prologue
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読んでいる皆様にはご迷惑をおかけいたします。
けたたましい叫び声が草原に響く。ぶつかり合う音、骨の断つ音、ドサリと倒れる鈍い音。全て全てが残酷な光景だというように、その光景が赤く赤く染まりゆく。
――――これは、後に後世に名を残した幻魔獣と呼ばれし最高位精霊たる『聖霊』と人間との大戦争「エヴァルトレーロ高原の戦い」。
この戦争の発端は人間の醜い思惑によるものだった。人間と精霊が手を組んだのはいつのことだったろうか。
精霊というのはありとあらゆる姿をしたこの世界――――ウィセルトス大陸に存在する守り神であり、自然の恩恵的存在である。その姿は人間型の精霊も居れば動物型の精霊も居る。
人間が生活をするために、その精霊と契約して恩恵を貰うというのが彼らとの『契約』の意味だった。しかし、人間の醜い私欲はいつしか生まれ、それを成し遂げるために彼らは精霊を売り出した。
精霊の透き通った羽は装飾品の素材として、珍しい色が多い髪や毛は装飾品の素材の他に人間の日用品になったり、臓器は薬味や珍味として重宝された。
つまり、契約した精霊達を殺してそれを売っていたのだ。それを知った精霊の中でも『聖霊』と呼ばれる7名の最高位精霊達は怒り、精霊を集めて人間との契約を切らせた。
それに気づいた頃には人間の生活は悪化し、終いには餓死者まで出てきた。このままでは死んでしまう、ならば元凶である精霊を滅ぼしてしまえという考えに至った人間達は『精霊狩り』を始めた。
――――それが発端となって起きてしまったのが『エヴァルトレーロ高原の戦い』。
最高位精霊達と人間の――――中でも人間との契約を切らなかった精霊達の中でも群を抜いて強い『高位精霊』の青龍、朱雀、玄武、白虎、銀狐、金鳳、黒獅子の契約者達が中心となって戦い、結果は人間達の勝ち。
精霊達は人間との契約に従い、また彼らと契約を結ぶこととなり、最高位精霊達は現世界に出てこれなくなった。しかし――――
『っ、何故………』
『いつか、お前達が出れるように時期を作ってやろう』
青龍、朱雀、玄武、白虎、銀狐、金鳳、黒獅子の契約者達は後に名を残し『七名家』と呼ばれるようになった。その裏、これは誰も知りえないところで動いていた者がいた。
――――名の刻まれていない、彼ら。
『憎き人間を、その手で潰すがいい』
『何故、そんなことをするんだ? 「灰狼」』
問われた精霊は、嘲り笑うようにして答えた。それは愚問に過ぎないと、これは序章に過ぎないと。
『何故? そんなもの』
――――契約者の為でしか、ないだろう?
これは、意図的に歴史に埋もれたとある精霊とその契約者の話である。