炎舞
先週は投稿できずに本当すみません!!
楽しみしていた方、申し訳な――
え、待っていない? そんなー(´;ω;`)
がきぃん、と甲高い音が下かと思うと、〔大淀〕艦橋に光が差し込んだ。
まるで紙を割くかのように、鋼鉄製の壁がいびつな三角形に切り開かれ、そこから天の使いがなだれ込んでくる。
「ひっ!」
不幸にも、その時一番近くにいた伝令が、断罪の餌食となった。
骨の有無などお構いなしに上腕2本と背骨が両断され、未来ある若者の上半身が、どしゃりと艦橋の床へと落ちる。
純白の衣や肌、黄金を思わせる頭髪を返り血で染めながら、天使は次の獲物として宮嵜を狙った。
「おおおっ!?」
迫りくる剣閃に宮嵜が飛び退くと、切っ先胸元の上を掠め、首からかけていた双眼鏡が紐を切断される。
空振りした瞬間、宮嵜と天使の目があった。
曇りも光も無い、生命の欠片も見えぬ、しかし美しい研磨したトルコ石のような双眸。
攻撃を躱されたことに瞬き一つせず、刃の代わりとばかりに視線だけが宮嵜の方へと向く。
その異質な眼光に恐怖を感じるよりも早く体が動き、空振りしていた天使の腕を掴んだ。
「だぁっ!」
左手で手首を、右手で肘を掴むとそのまま背負い投げにする。
やけに軽い手ごたえだったが、構わず床へと叩きつけ、ダメ押しに首元へと踵を振り下ろした。
ボキリ、と嫌な響が足裏から伝わると同時に、天使は一瞬だけ痙攣するとその場から動かなくなった。
「はぁっ、はぁ……!」
命の危機を脱した安堵も、足裏で敵の命を奪ったという恐怖も無かった。
視界の端にはすでに天使を認めており、咄嗟に今踏み殺した天使から剣を奪い、襲い掛かる刃を受け止める。
耳を引っ掻くような金属音が響き、自分の剣を軸にして、天使の刃が回転するように頭部へとせまった。
が――
「撃てー―っ!!」
はじけ飛んだのは宮嵜の頭ではなく、天使の頭だった。
防空指揮所から駆逐艦を支援していた陸戦隊が下りてきて、天使に銃弾を叩き込んだのだ。
宮嵜の眼前、そして他の者に襲い掛かろうとしていた天使を射殺した彼らは、すぐに銃口を斬り開けた三角形の穴に向けた。
「侵入させるな! 撃て! 撃ち落せ!」
今まさに艦橋に入り込もうとした天使が次々に銃弾が撃ち込まれ、その作られた窓の外へと消えていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
「申し訳ありません。先任参謀を、このような危険に合わせてしまい……」
「ふぅ……。構わないよ。この程度で済んで良かったさ」
申し訳なさそうに謝る田口艦長に向かって、宮嵜は床に落してしまっていた軍帽を被り直して、小さな笑みをむけた。
「まさか連合艦隊先任参謀になってまで、白兵戦をやる事になるとはね」
「恥ずかしい限りです。自分はなにもできず――」
「気にすることは無いよ。自分だって、襲われそうになったから夢中になっただけさ。それに、もうこんなことはあり得ないだろうしな」
艦橋の傍にいた天使達も銃によって撃ち落されて、宮嵜はやれやれと空を見上げる。
上空に乱舞するのは人類が生み出した英知、恐れも知らず神の領域を蹂躙する鋼鉄の海鷲たちだ。
だがその翼を色づけるのは、見慣れた濃緑と旭日のデザインではない。
濃紺の上に星マーク、これまで散々、自分たちが恐怖の対象としていた目印だ。
「まさか米軍に頭上を守られる日が来ようとは……」
「今は、人類の危機だからね。日本だ、米軍だなんて言っていられないということさ」
帝国艦隊は艦艇を一か所に集中して天使を誘導、一網打尽にし、9割方を撃滅し終えていた。
だが一方で残段も天使と同程度なほどに尽きかけており、彼らが全滅するのが先か、こちらが弾切れになるのが先かの根競べとなっていた。
しかし後方から駆け付けた第7艦隊所属の空母艦載機が介入することで、危機は脱しつつあった。
