プロローグ
なんか噂されてる気がしたのと、設定だけじゃなぁ、と思いましたので、一話だけ死ぬ気で書き上げました。
ここは天界。いつもは、とても静かである。--そう。いつもは。
「ほんと困るよ、キミ!」
「スミマセンスミマセンスミマセン----」
現代の社会と同じような光景が広がっているここは社長室--ではなく、上位神室。上位の神に与えられる仕事用の部屋である。
そんなここで現代ではあまり珍しくない光景を繰り広げているのは、土下座している銀髪の女性-トネリとこの上位神室の主で、白髪の小太り、タルラルである。
「まぁまぁ、こんなに謝ってるんだし、許してあげましょうや--痛ッつ! なぁにをすんだ! トネリ!?」
耳を掻きながら現れトネリに思い切りぶん殴られたのは、この騒動の元凶、熊谷幸平である。
「もとはといえばあんたがミスしたせいでしょーが!」
怒った様子でもう一度殴りかかり、--今度はあっさりとかわされた。
「へいへい。メンゴ~「ランス・ライトニング!」アガガガガガカ!!?」
反射神経が無駄に優れている幸平も、さすがに詠唱短縮で発動した魔法は避けられなかったようである。黒こげになってその場に崩れ落ちた。
「……それはやり過ぎじゃあないかね?」
「いえ、この人は絶対に余計なことをしますので、これでいいんです」
「そ、そうか……」
タルラルはドン引きした様子で数歩後ろに綺麗にムーンウォークした。
「まあ、話を戻そう。君達が担当した安田--いや、ファルルか。やつがついに、覚醒したそうだ。」
緊張していたトネリの顔が、へにゃっと、落ち着いた顔になった。
「ああ、それで戦闘部隊がしばらく出ると? それでしたら「いや、君達が行きたまえ」大丈--へ?」
トネリの顔が一瞬にして怒りの表情に変化した。
「なんでですか!? 熊谷はわかりますが、なぜ私まで!?」
タルラルが「呼び捨てかね……」と呟く
「まあ、もう時間がない。詳しくは向こうについてから確認したまえ。では--行け!」
トネリと、いまだに倒れている幸平の足元に大規模な魔法陣が浮かぶ。トネリは諦めた顔で
「はぁ、もう最初から決まってたんですか。最後に、ひとつだけ----」
トネリが息を思い切り吸う。
「こんの、クソ上司ぃいぃい!!!」
こうしてトネリと幸平は異世界ファセレブァリに飛ばされていった。
タルラルは、疲れた顔で
「自分のケツぐらい、自分で拭け。……頼んだよ」
と、呟いた。
タルラルの薄い毛が、寂しげに揺れた。
読んでくださって、ありがとうございました。誤字脱字等ございましたら、ご報告お願いいたします