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プロローグ

 トンネルを抜ける前から雪国。

 アクセスマップを見ると、その高校は最寄りの私鉄稲花(してついなか)駅からバスで三十分となっている。ところが実際は積雪のため更に時間を要する。

 バスに揺られ、シャッターだらけの稲花駅前商店街を抜けると一面が雪景色。稲花川に渡した稲花橋は雪に覆われもはや橋かどうかもわからないが、運転手はその神業(という名の勘)でもって難なく通り抜ける。チェーンを巻いたタイヤが雪を引き裂いていく。

 途中から急勾配の坂道に差し掛かり、凹凸の激しい山路に入る。乗っている老人達は慣れていて、ロデオマシーンじみた縦揺れにも動じることなく帽子やカツラや入れ歯が飛ばないように押さえている。

 坂を抜けると崖沿いの道になり、眼下には凍りついたダム湖が幾つも広がる。圧倒的な静けさ。ガードレールもなく、バス一台分ギリギリ――アウトな道幅(何しろダムに落っこちた事例があるので)に加え、やはり積雪というアトラクションじみた悪条件の中、バスは通常運行で進む。

 やがて森と雪に半ば呑まれてしまった学校が見えてくる。

 バスが停車し、ダッフルコート姿の少年少女がガヤガヤと降りてくる。男女共学、国内でも有数の小ささを誇る山中の稲花(いなか)高校である。

 校門の脇から石段を上ると部室棟がある。その二階最奥、左手の部室――ドアには「この門をくぐる者、一切の高望みを捨てよ」という札が掛けられている。

 稲花高校女子カーリング部室。

 物語はここから始まる。

 七冬椿はただの狂人だったのか? それとも神の声を聞いたのか?

 これは世界中どこにでもある、聞いたことのある、ありきたりで、つまらない、手垢のべったりとついた、ごくごく普通の、誰にでもある、「情熱」を巡る物語だ。

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