数が落ち込み、まばらになった天使には対空砲よりも艦載機の方が有効で、天使達の全滅は時間の問題だった。
そのせいで天使達が散ってしまい、まったく無防備だった左舷側(左舷の高角砲、機銃の要員は陸戦隊として戦闘を行っていた)からの侵入を許してしまったが、さすがに同じ失態を繰り返すことはない。
三八式歩兵銃を持たせていた兵や、弾が尽きた右舷機銃座の兵を左舷に配置し、不意の一撃を受けないように、対空戦闘の準備をさせている。
「これで一安心といったところか……。追加の天使が来なければ、だが」
宮嵜は、先ほど殺した天使を“見え上げた”。
「しかし、いよいよ持って奇怪だな」
天使は、まるで昆虫の標本のように艦橋の天井にへばり付いていた。
首はへし折れていて明後日の方向を向き、両手を投げ出し――どこぞやの、磔にされた大工の息子を思わせるポーズで息絶えていた。
ご丁寧に口元から垂れる血液や、剥がれ落ちた羽毛までもが、天井にくっついている。
「自己弁護する訳ではありませんが、艦内に侵入してくれたおかげで、死体の回収が可能となりましたね。落ち着いたら、軍医長に解剖させましょう」
「そうだな。解剖すれば、何か情報が分かるかもしれん」
機銃で撃たれるにしろ、艦砲の爆風をくらうにしろ、今のように首を折られるにしろ。
天使達は死ぬと、まるで主の下へと帰る、とでも言うかのように重力とは逆、天空に向かって昇っていくのだ。
そのおかげで、一部の米軍機は天使をプロペラブレードに巻き込んで墜落するという憂き目もあっている。
だがあいにく、彼は艦橋という鋼鉄の壁によって阻害され、死後の目的を達することができなかった。
おかげで、日本軍は貴重な天使のサンプルを手に入れるに至ったのだ。
「体がヘリウムなり、水素なりでできているのでしょうか?」
「いや、斬撃には確かに重さがあった。重量はマイナスだが、質量は――」
そこまで言いかけて、ふと宮嵜は自分が天使から奪った剣を、そのまま握りしめていたことに気付いた。
それは鉄パイプの先を潰したような、天使が持つには質素な造りをしていたが、注意を向けてみれば、それが異様に軽い――いや、上方へと引っ張られる感覚があることwに気が付いた。
手放してみると、やはり創造主の下に戻りたいらしく、ふわりと宙に浮かび、まるで羊羹に楊枝が刺さるかのように、艦橋の天井にその切っ先を沈める。
「……とんでもない切れ味ですね」
「全く、冗談じゃないね。村正とかじゃ比べ物にならない。まさに神の御業だ……」
戦闘中、駆逐艦の主砲が切断された、という報告を受け取ったときは耳を疑ったが、この切れ味を見る限り、報告は嘘ではないようだ。
まったく恐ろしいものだ、と宮嵜は小さくため息をつく。
「上空に天使、確認できず! 全滅した模様」
「よろしい。艦長、こちらも離脱にかかろう。進路は西だ」
「は。舫を解け! 移動準備!」
〔大淀〕艦内が天使たちに襲われて混乱している間にも、米軍機は粛々と天使達を屠っていたようだ。
その結果、東太平洋の空は再び人類の支配下に行われることになった。
――日本艦隊の上空は、だが。
「米艦載機は?」
「一部は後方へと帰還しました。残存部隊は米戦艦2隻を遠巻きに包囲しています」
そうだ、それでいい。
米軍指揮官の喝采に安堵しながら、宮嵜は東の方へと双眼鏡を向ける。
薄暮が迫る水平線には、2つの火柱があった。
戦艦〔ニュージャージー〕〔アイオワ〕。
米軍が誇る最新鋭戦艦は、その身の全てを炎に包まれながらも、沈むことなく海の上でその威容を誇っていた。
「炎舞ですな」
「ん? 何だいそれは」
「自分も絵画に詳しいわけではなく、作者の名も思い出せないのですが……。何年か前に、炎に蛾が群がる掛け軸を見せていただきまして。それがまた見事な光景でしてね、闇夜に灯る炎と、そこを飛翔する蛾がそれはもう美しく……。陛下も御覧になり、感心なされたとか」
