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最後の晩餐

はぁ、鬱だ。


死ぬわけでもないが死ぬ程かったるいイベントが家に帰ると起こってしまう気がする。


自転車を漕ぐ速度が家に近づくにつれて遅くなる。


ーー結局、担任が散々勿体ぶっただけあって俺の期末テストの結果は堂々たるものだった。


担任が指でなぞったところを見てみるとそこには圧巻の「偏差値32」の文字が!


1年生の内は補修に出れば単位を落とすことは無いらしいが、圧巻の結果を見た普段は大和撫子のようにお淑やかなハズの母親の顔は凄まじく捻れ、もはやネジみたい。


どうにか機嫌を取ろうと

「いや、単位は落とさないから大丈夫だよ」

というと、机の上の結果が書かれた紙をむんずと掴み

「お先に失礼します」

とにっこり笑うと足早に教室から出て行った。

引き止めようとすれば出来たが下手をすると単位を落とすどころか激昂した実の親に3階の教室から落とされそうだったので、やめました。




と、まぁこんな感じで俺の頑張りは水泡となり、あまつさえ過去最低偏差値プラス学年順位最下位という称号まで頂いてしまった。


どこぞの大盛りメニューみたいな量の不名誉を食らった俺はそのフラフラとした足取りで自転車を漕ぎ、ようやく家に辿り着いた。


自転車を所定の位置に戻し、微妙な気持ちのまま玄関のドアに手をかけた。


「ただいまー」


ドアを開けて英雄の帰還を告げると、玄関には今さっき帰ってきたらしい父親の姿があった。


「おかえりー」


タイミングが悪いな?

こんな日に早く帰ってこられたら夕飯時に地獄のカミングアウト祭りが開催されてしまうではないか。

やれやれ困ったぜ。


とりあえず ただいま、と短く告げ足早に2階の自室へと向かった。




自室に戻ると少しは落ち着きを取り戻した。

別に今回が初めてって訳でもない。

これまで幾度となく勉強面で失態(自分ではそうは思ってはいない)を犯してきた俺だから言えるが、勉強で人の価値は決まらない。


最も重要なことは自分の意見を持つことだ。

俺はそこらへんの有象無象とは同じになりたくないんだ。

オンリーワンになりたいのだ。


ベットに寝転んでスマホをいじくり回しながらそんな事を考えてると結構時間が経っていた。

”ドラドラ”のスタミナは溜まったかな?


”tweeyo”のアプリを消しドラゴン達と旅に出ようとしていたその時、



ドッッッッッッンンンン‼︎‼︎‼︎



クソでかい衝撃が俺の部屋のドアに向けて与えられた。

なんだ⁉︎サイでも突進してきたのか⁉︎

サイが突進してきたとなるとマイホームが動物園だった説が浮上してしまうのでそれは無いが、一体誰が?


そう思っていると、ギィとドアが開きピョコンと可愛らしい女の子が顔を覗かせた。


「オイ、クソ雑魚。飯の時間だ。」


可愛らしい顔からは想像できない程汚いワードをぶん投げてきたこの女の子は俺の妹の異世(ことせ) 廻恋(かいこ)ちゃんである。


「了解だ。一緒に下まで行こう。」

「‥‥‥。」


「お断りだ。」


なんで溜めたんだ。

格ゲーか。


廻恋ちゃんは”お断りスラッシュ”を放った後パタパタと1階へと降りて行ってしまった。


昔はあんなにお兄ちゃん大好きっ子だったのに‥‥T_T

そう、昔は本当に俺のことを慕って付いてきてくれるTHE 理想の妹 みたいな感じだったのだ。

それがいつの間にかあんな感じになってしまっている。

原因は完全に俺のシスコンが行き過ぎたからなのだがこれ以上この話題について考えてると僕の身がもたないのでやめますね^^;


今日の夕飯はスルーしてこのまま深い眠りに着く予定だったが可愛い妹に「一緒にご飯たべよ?」と言われれば行く以外の選択肢はありえないw


というわけで、重い腰を上げベットから立ち上がる。

面倒なことにならないといいが‥‥‥。


階段を下ってリビングへと向かう。

というかリビングから異様な程の殺気が漏れ出している。

もはや漏れ出すぎてて小動物とかなら殺せるレベル。

飼い猫の安否が心配である。


殺気溢れる地獄への扉を開けると眼を疑う光景が広がっていた。


夕飯時であればディナーが並んでいるはずのテーブルの上にはさっき返された期末テストの結果が、そして和気藹々としているはずの家族の面々は般若のような顔をした母親といつも通りの可愛いフェイスをした妹と何故かパンイチの父親がいた。


その時俺の頭にある”答え”が浮かんだ。

この夕食会はノーマルなものではない、と。


何故なら般若がいるからだ。

般若と飯を食うなんて滅多にない経験だ。


ーーーあぁ、そうか分かったぜ。

晩餐は晩餐でも今日はさしずめ、”最後の晩餐”ってか。













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