将である。

 5人体制であった頃から第五課課長を拝命しており、実松と共に苦楽を共にしてきた信頼たる上司である。

 だが米国の工業力と敵対する危機感はあったようだが、天使については現実感がないのか、実松ほどに危機感を持っていないらしい


「上は楽観的ですね。奴らが我が国を襲うかもしれないというのに……」

「天使は石油を食べるんだろう?だったら我が襲われんさ。襲われても、被害は少ない」

「何故、そう言いきれるのです?」

「我々がアメリカと戦争をした理由は?」

「それは―― ああ、なるほど」

 言われて実松は、何故自身の上司や上層部が楽観的なのか理解した。

 日本には石油がほとんどないのだ。

 あるにはあるが、米国に比べれば微々たる量で、いよいよとなれば爆破処分できるほど程度である。

 喜ぶべきであるのか、悲しむべきであるのか……


「そうなると、我々は江戸時代に逆戻りですか。風情はありますね」

「いや、石炭があるから明治じゃないか?連中、石油は食うが石炭はどうなんだ? というか、さすがに石炭は歯が折れるか」

「いや。石炭は食いませんが、食べようと思えば食べられるのでは?連中の剣は艦艇の装甲や砲身も切断できますから、食べやすい大きさにカットする程度はできるでしょう。実際、原爆の材料を食べていたらしいですから……。ええっと、写真が来ていたんですが、どこだったか――」

 そこまで言って実松は自分の机に戻ると、書類の山を崩し始めた。


「連中、原爆の材料まで食べるのか」

「ええ。GF(連合艦隊)の宮嵜首席参謀が、態々ハワイ経由で送ってきたんですよ。何か意見は無いかと……」


 〔伊400〕によるシアトル偵察の結果は、米軍も興味を持ったらしく、特別部隊を編成して写真撮影と情報収集を行ったらしい。

 無論その全てが日本側に開示されたわけではなかったが、ハンフォード・サイトと呼ばれる地域にあった件の建築物は、原爆材料の製造工場であり、天使達はその材料を食していた旨が伝えられた。


「原爆工場ね……。あっさりその存在を教えるあたり、米軍は相当参っているようだな。それで、その原爆の材料も天使達が食っているのかい?」

「――のようですね。お、あった。これですよ。昨日、届いたばかりの最新情報です」

 実松はつい先日送られてきた写真を見せた。


「カラー写真か。……共食いとは、中々刺激的だね。」

 一番上の写真は、天使に群がる天使が映っていた。

 まるで西洋映画のゾンビを思わせるが、その犠牲となっている天使の腹を引き裂き、頬を真赤に染めながらその内側を貪っているのがはっきりと分かった。


「ん? これは――」

「それが、原爆の材料を食べていたという証拠らしいです」

 共食い写真だけでもインパクトのあるものだったが、次の写真はさらに過激だった。

 真っ青な光を発して、天使の腹が破裂しているのだ。


「爆発している……のか?」

 竹内の問いに、実松は報告書を渡して答えた。


「自分も、こういった科学に対しては門外漢ですが、原爆というものはある種の金属を一定の密度にまで敷き詰めると爆発する……とその資料には書かれています。この光は、それが緩やかに起きた時の反応だそうで……」

「ずいぶんと危なっかしいものなのだな。原爆というのは」

「保管していた材料は十分な距離を置いていたようですが、天使が食べちゃいましたからね……」

 報告書を受け取った竹内は、資料を流し読みする。

 どうやら先ほどの天使達は共食いをしていたわけではなく、その腹の中身を貪っていたらしい。


 つまり、天使が原爆材料を食べる。

 分割保存されていた材料が、天使の胃袋の中で一定量集まる。

 石油を食べた天使と同様に天へと昇ろうとするが、途中、腹の内側で爆発が発生し、穴が開く。

 こぼれた破片や、腹の中に残っている別の破片を天使が食らう。

 それが一定以上になると――という無限ループが、この界隈で起こっているらしい。


「本当に理解不能の生物だな。何がそこまで、連中を駆り立てるのか……。爆発物を口にして、腹をぶち破るような放屁をするとは」

「放屁というのは正しくないでしょう。彼らの胃は袋小路だそうですから」


 そこまで言って、ふと実松は考えを巡らせる。

 そうだ。

 てっきり口から貪っているから「食う」と表現し、ゆえに石油を「餌」だと思っていた。

 だが餌を食えば糞を出さねばならない。

 飛行機ですら、燃料を燃やしたガスを排出するための排気管が必要だ。


「食うためじゃない……のか?」

 では、何のために腹に詰めるのだ?