「ほう。陛下がね……」
あいにく宮嵜はその掛け軸を見たことはなかったが、たしかに田口艦長の言う通り、遠方で燃える米戦艦は幻想的であった。
艦橋の高さすら超えるであろう炎の柱に、まだ何千、何万と残っている天使が殺到する。
天のためならば命など――とでも言うように、戦艦の装甲の奥で息をひそめる人間を討とうと、甲板の上に降り立つ。
衣が、肌が、羽が、炎に包まれているにも関わらず、剣を降り、甲板を切ろうとするが、それより早くに血肉が焦げ付き、絶命する。
死体になった天使達は、全身を赤々と燃え上がらせながら、天の上へと消えていく。
稀に空中でその死体に触れた天使が、戦艦に取りつくよりも早く、火だるまとなって天へと上るのも見られる。
その炎の檻に囚われている友軍を、助けようとする者は誰もいない。
艦艇も、また航空機も、10海里ほどの距離を隔てて静観し、時折イレギュラーに接近する個体を迎撃するだけにとどめている。
「自分は絵画じゃなくて、倶利伽羅峠が想い浮かんだな。」
「倶利伽羅峠……ですか?」
「ああ、猛牛に牛。突撃こそしないが、まさにぴったりじゃないか」
「……不謹慎ではありませんか。あの中には――」
「天使があそこにいるってことは、多数の人間が生きているって証拠さ。連中があれを襲っている限り、中の人間は死んじゃないってことだよ」
言われて、田口は確かにその通りだと納得した。
天使達は人間を殺しに来る。
ならば、天使に襲われている間は、あの戦艦の中にいる米将兵は無事であるはずだ。
「〔霞〕、離脱完了。西方へと向かいます」
「よろしい。航海長、微速前進。進路270だ」
田口の命令と同時に、〔大淀〕の船体深くで、久方ぶりの機関音が響いた。
熱せられた水が蒸気となってタービンを回し、天使達から生き延びた将兵たちを、安全な海域へと逃がしていくのであった……。
翌日。
「ほら見ろ、俺の言った通りだっただろ!」
興奮した様子で、焼けこげた〔ニュージャージー〕の艦橋に踏み出したのは、その暴挙を命じたウィリアム・ハルゼー、その人であった。
宮嵜の言った通り、〔ニュージャージー〕〔アイオワ〕の乗組員は、艦内への撤収前に天使に襲われた若干名を残し、ほぼ全員が生存していた。
一部二酸化炭素中毒になった者もいるが、いずれも軽症である。
「……我々としては気が気ではありませんでしたが」
「何いってやがる。こいつは16インチ砲に対応した艦だぞ。榴弾ごときで沈むかよ」
砲弾に晒された恐怖と、消火したとはいえ未だに匂う硝煙と重油の匂いに参謀長は青ざめた表情をしていたが、ハルゼーは彼に対して唇をゆがめて見せた。
米国製の16インチ砲に対応した装甲は、その力を額面通りに発揮した。
その分厚い鎧を叩いたのは、日本軍の艦砲ではなく友軍からの砲撃ではあったが、榴弾とはいえ8インチ砲や6インチ砲の豪雨に耐え、乗員たちをその装甲によって守り抜いたのだ。
だが当然、耐えられたのは重要装甲区画のみだ。
艦首、艦尾は怪物に齧られたかのようにその過半が消失しているし、主砲は火災によって溶融し、まるで鍾乳洞のようにドロドロとした柱を甲板に落している。
高角砲、機銃座などは跡形もない。
機関は無事だが煙路の被害が大きく自立航行も不能であり、総員退艦が命じられていた。
「天使は全滅できたんだな?」
「はい。周囲に観測機を飛ばしていますが、半径300キロに飛行物体は存在しないとのことです」
だが、それに見合った戦果は挙げた。
誘蛾灯となった戦艦2隻に天使はおびき寄せられ、最初は米艦艇の砲弾と破片の嵐に、最後は燃え盛る炎の中に自ら突撃し、その身を天に帰していった。
黎明の空にあるのは、わずかな千切れ雲だけであり、昨日、空を埋め尽くしていた天使達はどこにもいなかった。
「OKだ。沈黙した艦艇の中に、残っている奴らもいないな?」
