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瑠璃の火焔  作者: 呉葉 織
歴史Ⅰ:『黒』持ちの少年
6/13

定例会

3ヶ月ぶりに更新しました。

読んでくださっている方々には申し訳ありませんm(_ _)m


 各寮の代表者が参加する定例会での報告は2つある。殆どが近況報告なのだが、年に4回ある「精霊ロワイヤル」についてだ。

 「精霊ロワイヤル」とは、各寮所在の寮生の契約精霊を使ってのバトル大会である。もちろん、任意の上であり強制ではないし、単位が絡むことはない。単位が絡むのは年に1回しかない「総当たり戦」のみ。

 これは誰が何を言おうと完全に全員参加だ。棄権したければ1回戦にて負けるしか方法はない。ただし、契約精霊を具現化(・・・)せず、契約精霊の『能力』を使用することを認められている。精霊と契約してたの時は具現化(・・・)しなければ精霊の『能力』を使うことはできない。しかし、それは主に高等部1年の時のみである。

 この頃はまだ魔力も安定してない頃で契約してから年数が経っていてもうまく使用できないことが多い。高等部2年ともなれば、魔力が安定し、具現化(・・・)せずとも使えるようになってくる。ただし、かなりの訓練が必要となる。


「それじゃ、定例会を始めましょー」

「すっげぇ気の抜ける掛け声出してんじゃねぇよ」

「いつものことでしょ、気にしないの」

「なあ、掛け声かけるのコイツじゃない方がいいんじゃね?」

「……ウィレム」

「え、結局俺?」


 こんなとばっちりがウィレムに回ってくるのはいつものこと、というより恒例だ。

現生徒会長だから、そういう役目が全て回ってくる。本人としては、生徒会長になった経緯が不本意すぎて話したくもない。


「あー、じゃあ始めるけど……どうせほぼ終わってんだろ」


 毎回この定例会は意味があるのか、と悩むウィレムだが仕方ない。


「いや、まず報告会終わってませんから」

「……そうだったな」


 大して変わりはないだろうに、と思うがこの際何も言わない。では、と最初に報告をし始めたのは北西にある「フォーレウス」寮の寮長であるバルトラ・ゼクスリートだ。


「新入生は全員で68人、うち未契約者が8人」


 今年の新入生は全員で280人。うち、4寮で272人を分けることになっている。7人、「七名家」は「聖獣」寮に所属している。


「なあなあ、なんで1人足りてないんだよ?」

「あー、それな。レン」


 東北にある寮「ミェスティーチェ」寮の寮長が疑問点を口にした。そう、1人足りてないのだ。数え間違いかと思われたがどうやら違うらしい。


「1人、『聖獣』寮に追加で来る」


 その発言に、全員……ウィレムを除く全員が固まる。は?と状況を飲み込めない声を出したのは誰だったか。


「……え?」

「はぁ!?」


転入生、という形なのか。しかし、この時期で言えば転入生というよりも少し遅れた新入生か。しかし、1年とは限らない。


「いつ決まったんだよ!?」

「昨日」

「はぁ!?」


 流石にそれに声をあげたのはウィレムだった。それもそうだろう、昨日といえば全員忙しくぶっ倒れる寸前であったのだから。


「お前いつ!?」

「寝る前、いきなり来た」

「朝言え、朝!」

「朝いなかったのにどうやって言えって言うんだ」

「時間あったろ!?」

「面倒だった」

「ふざけんなよ!?」


 流石にそれは言ってもいいだろう。別に他寮に行くのであれば何も言わないが自分の寮に来るのならば話は別だ。


「えーと……」

「ふ、2人とも落ち着かない?」

「話脱線してるぞー」

「ひとまず、休戦ということで……」

「で、き、る、か!!」


 大抵レンイに振り回されることが常のウィレムだがこれは中々である。よって、反論、大反論してもおかしくはないだろう。それを知っているからこそ、他の寮長達は何も口出しできないのである。


