短編 (お試し投稿)
「ようこそ!不思議の国へ!」
10歳くらいだろうか?幼い男の子の無垢な声が耳に刺さる。
その姿を目視しようと、辺りを見回してみる。
だが、眼前には真っ黒な世界がただただ広がっているばかりでそれらしきものは何一つ見つからない。
そこで、ふと、まばたきをしてみる。
景色は一向に変わらない。
「どうなってるんだ…?」
突然押し寄せた不安に僕は声を漏らす。
その問いかけを嘲笑うように、幼い声が響く。
「一種の遊園地みたいなものだよ。もっと楽しもうよ!」
それを聞き、すかさず僕は抗議の声をあげる。いや、その時の僕は八つ当たりのように怒鳴っていた。
「君は誰?そもそも何も見えないのにどうやって楽しめというんだ?気でもふれてるんじゃないか?」
幼い声の主は、けたけた笑いながら返答する。
「僕の正体は後でのお楽しみ!なんだぁ、目が潰されちゃってたんだね。治してあげるよ。」
そういうと共に視界に光が取り戻される。
なん…だと…
よくわからない現象に戸惑いを覚える。
今まで軽かったまぶたが急に重くなった。
だが無理矢理持ち上げる。
するとそこは、、
悲しいまでに想像に忠実な「地獄」だった…。
血の池、針山、蟻地獄…ゴツゴツとした壁には、様々な時代の拷問用具が軒を連ねている。
そこでふと幼い声が響く。
「新たな罪人だ!舌を切り落とせっ!」と。