「天井に張り付いた死体は発見したそうですが、生きている者はいないとの報告です」
「そうか……。人間の生存者は?」
「……ありません」
「……クソッタレが!!」
忌々しげに、ハルゼーは黒焦げになった主砲塔を殴りつけた。
白兵戦によって乗員が全滅し航行不能になるなど、中世以降の珍事だ。
その惨状を生み出してしまった自分に腹が立ったが、今は艦隊司令官として、その無人となった艦艇をどうするべきか、指示を出さねばならない。
「各艦艇から人員を抽出して、最低限度の人数を乗船させろ。機関が無事なら、曳航するよりもそっちの方が早くサンディエゴにつけるだろう」
報告によれば天使たちは人間を殺すだけであり、接近のために砲身や隔壁を切断する以外は、特に艦を傷つけようとはしなかったとのことだ。
ならば自走させた方が時間も労力も少ない。
真っ当かつ健全な判断はすぐに、救出に向かった艦艇へと伝えられた。
だが、その命令は実行されることはなかった。
なぜならば――。
「何? 機関部が破壊されているだと?」
喪失艦艇の機関区画が壊滅している、そのような報告を受け取っている最中、宮嵜は艦隊の再編と弾薬の移譲作業を行っていた。
米艦隊の十分の一程度にも満たない規模の襲撃であったとはいえ、〔霞〕は第2、第3主砲の砲身が切断されてしまった。
〔初霜〕に至っては艦橋が一時天使によって占領され、艦長以下主要幹部が戦死している。
この2艦は戦闘不能と判断されており、同じく損耗によってハワイへ撤収するであろう米艦隊の部隊と行動を共にすることが決定された。
一方〔大淀〕〔朝霜〕は、人員や機銃に損耗が発生したものの、比較的軽微な損傷で切り抜けた。
破損した機銃や戦死した人員は、撤収する2艦から融通を聞かせてもらい、損傷個所はほぼ修繕された。
これによって〔朝霜〕は主砲弾が5割まで回復できた。
一方〔大淀〕は10cm高角砲のため他艦からの融通はなかったが、発砲を行わなかった右舷側の砲弾を補充することで4割を確保している。
米艦隊と共に行動すれば、1会戦程度ならばなんとかなるだろう。
「とはいえ、軽巡1隻、駆逐艦1隻です。我々も離脱すべきでは――」
という意見もあったが、宮嵜は首を横に振った。
「軍事的観点からすれば、それは正しい判断だ。だが今回の目的は、苦戦するサンディエゴに、日本艦艇が姿を現すことが重要なんだ。これによって米市民と米軍人は我々を信用してくれる。同時に天使についての情報共有もすることができる。ここで我々が引いてしまったら、彼らは我々をどう見る? 所詮は真珠湾のようなだまし討ちしかできない、卑怯な連中――そう捉えるだろう。ましてや、彼らは市民までもが銃を手にして街を守っているんだからね」
当初こそ混乱によって蹂躙された米本土だったが、混乱から立ち直ると彼らは天使達に対抗し始めた。
天使が万物を切り取る剣を所有しているが、銃で撃たれればしぬのだ。
スターリングラード、レニングラードしかり、サンフランシスコでは天使相手に市街地戦が行われていた。
米国は個人が銃を持つし、両地には海軍基地が存在したため、武器も豊富だった。
対日戦の休暇を楽しんでいた兵たちによって構成された防御陣地は、物量で押しつぶそうとする天使達を何度も撃退させていた。
そのような勇ましい彼らを目前にして引き返すなど、ありえない選択肢だ。
「……了解しました。先任参謀がそう仰るのならば、我々はその目的を達するために全力を尽くすのみであります」
「そうしれくれ……。悪いな、艦隊指揮官は君だというのに……」
「政治的な判断は先任参謀が行うとなっています。である以上――」
「分かっているよ。まったく、玉虫色というのは日本人の悪いクセだな」
それだけ言うと、宮嵜は踵を返して艦橋の外へと向かっていく。
「どちらへ?」
「医務室さ。天使の実物を、もっとよく見てみようと思ってね」