「レン! お前言う気なかったな!?」

「面倒だったしな」

「やっぱりかよ……!!」


 一向に話が進みそうにない。たまにある光景だがそろそろ収集をつけなければ。そう思った彼らは自身の契約精霊を呼び出そうとした、が。


「――――出すなよ」


 レンイのその声で、内から出ようとしていた契約精霊が大人しくなる。精霊が大人しくなるのは自身より強者に出会ったときである。つまり、それはレンイが自分の契約者よりも強い、ということである。


「で、誰だ」

「……アネス」

「アネスゥゥ!?」


 ウィレムにもその名の心当たりはあった。そして、他の寮長達も。

 ――――アネスティラ・ルークロイド。レンイの家であるアスフェルトルークス家とは親戚のような関係であり、レンイも面識がある。というより、アネスはほぼレンイの妹みたいなものだ。

 ルークロイド家と言ったら、『エヴァルトエーロ高原の戦い』で反『七名家』側についたらとされる家。だが、ルークロイド家の契約精霊は幻精霊であり、その地位は最高位聖霊に次ぐ――――つまりは、現在『聖獣』寮にいる彼らとなんら遜色はない。


「はあ!? 何であいつ今頃になって!?」

「さあな」


 ルークロイド家はアスフェルトルークス家と親戚関係ではあるがその仲は最悪である。あの『エヴァルトエーロ高原の戦い』以降、冷戦状態が続いているのだ。


「だったら入学式に入ってこいよ……!!」

「……まあ、何か事情があったんだろ」


 特に気にした様子のないレンにウィレムはため息を吐いた。最早初めから事を納得しているこの男のことではあるからある意味諦めてはいたが。


「アネスかよ、よりにもよってアネスなのかよ……」

「諦めろ」

「お前が言うなよバカ!!」


  別にウィレムもアネスが嫌いなわけではない。むしろ、妹みたいに思ってはいる、が。


「うわぁぁぁ、アネスかよ、なんでアネスなんだよ……!!」


 2回目である。それ程までにウィレムがアネスに難をつけるのには理由がある。レンとしてはどうにかなると思ってる事柄であるが故に特に何も思うことはない。まあ、少し面倒ごとの種が増えるだけだろう、それだけである。


「レン! お前が責任を持って面倒見ろ!」

「多分、ミストとゼナが見るだろ」

「うわぁぁぁ、もう面倒ごとしかしねぇな、オイ……!!」


 最早泣きそうである。それに特に気にした様子もなく、レンは寮長たちを見た。


「ウィレムは放置でいい、他には?」

「えーと、え、いいの?」

「煩いだけだからな、放っておくに限る」

「……そ、そう」


 最早何も言わないでおこう。


「えーと、『ウェルフェレム』も68人が入寮でその内未契約者は15人」

「『カルティアル』も同じく68人、未契約者は5人」

「『ミェスティーチェ』も同数、未契約者は3人かな」


 272名、上手く分けられた結果がこれである。


「ルシア」

「んー?」


 バルトラに呼ばれたのは『ミェスティーチェ』寮の寮長であるルドコルシア・ドラニクル。


「『ロワイヤル』の予選登録についての説明に変更はないのか?」


いきなり話が飛んだ。とはいえ、本題はこれのような気がするのだ。


「特にない、かなぁ……タルチェ達は?」

「ないな」


 名指しされたタルチェこと『ウェルフェレム』寮の寮長であるタルクロイチェ・フェレミウフはことも投げにそう答えた。『ロワイヤル』の運営には寮長の中から3人が選出され、過去の系統を元にルールの変更や日付を決めていく。とはいえ、ほとんど変わることはないのだが。


「あ、でも今年は『生誕祭』が例年より前倒しなんでしょ?」


 『誕生祭』という言葉にレンイとウィレムが微かに反応するが気づく者はなく。特に気にした様子もなく寮長達は話を続ける。


「レンイ」

「……だろうな」


 『誕生祭』。それはかの『エヴァルトエーロ高原』の戦いにて新しく勝った「七名家」によってこの国が統括されたことを示している。もちろん、「七名家」と闘った彼ら(・・)もひっそりと生きてきた。あれから100年が過ぎ、この国も特に今のところ何もなく時間だけが過ぎている。




 ――――そこに「七名家」と「反七名家」の彼ら、「アスフェルトルークス」家の複雑に絡み合う、因縁など忘れられたかのように。




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