 石油も、そして核兵器の原料……。

 それらを食べた後、天使は自ら活動を停止して、天へと昇っていく……


「空へ運ぶ……。いや、ちがう」

 しかし米軍とて無能ではない。

 消えた天使の行方を追おうとした。

 だが高度1万を越えても特になにもなく、天使達はその後も成層圏を越えて空の果へと消えていったというレポートが届いている。


 いや、そもそもどこかへ届けるなら、直上へとは移動しない。

 地球は球体で、自転している。

 どこか1点に向かっているとしても、時刻や場所によって向かう場所が異なるはずだ。

 しかし天使が地面や水平方向は愚か、角度をつけて上昇するという自称は見られていない。

 すべて垂直に、まるで空へ落ちるように天へと消えていくだけだ。


「届けるのではないならば……排除、か? わざわざ胃袋に詰め込んで、命を絶ってまで。それじゃまるで――」

 そこまで口にして、実松は自分の突拍子もない仮説に言葉を失った。


 ありえない、という自分。

 認めたくはないし、証拠などあるはずもない。

 しかし、そう考えると天使の行動についても一貫性が見えてくる……。


 実松はノートに走り書きをすると、何故か海軍兵学校の軍医に電話をかけて何度か会話した後、天使の写真の送り主に対して以下のような電報を送った。


発 軍令部

宛 遣米艦隊司令官

 今日マデノ情報ヨリ推察スルニ、天使ノ行動ニハ海洋、乃至ハ地上汚染トナル物質ヲ排除セントスル生態ガ見受ケラレル。早急ニ米国ニオケル有害物質ノ保管施設ノ調査ノ必要アリト認トム。

 追伸。

 米国ノ医学者トノ連絡ノ確保を要請ス。理由ハ追ッテ送信ス。


「つまり、連中は石油を食っているわけじゃない、と?」

 電報を打ち終わった実松に、竹内が唸りながら訪ねた。


「過度に地球環境を汚染する物質の中でアメリカ……いや、世界中に一番分布しているものが石油ですから、我々は石油を食べているものだと勘違いをした。しかし、原爆材料も食べようとしていると、その共通点は生物に有害、というものしか残りません」

「有害ねぇ……。いったいなんで、天使がそんな事を?」

「……血ですよ」

「は?」

「食べて、死んで、外へと逃げる……。白血球の動きと同じです」


 言われて、竹内は遠い記憶をさかのぼる。

 医療に携わったことはないが、そのようなことを兵学校でも習ったような気がする。


「血ねぇ……。しかし、誰の血だって言うんだい?」

 我ながら突拍子もない仮説ですが、と付け加えて実松はゆっくりと口を開いた。


「地球……、ですよ。」

 実松の言葉に、冷や汗をかきながら、竹内は視線を足元へと向けた。


 母なる大地、地球。

 人間はその上に立ち、田畑を作り、家を立て、繁栄を謳歌している。

 その地球が、人間に牙をむいた……?


「…………」

 そんな馬鹿な、ということ自体がナンセンスだということに、竹内はすぐに気づく。

 すでに天使というバカげた存在が、人類の中で最も強大な国家を消してしまったのだ。

 架空と思われていた存在が国を亡ぼすなら、実際に存在が確定している物体が人類を滅ぼすのも、ありえないとは言い切れまい。


「つまり地球が一つの生き物だと。君はそう言いたいのか?」

「肯定する材料はありませんが、否定する材料もありません。あくまで仮説ですが、天使が地球の免疫機構だと考えるなら、石油を飲むことだけでなく、肉体構造や天へと上る理由、シアトルが真っ先に狙われた理由も理解できます」


 免疫機構であるから、意志が無く、また生殖器も存在しない。

 その存在理由が悪性物質の排除であるから、対象を飽食した時点で役割は、捕食から排除へと変わる。ゆえに、天へと昇っていく。

 石油ではなく、有害物質という単位を求めて移動しているならば、石油よりもはるかに危険度の高い、原爆材料を真っ先に狙い、シアトルーー正確には原爆工場を狙いに来たということも納得できる。

 なるほど、確かにこれまでの生態と行動の説明にはなる。


「……だとするなら。不味いことになるんじゃないか?」

「何故です?」

「白血球って、刺激すると強くなるって言われてなかったか。ほら、一度おたふく風邪をひくと、同じものには二度とかからない――だったか」

「……あ」

 上司の言葉に、今度は実松が冷や汗をかかされた。

 そしてその言葉は、しばらくの後に現実のものとなるのであった……。


ってなわけで、天使の正体編でした。

堅苦しい展開も微妙だったので、文体やらセリフをちょっとフランクにしてみたり。


もうね、これを書いてて対米情報収集を1944まで5人でやっていたという事実に何度突っ込んだか。

これで戦争やろうと思ったな、というより、なんで戦争始まってるのに人数増やさないんだとw


まぁ史実はさておき、ようやく天使の正体も見えてきましたが、そろそろ無能天使だけでは面白味が微妙なので

ちょっと違う方向からも攻めてみますよ。

そんなわけで再開した「バベルの塔1945」を、これからもよろしくお願いします!

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