十分後、宮嵜は〔大淀〕の医務室にいた。
目の前では軍医長が、ベッドの上に縛られた天使を前に、メスを握っている。
何百回と手術をこなしているのはずだが、やはり人に非ざる者を切ることに緊張しているらしく、メスがわずかに震えているのが分かった。
「生殖器も無いとは、悲しい人生……いや、天使生だな」
重力を無視して天井に張り付いた死体は、〔大淀〕艦橋に侵入したものも含め、全部で5体だった。
その内4体はサンプルとして、帰投する2隻の冷凍庫に放り込まれたが、1体は〔大淀〕の艦内で解剖することになった。
当然、天に向かって落ちていこうとするので、その体はベルトで固定されている。
全裸にされた天使は羽を付けた成人男性にほぼ酷似していたが、生殖器と肛門が存在していなかった。
股間部分は、宮嵜の言った通り人形のようにつるりとしており、凹も凸もない。
「では、開腹を開始します。 ――うおっ!?」
軍医長が腹部にメスを入れた瞬間、ベシャ、という音と共に血液が弾け、天井に向かってぽたぽたと昇っていた。
血だけではなく、内臓も、出来の悪いキノコのように開腹部から飛び出していた。
「猟奇映画の世界だな、これは……」
暫くはその異常さに驚いていたが、しばらくして冷静になった頭で観察してみると、宮嵜も、また軍医長いも、その内容物の種類が人間よりもはるかに少ないことに気付いた。
「肺と心臓……それだけか」
「はいいえ、胃袋もあります……。ですが、何か重量物を飲み込んでいるらしく、その重みで浮かないようです。肺も心臓も、人間とほぼ同じ外見をしていますが……胃袋だけは信じられないほど巨大で、腹腔のほぼ全てを埋めています。それ以外の消化器官は存在していません」
「腹全部が胃袋か。よほど大食いなんだねぇ。ま、100ノットで飛行するんだ。やっぱり天使でも、食べなきゃ戦はできないのかな」
「空力性能も良さそうではありませんしね――。では、一体何を食べているのか、内容物を確認しましょう」
そう言って軍医が薄紅色の内臓へとメスを入れた瞬間、その軍医も、見学していた宮嵜も眉をひそめてすぐに医務室の扉を開いた。
「電気を……いや、消したらだめだ! これ以降、電気の類は一切触れるなよ!」
「換気だ、換気しろ!!」
「〔霞〕〔朝霜〕に伝達! 冷凍庫の天使を、何か密閉した袋につめさせろ! もしくは腹を開いて、中身を出してしまえ!!」
慌てて飛び出してきた宮嵜と軍医の命令に、待機していた兵たちが理由も聞かずに走り出す。
換気扇の音がごうごうと鳴り響き、少しずつ異臭が収まるのを安堵しながら、ますます不気味さが際立った天使に、宮嵜は畏怖の視線を向けた。
「連中、ガソリンを食っているのか……!?」
おさらい。
現状における、日米が把握する天使の習性について
・人間を執拗に攻撃する。他の生命には手出しはしない。
・知性は無い。人間の密度を利用すれば、一方的に誘導は容易である。
・武器は剣のみ。ただし剣は未知の鉱物によってできており、軍艦の主砲砲身すら切断可能。
・死後は天へと昇っていく。肉体および装飾品そのものが、重力に影響されない物質で構成されている可能性あり。
・腹腔の大半は胃が占める。他は心臓、肺、横隔膜のみ。
・胃袋にはガソリンないしは重油が確認された。
・発生源は不明だが、侵攻方向を考えるとニューメキシコの原爆実験跡地からの可能性が大。
・生殖器が存在せず、また顔立ちも中性的なため、性別の判定は不能。そもそも性別があるのかも不明。
うーん、こうしてみると、もうこいつらが意見だけで中身が天使でもなんでもねーなw
そしてどう考えても8月中に終わりそうもないですね。
というかリアルライフが忙しくなってきたので、9月中に終わるかどうかも……
それでも完結は絶対させたいと思っていますので、生暖かい目で見守ってくれれば幸いです。
ではまた